★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
「"耐用期限切れ"10年崩壊期突入−長期戦覚悟」池尾和人・慶応義塾大学経済学部教授 {五平餅君も読んでネ 投稿者 Ddog 日時 2002 年 11 月 08 日 22:43:00:

「"耐用期限切れ"10年崩壊期突入−長期戦覚悟」池尾和人・慶応義塾大学経済学部教授

日本経済の前途に光明が見出せない。経済低迷の長期化で、台風一過の晴天のように 、これまでのもやもやを振り払ってもらいたいという「一挙的解決願望」が国民の間に鬱積している。しかし、国民の心情は理解出来るが、残念ながらそれは願望でしかあり得ず、一発逆転ホームランが可能な状況は日本には存在しない。日本経済が抱える問題は、やる気があるかないかで解決されるほど単純なものではない。耐え難いことだが、客観的に見て、経済低迷と共に長い期間を過ごすことを否応無しに強いられるというのが現実だ。

端的な例が、銀行への公的資金再注入の是非論だ。銀行の不良債権問題は10年来のもので、もういいかげんに片付けて欲しいという国民の思いを背景に、今、「公的資金注入に積極的なのが正義で消極的なのが悪」といった「空気」が支配的になっている。だが、それを裏付けるロジックはいかにも乏しい。

それは、日本の銀行が何に困っているかを考えればわかることだが、収益と不良債権の綱引きの相対的関係で、いくら不良債権の発生が多くともそれ以上に収益力が強ければ、不良債権問題は克服出来る。ところが、銀行セクターは疲弊が進み、脆弱になっている。産業として自立した状態にはなく、収益力は乏しい。ざっと目の子勘定で毎年3兆円から5兆円ほどの欠損が出るような状況にある。継続的な資本注入がないと経営が存続出来ないというのでは、これはまさに銀行の第二特殊法人化だ。自己資本不足は結果であり、重要なのは原因の究明と対策だ。本来ならどうすれば収益力が向上するかが問われるべきなのに、資本注入で帳尻を合わせて原因が解決するというのは一体どういうロジックなのか。

少なくとも、これまでの公的資本注入は銀行へのギフトではなく返済を前提としたものだ。これを繰り返し、銀行にさらに借金を重ねさせれば問題が解決するというのは全く理解し難いロジックだ。また、銀行を国有化しろと言うが、一体誰がどう経営するのか。官僚の方がさらに上手く銀行を経営出来るという保証はない。民間からの起用と言っても、人材難からそもそも候補対象者が何人いるのかという話になりかねない。

特効薬はない。あると考える方が私には不自然に映る。特効薬を探し回っているうちに事態をむしろ悪化させてきたのがこの10年だ。議論の俎上にあるインフレターゲットの積極派の論者でさえ、「このままデフレが続けば5年以内に財政は破綻し、その後、ハイパーインフレーションに突入するといった大きな経済不安定性を招くだろう。それならば、意図的にコントロール可能な時期に早めにインフレを作り出して、少しでもマイルドなランディングを狙うのが得策だ。ただ、完全に上手くいったとしても金融機関を含む大量の企業破綻が出るだろう」と主張しているのであり、一挙にハッピーエンドになるシナリオは描いていない。

財政出動と言っても、これだけ政府債務が積み上がっている状況を前にして、それがなかった時と同じ様な調子で財政出動が可能かと言えば、それはもう無理だ。非伝統的金融政策が問題になるのも、伝統的金融政策の弾薬が尽きたからに他ならない。政策に使えるリソースはほとんど枯渇した状態だ。何か手を打てば、それで問題が一挙に解決するというのは全く実現性のない夢物語にしか過ぎない。


私が一つ危惧しているのは、効果のないことでも効果があると言って国民の願望に応えるふりをするということだ。後になって効果がないことがわかればさらなる失望を招いて社会に鬱積・不満が蓄積し、それがおかしな方向に爆発するリスクがある。小泉政権が倒れて、代わりの新政権が財政拡大路線に走った結果、国債価格の暴落が起きる可能性だってある。だからこそ、「出来ること」と「出来ないこと」を言明する必要がある。私は政治家ではないからそう言えるのだろうが、それにしても日本国民はすぐに結果を求め過ぎる。時の政権も、3ヵ月毎に成果を誇示するようなアドバルーンを上げざるを得なくなっている。その結果、ある程度の期間を見通した戦略的な行動が取れず、問題解決には至らないという悪循環に陥っている。

