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日本経済の問題はバブルだけではない、構造問題でもない、真の問題は中国の出現と為替ルートにある 投稿者 TORA 日時 2002 年 10 月 24 日 13:47:33:

(1)バブルだけではない

 最近とくにここ十年間、日本では金融・経済問題に対してあまりにも多くの間違った俗説がまかり通ってきた。これが日本が2002年に入る、今も立ち直ることが出来ない原因となっていると私は思う。九〇年代の始め日本当局も学界のマスコミもこぞって問題をバブルの崩壊と決め付けていた。確かに問題の初期はバブルの崩壊から始まった。資産価格の暴落は多くの株価、地価を数分の一、ゴルフ会員権は十分の一に落としてしまった。バランスシートに表れてくる資産は減るけれど負債はそのままであるから、すべての企業は債務超過に落ち入ってしまった。

しかしバブルだけであれば、その調整は二、三年、遅くて四、五年で終わる筈である。香港も地価のバブルがあったが二、三年で調整されている。ところが日本では何年経っても企業の業務、収益が一向振はない、株価がどうしても戻らない、土地価格も回復しない。それにしてもその原因に対しては餘り解明されていないままである。それはバブルによる資産価格下落と債務超過のスパイラルと一言で片づける人が多いが、果たして原因はそんなに単純であろうか?政府はバブルに追討ちを掛けたBIS(自己資本比率)と円為替ルートにはあまり気をつけていないようである。

(2)構造問題ではない

 アメリカを始めとする経済学者はよく日本経済問題を構造問題となしつける傾向がある、構造改革を進めない限り日本経済の再生はありえないと言う。日本のマスコミもこれに同調しているようだ。しかし構造問題は長い社会の制度の蓄積である。構造に問題があれば、七〇年、八〇年代の日本の発展がなかった筈だ。唯わづか十年前、日本を始め世界の人々は日本経済の構造こそ最高だと思っていた。その良きものが一瞬にして悪物になる筋道はロヂックに合はない言い方である。世界の流れに従って経済・社会構造は徐々に改革しべき事は誰も分かることであるが、今日経済が極度に低迷してしまったことは構造改革のそれ以外に理由があると見るべきだと思う。

(3)九五年以降の問題は中国問題である。

 九〇年代の日本を揺るがせたものにアメリカのIT革命がある。ハイテックによる経済力の向上は凄まじいものがあった。しかしそれも中国問題に比べれば小さい脅威に過ぎない。八〇年代の初、共産と企画経済を投げ棄てた中国は人民元を大幅に切り下げた。一九八〇年に一ドルに対し一・五三人民元だったルートは一九九〇年に五・二二人民元になり、更に一九九五年に八・三一人民元になった。

中国の物価はドル建てで一挙に五分の一になったのである。その反面、日本円は一九八五年プラザ合意の時一ドル=240円から一九九五年四月の一ドル=80円にまで切り上がってしまった。日本の物価はドル建てで三倍にはね上がったのですから日本と中国のコスト差が正に十五倍となり、中国製品は超低価格で世界市場を席捲する態勢に入ったのである。

この時台湾の貨幣も切り上げがあり台湾企業はなだれを打って中国に馳せつけた。八〇年代の台湾は既に衣服、靴、繊維製品、傘、自転車、家電、玩具などの分野で世界的生産基地になっていたが、これらの産業は四、五年の内に殆ど中国に移転された。台湾政府が餘りにも指導に欠け、企業の言うがままになったことも悪かったが、中国人民元の大幅な切下げと台湾元の切上げが大きくこの波を促進したことに間違いはない。台湾の資本、技術と市場を吸収した中国は、これによって外貨を稼ぎ、対日貿易黒字も九九年には二百二十一億ドルとなり、日本の内需拡大と消費刺激策も国内生産に繋がらず、最大の受益者は中国になってしまったのである。

(4)東南アジアの金融危机の最大の被害者は日本

 台湾の資本と技術、そして大陸十二億人の安い労働力を結合した中国製品は迅やかに東南亜諸国製品を世界の市場から追い出してしまった。東南亜諸国の輸出は不振となり、国際収支も徐々に悪化してしまった。その上東南アジアの各国政府は必要な調整を怠り、遂に九七年に世界を震駭させた東南亜金融危机を巻き起こしたのである。金融危机はタイ、マレーシヤ、フィリピン、インドネシアにかなりの損失を与えた。

日本は対した衝*を受けていないように見えたが実際は日本が一番深出を受けた国であることに日本は気付いていない。事実上、日本は東南亜諸国への最大の債権者であり、その債権は大幅に目減りし、銀行、商社に与える痛手は大きく、日本の国力も著しく低下し回復の力を失ってしまったのである。一方、中国は最大の受益者になり、これを機会に中国は経済的にも日本に替わる存在としてアジアに君臨してきたのである。

(5)この儘では日本の復帰はむずかしい

 以上述べた如くアジア経済問題の核心は中国の元が過去一ドル対一・五人民元から一ドル対八・三人民元に引き下げられた為替レートの不均衝にある。しかも中国はまた為替管理をしているのでその調整は一方でしか出来ない様になっている。これが為、過去三、四年間各国の為替レートは色々な方式でこの不均衝を反映して調整されている。

東南亜金融危机による各国の貨幣の切り下げもその一つであった。ユーロもこの二年間で三十五%近く下落している。ポンドも近日十餘年ぶりに最低を切った。日本がもし引き続き市場にまかせ、強い円を維持すれば、やがて企業はとても日本で生産活動は続けられない状況に追い込まれるに間違いはない。

 輸出ドライブのため各国が為替レートの切り下げ競争に落ちこむことは芳しいことではないが、中国人が人民元を切り上げない限り、日本はみすみす自滅の道を歩くわけにはいかないでしょう。当分、日本当局はすみやかに1ドル140円に切り下げ、以上の円高を絶対に避けるべきだと私は思う。勿論黒字縮小の為にも日本は輸入を促進する自由化に何かと手を入れるべきではあるが。 

 次に日本がやるべきことは台湾と東南亜諸国を自己の経済圏に抱き込み、積極的に技術提供や建設に手助けをすることである。さもなければ日本といえどもアジアの中国への一極集中によって周辺化されることは免れないことであろう。

「月刊日本」2002年10月号掲載 作者 台湾総統府国策顧問 黄天麟

http://holycow.sandiego.edu:8080/isota/forums/japanese/1033088043/index_html

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