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l 電子部品の足元もろく――スクランブル
わずか4円高にとどまった12日の日経平均株価に市場関係者の表情は
曇りがちだった。海外の年金資金などから見切り売りがかさみ、日立製
作所や富士通が年初来安値を更新。ハイテク株が総崩れとなった中で、
産業動向の先行指標である電子部品株にも下げ幅が大きくなる銘柄が目
立ち始めた。
この日、大証では村田製作所がストップ安水準の4870円まで急落した
。11日に発表した2002年9月中間決算の席上、通期で販売価格が12％低
下する前提で予想営業利益を期初計画から35億円も引き下げたのが嫌気
された。他の電子部品大手でもＴＤＫは今期に10％程度の値引き圧力を
見込んでいる。デフレが合理化効果を打ち消してしまう状況を市場は見
透かしている。
総合電機と電子部品各社の年初来高値からの騰落率は、7割下落のＮ
ＥＣをはじめ、総合電機は最も下落率が小さい東芝でもほぼ半値水準だ
。アルプス電気、日本電産など電子部品株は下げてはいるが率でみると
比較的小幅にとどまっている。
もともと電子部品株の下げが小さかった背景には、顧客先である取引
メーカーの在庫調整が進んだ点を評価する動きがあった。主要取引先16
社の在庫水準の推移（モルガン・スタンレー証券調べ）をみると、ＡＶ
（音響・映像）機器メーカーではソニーや松下電器産業、携帯電話では
ノキアやモトローラなどの在庫合計が6月末で292億ドル。ピークだっ
た2
000年末（530億ドル）に比べ、ほぼ半減した。
それでも世界的な株安を受けて日本や欧米の機関投資家はリスク許容
度が低下し、電子部品を次の売り対象に据えるのではないかという見方
が消えない。モルガン・スタンレーの村田朋博アナリストの答えは「総
合電機ほど大崩れする心配は小さい」だ。
村田氏がまず注目するのは国際競争力。電子部品の多くが寡占状態に
ある。セラミックコンデンサーは村田製作所やＴＤＫ、小型モーターは
マブチモーターや日本電産、コネクターはヒロセ電機がシェアの上位を
占めるという。
二つ目の違いは「経営トップが独自の哲学を持っている」こと。日電
産の永守重信社長やマブチの馬渕隆一社長ら創業者や創業メンバーが今
も求心力を保ち続けている。
しかし、問題になるとすれば来期についてだろう。各社の今期予想利
益を分析すると、増益要因の多くがリストラから生まれることが明白だ
。ＴＤＫは営業損益の予想改善幅637億円のうち前期中に実施したリス
トラや構造改革費用の減少で約1200億円に達する。アルプスも利益改善
幅223億円のうち100億円が固定費圧縮だ。
コスト削減効果には、前期に特別損失を計上した時点で今期の収益を
押し上げることが確定していたものが多い。市場が気にするのは「今期
の増益幅が大きければ大きいほど、それだけ来期に反動がくるのではな
いか」（ゴールドマン・サックス証券の高山大樹アナリスト）という点
だ。
「韓国や台湾系部品メーカーの台頭で、日本の優位性は揺らいでいる
」（メリルリンチ日本証券の後藤文秀アナリスト）という声が聞かれ、
実際、アルプスの松原茂雄専務は「ＩＴ（情報技術）バブル崩壊が米国
の個人消費にじわじわ影響しつつある」という。電子部品株が総合電機
の後を追って下げないという保証はすでにない。
（小野学）
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。