今ではもはや、規制緩和、構造改革など辛気(しんき)臭い作業を地道に辛抱強く実行するしかない。破綻の淵から米財政が蘇ったのも、米国経済そのものが盛り上がったことに加えて、ブッシュ、クリントン政権時代の懸命で地道な税制構造改革の結果でもある。日本経済の問題を解決するには、基本的なことだが産業構造の転換が必要だ。例えば、中国などの台頭で存立根拠が乏しくなった繊維、ゴム産業など国内市場向け労働集約型製造業従事者のサービス産業への移動などだ。労働者が何百万人単位で移動するには相当な時間がかかる。出来るだけ移動の摩擦を緩和するような政策措置をとりながら、産業構造の転換を促していかないといけない。

留意すべきは、構造改革の本当の目的は何かだ。日本社会には30年以上前の高度成長時代の「成長率神話」が根強く残っているから、どうしても「構造改革なくして経済成長なし」となりがちだ。しかし、現状と将来を考慮すれば、「構造改革なくして豊かな生活なし」ではないのか。少子高齢化が進む中、経済成長を続けるために外国から移民を大量に受け入れて現在の労働人口を維持するのか、それとも移民に関しては極めて制限的方針を採り、その結果、労働人口が減って経済成長が鈍化しても、ほどほどに豊かであればそれでよしとするのか、その選択を遠からず迫られるからだ。それは、おそらく団塊の世代がリタイアを迎える時点だろう。

私は、労働人口の減少を踏まえても、経済が成熟化していく過程で、ボリューム拡大の成長率志向から効率重視の生産性志向へ社会の価値観を切り替えていくことが必要だと思う。アウトプットを増やすよりはインプットを減らす、若しくはアウトプットを維持しながらインプットをどうやって減らすか。つまり、長時間労働せずとも経済水準を維持しながらいかに自由時間を増やすか。そうした生産性を尊ぶような社会に変わっていくのが望ましい。その点に関しては、成熟先進国の欧州からもっと学ばないといけない。日本は経済成熟国と言われているが、それがどういうことなのか。欧州の市民は一人当たりGDPや所得面でも日本より低いが、ゆとりある生活を送っている。

付随して言うと、日本の豊かさの代名詞とも言われる1400兆円もの個人預貯金だが、家計部門の抱える負債400兆円と最終的には国民負担でしか埋められない政府部門の債務1,000兆円との相殺で、実は、日本の家計部門は貧弱なストックしか持っていないという事実が、今後、表面化する可能性が出てくる。少子高齢化が進んで、家計部門が貯蓄をネットで取り崩さざるを得ない時が必ず来る。我々は銀行で預金をおろす。銀行はその分のお金を回収しなければならないから保有国債を処分する。同様に、政府は徴税で穴埋めするしかない。結局、銀行からおろした貯金の分を税金で取られるということでないとつじつまが合わない。「ある」つもりでいた資産が実は「ない」。そういう現実が見えてくる。

戦後の日本型経済システムの耐用期がほぼ終わって、崩壊期に来ているということが時代認識としてある。過去の例を機械的に当てはめると、あと10年以上は崩壊期が続く。1935年から1945年の日本に対応する最悪のフェイズに入るというものだ。しかし、経済成熟化に伴って価値観を変えれば、なべて悲観することもない。失業率5%で日本が自信を喪失しているが、失業率8%でも自信満々なのが欧州である。

次の経済システムを予測することは難しいが、一つ前の戦前のシステムをモディファイしたより市場経済型、より純粋市場型のシステムに移行するのではないか。完全に移行するのは約20年先だろう。その間、辛気(しんき)臭い作業を腰を据えて地道にやっていくしかない。そうでないと90年代の失敗を繰り返すことになる。「願望と実行可能性を 区別」し、「一挙的解決策があるかのように考えない」というところから次なる経済システ ムへ向けての一歩を踏み出すことが肝要だ。(談)

以上クイック

9.11以降 もしかしたら、2000年以降第二次世界大戦後構築された、政治体制 経済体制が次々に崩壊している。株価を観察している限りもはや、世界経済は構造変化を始めている。
株価の回復は、デフレ経済が回復する見込みがあるのだろうか?
この論文も決して夢みたいな解決策を示したものではない、しかしこの論文が示唆するものは、デフレの悪循環に突入してしまった現実を認め、現実を肯定して、願望を排し、デフレ経済のなかで、ベターな善後策を考えるなければならないことを示唆している。

ちょいと五兵餅君に対し大人げないレスを書いてしまったりしたが、私も今の秩序が崩壊するのを、知りつつ現実を肯定するのは非常に恐い。一般庶民レベルで、現秩序崩壊の現実を知ることは、もしかしたら無意味かもしれない。精神的に良くない。この論文の現実が真実であるなら、普通現実を否定したくもなるだろう。

私Ddogが小泉―竹中批判のレスを投稿し続ける行為はもしかしたら、現実を逃避したい五兵餅君と、さして変わらない精神レベルかもしれない。

 次へ  前へ



フォローアップ:



 

 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。