経営再建中の準大手ゼネコン、フジタは15日、会社を本業の建設事業と不動産事業に分割し、建設事業会社が三井建設と住友建設の経営統合に参加することで両社と協議に入った、と正式発表した。約3700人いる建設事業の社員を700人減らし3000人にするなどの経営改善に取り組んだ上で、早ければ2003年4月に統合する見通しだ。
都内で会見した田村宏明社長は「取り巻く環境は非常に厳しくなりつつある。顧客基盤や事業分野などで互いに補完関係にある」と統合参加の理由を説明した。
今回のフジタの決断は、17日のブッシュ米大統領来日を前に得点を稼ぎたい官邸プロデュース−銀行演出による急ごしらえの“即興劇”だった。そこには追加金融支援を迫られる銀行になし崩し的に公的資金を注入して3月危機を乗り切ろうという政府の思惑も透けてみえる。
「三井・住友建設」へのフジタの合流は、3社の主要取引先である三井住友銀行サイドで以前から検討されていたが、三井、住友建は、8792億円の連結有利子負債(昨年9月末現在)のフジタを抱え込むことで、「負け組連合」とみなされることを嫌い、強く拒否。さっさと2社の統合を発表してしまった。
ゼネコンの抜本再編が宙ぶらりんとなる中、動きを見せたのはブッシュ来日を前に、不良債権処理の成果を強調したい官邸・金融庁サイドだった。
今月11日に柳沢伯夫・金融担当相が、西川善文・三井住友銀頭取を呼びつけ、問題ゼネコンを含めた不良債権処理に向けて早急に具体策を取るよう求めた。
しかし、選択肢は少なかった。単独での再建はきわめて困難だったものの、昨年12月の青木建設の経営破たんのケースでは、小泉首相の「構造改革が進んでいる証拠」とのひんしゅく発言も飛び出し、メーンバンクのあさひ銀行株も急落するなど、市場の評判は最悪に近かった。
最大の懸案だったダイエーについても、金融支援による“延命”策で決着するなど、「救済型処理」が大勢となっていた。
翌12日にあわてて各ゼネコンに対する説得を開始した三井住友銀が、ひねり出したスキームは、フジタの分割だった。
フジタを地元の中国地区を中心とした建築・土木など売り上げ規模約4000億円、有利子負債約3000億円の「優良部門」と、不動産など「不採算部門」に分割したうえで、優良部門を三井・住友に経営統合させる。
不採算部門については売却などにより不良資産の圧縮を急ぎ、三井住友銀は損失の一部を穴埋め、三井住友銀とサブメーンのUFJ銀行を中心に2000億−3000億円規模の債権放棄も検討する。こうした案で合意し、14日夕になって、3社の統合を金融庁側に報告するという急転決着だった。
新会社は、単純計算で売上高1兆円を上回る規模となり、鹿島など大手ゼネコン5社に続く位置を占めることになるが、それでも3社合計の有利子負債は9000億円近くに達する。追加的な金融支援は避けられない。
さらに、みずほ系でもハザマ、佐藤工業、飛島建設についても、統合案がささやかれるが、これについても金融支援なき再編は困難だ。
保有株の含み損などで不良債権処理の原資が底をつき、虎の子の法定準備金の取り崩しを余儀なくされるなど、“米びつの底が見える状態”の銀行にとって、改めて浮上してくるのが公的資金注入だ。
指導責任を問われる金融庁も、政府の関与を嫌う銀行も反対しているのだが、ここにきて小泉首相や塩川財務相など政府・官邸サイドでは、「公的資金注入も辞さず」とのムードが醸成されつつある。
とはいえ、「銀行の一時国有化」といった抜本的な処理策ではなく、論理もけじめもない対症療法的な公的資金注入という、これまでの繰り返しの最悪の結末となることも十分予想される。