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竹中平蔵金融・経済財政担当相のハードランディング路線に続き、大手銀行を新たな『劇薬』が襲う。今後導入予定の自己資本比率に関する国際ルールの改正案(新BIS規制)が、巨額の不良債権処理を抱える銀行に自己資本の増強を激しく迫ることになるのだ。体力疲弊の大手銀が大窮地に追い込まれ、大型倒産とデフレ不況が加速するのも確実。公的資金の強制注入や銀行国有化に向かう可能性があり、金融関係者からは早くも、「トドメの一撃となり、メガバンク再編の引き金になるかもしれない」との声が上がっている。
日米欧の銀行監督当局などで構成、スイスに本部を置くバーゼル銀行監督委員会が平成16年末に導入する国際決済銀行(BIS)の改正案。
BIS規制は、銀行関係者以外には縁遠い存在だったが、9月30日の竹中氏の金融相兼務、不良債権処理加速のプロジェクトチームに日銀OBの急進派、木村剛氏が参加したことで、にわかに脚光を浴び始めた。
つまり竹中・木村の劇薬コンビの登場で、「資産査定の厳格化や自己資本の計算法『税効果会計』見直しで、大手銀の自己資本比率が経営の健全性を示す8%を割り込む」との試算が現実味を帯びてきたからである。
現行の規制は昭和63年に導入され、「どこに貸しても100%のリスク資産と見るなど不合理な面もあった」(BNPパリバ証券審査部長の小田切尚登氏)こともあり、平成10年から見直し作業が続いている。
新規制案の要(かなめ)は、貸出債権のリスクを厳格評価して、自己資本比率にキメ細かく反映させる点である。
現行では、国際業務行に対し、企業向け融資ではどんな債権でも引当金を差し引いた融資額の8%の自己資本を積むのがルールとなっている。例えば100億円の債権の場合、8億円の自己資本が必要というわけだ。
新規制だと、大企業に多い無担保融資で「正常先」債権の場合、必要な自己資本は最低で現在の0.15倍、先の例なら1億2000万円に減らすことができる。
ところが、「要管理先」以下の不良債権では、最大で現行の5.6倍。先の例なら約45億円も自己資本を積まなければならなくなる。
銀行にとって、保有債権が「健全債権」に分類されるか「不良債権」と判定されるかで、「天と地」の開きが出る。
日本の大手銀がすでに、巨額の不良債権を抱えてあえいでいるのは、ご存じの通りである。
しかも悪いことに、竹中氏ら劇薬コンビの「金融再生プログラム」で、大手銀は資産査定の厳格化を迫られている。
金融庁は来年2月にも特別検査を再実施する方向で、依然、大甘の自己査定を続けていると業務改善命令が出される。
これまで「健全」とされた債権が相次いで「要管理先」に転落、つまり不良債権の急増が予想される事態となる。
経営体力が底をつく銀行にとって、新BIS規制が新たな『劇薬』となるのは確実である。
元長銀(現新生銀)の執行役員で、アローコンサルティング事務所代表の箭内(やない)昇氏は「自己資本こそが銀行経営の源泉であり、銀行問題の本質。銀行は本丸に乗り込まれるような恐怖を感じているのではないか」と指摘する。
小田切氏も「新規制は欧米の銀行にも厳しくなるが、もともと自己資本比率が低いうえ、外部環境も悪い日本の銀行の場合、ちょっとしたことでも影響を受けやすい。見方によっては新基準がトドメを刺すことになりかねない」と分析する。
追い詰められる銀行は、自己資本比率維持のため、不良債権の売却や貸し渋り、貸し剥(は)がしなど「分母」となる総資産の圧縮をさらに加速させることになる。
中小企業への風当たりも強まる。新規制では、要管理先の中小企業向け融資に対し、不動産担保があっても最大4.4倍の自己資本が必要となる。貸出金利の大幅な引き上げなど抜本的な見直しを余儀なくされる。
「貸し渋りや貸し剥がしだけでは間に合わず、銀行が大企業にミエで借りてもらっていた融資をやめる可能性もある。この結果、持ち合い株の解消売りが一気に進み、株価が暴落することも考えられる」(箭内氏)
BIS規制については、1980年代に米国の大手銀行が相次いで倒産したのをきっかけに、米国内で自己資本比率の規制が導入され、さらに他国の銀行にも導入を呼びかけた経緯がある。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの邦銀の自己資本比率が5%以下だったことに目をつけ、その弱体化を狙った「アメリカによるアメリカのための規制」との批判も根強い。
今回の新規制も日本の銀行を狙い撃ちした措置では、との疑念も沸いてくるが、箭内氏は「自己資本の乏しいメガバンクは、『張り子の虎』であるという本質に目を向けるべき」と解説する。
小田切氏は「株価や財務格付けの低さをみても、自己資本比率10%超という“大本営発表”が銀行の実態を表していると市場は考えていない」と、邦銀の経営そのものに疑義があるとする。
タイムリミットの16年末まで、あと4年。
「14年度までに不良債権問題を終結させる」という政府の方針通り、産業再生機構や整理回収機構(RCC)への不良債権売却、公的資金注入などで問題が解決していれば、「新BIS規制ショック」も杞憂(きゆう)に終わるが…。
竹中−木村の劇薬コンビに徒党を組んで抵抗し、「経営に問題はない」と強調する大手銀。竹中路線の骨抜きに成功したとしても、経営基盤をドラマチックに改善しない限り、新BIS規制が前途に立ちはだかる。
「メガバンク同士の第2次再編」(箭内氏)「国際業務をやめるという選択肢」(小田切氏)も懸念されるなど、「一難去ってまた一難」となりかねない。