現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
ドコモ株覆う沈滞感――スクランブル
ボーダフォン・サプライズ――。世界携帯電話最大手の英ボーダフォンが12日に発表した9月中間決算。「市場のすべての期待を大きく上回った」(メリルリンチ)好業績が、長らく世界の通信株の頭を抑えてきた悲観ムードを一気に吹き飛ばした。同社株は同日、ロンドン市場で13%高の急騰を演じただけでなく、フランステレコム系のオレンジ(8%高)、英BTグループから分離した英mmO2(6%高)など同業他社にも波及。米国にも飛び火し、スプリントPCS(13%高)やネクステル(9%高)といった米携帯電話株も全面高となった。
活況に沸くライバル会社の株価を、立川敬二社長らNTTドコモの経営陣は複雑な心境で眺めていたに違いない。ドコモ株が13日は2000円(0.9%)高にとどまり、世界の携帯電話株のミニブームから取り残されたからだけではない。ボーダフォンの業績回復のほとんどが孫会社のJ―フォンの大幅な収益上振れによるものだったが、ドコモも負けず劣らず「好決算」だったからだ。ドコモが7日に発表した9月中間決算は連結最終利益が95%の大幅減。海外投資の失敗に絡んで5000億円を超える巨額損失を計上したためだが、よくみるとドコモの本業の収益基盤は一段と強固になっている。同社が「財務指標の中で最も重視している」(平田正之常務)というEBITDAマージン(売上高に対する利払い前、税引き前、償却前利益の比率)は41.2%と1年前に比べて4.8ポイント上昇した。ついにボーダフォン(37.4%)を抜き、利益率では世界の携帯電話会社の中でトップクラスに躍り出た。
中間決算期末にかけては「利益圧縮」ともとれる行動に出た。代理店に端末一台あたり平均3万円支払っている販売奨励金を「9月はさらに5000―1万円程度積み増した」(大手代理店)のだ。実際、一部地域では9月後半にドコモの「ゼロ円端末」も出回った。期末直前になって奨励金の大盤振る舞いでコストを膨らませたわけだ。
「(現行世代の)PDCネットワーク上で展開するiモードビジネスの完成形」(メリルリンチ日本証券の合田泰政アナリスト)という言葉がぴったりくるドコモの「好決算」。だが、市場が全くの無関心を決め込むのはなぜなのか。欧米の携帯電話大手にドコモを加えた9社のEBITDAマージンとEBITDA倍率の相関をグラフにすると、ドコモ株が割安に放置されているのがわかる。欧米大手と同水準まで株価が上がるとすれば、ドコモ株はEBITDA倍率で8倍台後半まで買われていいはずだが、実際は7倍台前半で放置されており、「ドコモの経営に対する失望感がある」(外資系証券のアナリスト)とも解釈できる。10月上旬、立川社長ら一部の経営陣は、IR(投資家向け広報)で米国主要都市を回った。関係者によると、ボストンで開いた説明会では、現地の数十社を招待したものの、出席したファンドマネジャーは1人だけだったという。フィデリティやパトナムといった大手の運用会社が集結するボストンで、たった1人の出席者が10人近く居並ぶドコモ幹部と向かい合う光景は、今のドコモ株を覆う沈滞ムードを象徴している。「あの短気な立川さんが、妙におとなしくなっちゃって……」。ドコモ周辺では最近の立川社長のこんな印象を語る関係者は少なくない。確かに、今回の中間決算発表での立川社長の口ぶりからは、前回の減損処理発表の場で「神様でも予測できなかった」と強弁した「自信」はほとんど感じられなかった。ドコモに対する投資家の関心を取り戻すために今最も必要なのは、恐るべきキャッシュマシンとなった現行のiモードビジネスの果実を、次なる成長につなげる強力な経営のリーダーシップだ。最近、第三世代携帯「FOMA」の不振について問われると、立川社長は決まって「FOMAは10年、20年続くサービス」と答えるようになった。もし、立川社長が「自分の在任期間中にはFOMAはモノになりそうにない」と考えるようになっているとすれば、それこそ株主にとって不幸なことはない。
(川崎健)