まもなく危険水域・弱者連合「大和-あさひ」が株価60円を割る日(週刊現代2002.3.2号)
4大メガバンク中心の再編から取り残された形の大和とあさひ。両行は3月1日、持ち株会社「大和銀ホールディングス」の下で続合する。
が、その行方に暗い影を落とす出来事があった。2月5日、格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが、あさひの長期預金格付けをB a a1からB a a3に、短期預金格付けをプライム2からプライム3に引き下げたのである。引き下げの理由を、ムーディーズはレポートでこう説明している。
「あさひ銀行の自己資本が引き続き市場および信用リスクからの大幅な変動の影響にさらされており、そうしたリスクに対する対応が依然として十分とはいえない」
実際、大和銀ホールディングスとあさひの株価は、ともに昨年末以来、70〜80円台のまま。「3月決算を乗り切れても、デフレ下でより厳しい局面に立たされるのは間違いない」(慶応義塾大学教授・金子勝氏)とか「(あさひの)地元の埼玉で預金流出が起こっている」(経済ジャーナリスト・須田慎一郎氏)といった声が相次ぐのも無理はない。
株価が100円を割った企業は、市喚から“退場勧告”を突きつけられたのと同じ。それが、さらに70円を割って60円台に突入するようなことがあれば、何が起こってもおかしくない。
「日銀も、あさひの預金流出には大変な注意を払っており、資金繰りをリアルタイムでモニタリングしています」(全国紙経済部記者)
まさに“弱者連合”が誕生するわけだが、その行方については、前出の須田氏も金子氏も「公的資金が入って国有化される可能性が十分ある」と見ている。また、経済アナリストの森永卓郎氏は言う。
「統合は予定通り行われるでしょうが、その後、外資がカラ売りをかけて大和ホールディングスを破綻させ、安く買い叩こうとするかもしれない」
大和とあさひを皮切りに、日本の銀行は崩壊するのか。ドイツ証券チーフストラテジストの武者陵司氏は語る。
「大和・あさひに限らず、全行を国有化する必要がある。不良債権対策ではなく、金融産業政策としての国有化です。いまの経営者では新しい健全な銀行は作れないから、いったん銀行の主導権を国がすべて引き受け、健全な金融機関のスキームを作る。そして再び民間に譲り渡す。そこまで抜本的改革をしないと、この日本経済は立ち直りません」
両行は今後をこう語る。
「現在、スーパー・リージョナブル・バンクとして、持ち株会社の下での事業再構築にスピード感をもって取り組んでおり、経営統合の効果を早期に実現し、営業基盤の強化、収益力の強化を図る」(大和ホールディングス広報部)
「不良債権の抜本処理により、大口リスク、価格変動リスクは大幅に軽減され、併せて収益基盤の再構築を行うことにより、来年度の最終利益は過去最高の420億円を予想。さらに次年度以降も継続的な増益により、『収益のV字回復』を実現させていきます」(あさひ銀行広報・IR部)
危機感の欠如。これで本当に大丈夫なのか。