株価がどんどん下がっていく!あの朝日生命に“追い銭”「みずほ」に余力はあるか?(週刊現代2002.3.2号)
2月に入り、みずほホールディングスの株が急落した。
これまでも、みずほの株は下げ続ける一方だった。1年前の600〜700円台(額面50円換算・以下同)が、昨年末には300円前後に落ち、牛丼の値段(280円)に引っかけて「牛丼株」と揶揄する向きもあった。それが最近さらに下落し、2月5日には何と200円割れ。4月1日に迫った最終統合に、にわかに暗雲が漂い始めた。
国際金融アナリスト・水野隆徳氏が言う。
「みずほグループは、一勧、富士、興銀それぞれが問題企業を多く抱え、そのうちどれがいつ爆発するかわかりません。今後の成り行き次第では、さらに大幅に株が下がってもおかしくない。今回、株価急落の引き金となったのは、一勧が朝日生命を支援することが報道されたからでしょう」
朝日生命といえば、深刻な経営不振に悩んでいる業界第5位の生保。東京海上火災との統合をもくろんだものの、株価が急落した東京海上は、慌てて統合計画を白紙に戻してしまった。
1月末、そんな朝日生命の救済に名乗りをあげたのが一勧だ。一勧は、朝日に対して1000億円規模の基金拠出に同意したと報じられた。
これで、もしかりに朝日が破綻するようなことでもあれば、すでに拠出している分も含めて一勧からの千数百億円が水のアワと消える。「1000億円規模の基金など、5000億円の総負債を抱える朝日には焼け石に水」(金融ジャーナリスト)だし、青息吐息のみずほがそんなカネを朝日生命に出して大丈夫かと市場が危ぶんで、報道直後に株が大きく下げたのである。
★すでに実質国有化されている
第一勧銀はなぜこんな救済をもくろんだのか。
「一勧は朝日生命に1000億円の劣後ローンと400億円近い基金を拠出していますが、朝日はそれを上回る金額で、一勧が発行した劣後債などを買っている。つまり朝日と一勧は、お互いに支え合っている状態なのです。また、朝日は、古河グループの企業、たとえば富士通や古河電工などの株を大量に持っている。結果的に買い支えた形になり、同グループに多く融資しているみずほを助ける結果となった。
この“もたれ合い”が、いまや逆回転して、負の連鎖が起きている。支え合うほど、互いに自分のクビが絞まっていくのです」(経済ジャーナリスト・須田慎一郎氏)
もしみずほが朝日を見放せば、朝日は保有している富士通などの株を売ることになり、マーケットは大混乱に陥る。金融パニックも起きかねない。だからといって朝日に寄りかからせたままにしておけば、みずほの負担が大きくなり、体力はどんどん弱っていく。どちらに転んでも地獄が待っているのだ。
それでも前出の須田氏によると、みずほホールディングスの前田晃伸新社長(富士銀行副頭取)は、「朝日生命を救う必要はない」と漏らしているという。もし朝日に万一の事態があれば、1000億円が“追い銭”になってしまうが、それ以上傷を広げてはならない、というわけだ。
「統合後、朝日生命は、ホールセールを扱うみずほコーポレート銀行が担当することになる。ここは旧興銀の行員が中心なので、『なぜ一勧が作ったお荷物をオレたちが背負うんだ』と不満の声が上がっています」(みずほ関係者)
もちろん、朝日生命問題は氷山の一角。みずほの抱える問題はまだまだある。経済ジャーナリストの斎藤裕氏がこう指摘する。
「みずほグループは、日本の上場企業の75%を取引先に持っています。そのため、いまのような不況下では、企業業績の影響を受けやすいのです。しかも融資先には、日産建設、ハザマ、佐藤工業、飛島建設、オリコ、三協アルミニウム工業など、不振企業や株価100円割れの企業が多い。また、例年9月期で1兆円を超えていた保有株の評価損も、その後の株価下落でさらに膨らんでいる。今後、いかに利ザヤを拡大するのか。投資銀行ビジネスでどれだけ収益を拡大できるのか。それらをきちんと打ち出さないと、みずほの生き残りの道はすぐに閉ざされるでしょう」
最近ますます声高に叫ばれている公的資金注入、そして国有化の可能性も囁かれている。前出の水野氏の見方は手厳しい。
「多くの銀行の経営が危なくなっていますが、中でもみずほは、もう公的資金なしには生存できない状態でしょう。公的資金がなければ潰れるのだから、実質的に国有化されたのと同じです。ところが政府には、銀行を経営する能力がない。だから実質国有化されているのに、経営陣は責任も取らず好き勝手にやっているという、メチャクチャな状態なんです」
みずほホールディングス広報部はこうコメントする。
「不良債権は、今期大幅な処理を行います。それで、来期の不良債権は、絶対額が大きく減少すると見込んでいます。また、新体制になっても、収益力や財務体質の強化に努めていくつもりです」
4月の最終統合後も、みずほの行方は予断を許さない。