○地域通貨とは
地域通貨(英語ではlocal money、あるいはcommunity currency
と呼ばれます)とは、日本円や米ドル、ユーロや英ポンドなどと
違って、ある特定のコミュニティの中で、お互いにものや
サービスのやり取りをするときにのみ使われる交換手段です。
今のお金のシステムでは、お金持ちほどトクをするシステムに
なっています。そして、日本では多くの会社の本社が東京にある
ため、どうしてもお金が東京に集まりがちで、これといった産業
がない地方にはお金がなかなか回らなくなります。そして、
あくまでも交換手段であるお金がないために、地域内での取引も
スムーズにできなくなってしまうのです。
カナダでLETS(Local Exchange Trading System)という地域
通貨のシステムを考えたマイケル・リントンは、LETSマニュアル
でこれを、「インチが足りないために仕事のできない大工さんを想像できますか?(Imagine a carpenter not working
because he has run out of inches!)」と表現しています。
また、今のお金のシステムでは、どうしても金利の問題があり
ます。借りたお金は利子をつけて返さなければいけないという
ことで、多くの人が雪ダルマ式にふくらんだ借金のために生活を
ズタズタにされています。これは何も個人だけの問題ではなく、
企業もお金儲け最優先の経営を強いられ、その結果リストラで
首を切られたり、自然環境にやさしくない産業だけがいい目を
見たりするわけです。そしてこの利子の問題もあって、発展途上
国はなかなか先進国の仲間入りをすることができないのです。
このように、今のふつうのお金ではうまくいかない面があるの
ならば、コミュニティの仲間うちで使えるお金を別に作って
しまえ、というのが地域通貨の考え方です。
○世界の地域通貨の歴史
地域通貨には2つのブームがあります。まず、1930年代、世界が
大恐慌に見舞われた時期と、1980年代以降現在に至る時期です。
1930年代の大恐慌では、本当に多くの人が仕事を失いました、
デフレが起き、お金が回らなくなり、飢え死にする人も世界の
多くの国で出ました。そんな中で発行された地域通貨の代表的な
ものとして、オーストリア・チロルのヴェルグルで町役場が発行
した「労働証明書」があります。これは、手元に持っていると
価値が減ってしまうお金で、このおかげでこの町だけ景気が
よくなったのですが、ウィーンの中央銀行から禁止されてしま
いました。
他にもドイツや米国などで、多くの地域通貨が発行されたのです
が、政府から禁止されてしまい、やがて忘れ去られてゆき
ました。ですが、この当時生まれたスイスのWIR銀行は、中小企業
を結びつけるものとして、今でも広く利用されています。
また、1990年代になってから、世界の多くの国で地域通貨を使う
ようになりました。有名なものは先ほど紹介したLETS(フランス
ではSEL(セル)、ドイツでは交換リング(Tauschring)、
オーストリアでは交換クラブ(Tauschkreis)と呼ばれる)で、
欧州・オーストラリア・ニュージーランド・カナダなどで広く
行われています
(詳しくは、Lets-linkup.comをご覧ください)。
この他、米国のタイムダラーやイタリアの時間銀行(Banca del
Tempo)など、時間を単位にした地域通貨システムもあります
し、米国ニューヨーク州で始まった紙幣タイプのイサカアワー
は、地域の銀行も受け入れてくれるまでに成長しています。
さらに、南米のアルゼンチンでは交換クラブ(Club detrueque)
が非常に盛んに行われています。現在アルゼンチンは経済危機に
見舞われており、失業率も高く、苦しい生活を急に強いられる
ようになった人がとても多いのですが、そういう人などが
集まって交換市を開いています。今では100万人もの人がこの
システムを利用しています。
http://www.econ.hokudai.ac.jp/~nishibe/
http://www11.u-page.so-net.ne.jp/cb3/tkatoh/
http://www.sawayakazaidan.or.jp/chiikitsuka/