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不良債権の処理加速策づくり大迷走−。竹中平蔵経済財政・金融担当相が率いるプロジェクトチームが22日に予定していた加速策の中間報告公表が見送られた。超ハードランディング路線に自民党が猛反発したためで、25日にも政府の総合デフレ対策と合わせて、最終報告を発表することになった。ハードランディング路線が大幅修正されるのか、それとも、あくまで強行突破を図るのかが今後の焦点だが、小泉政権に対する政策不信は頂点に達しており、株価暴落やデフレ不況の加速を招くのは必至だ。
23日の東京株式市場は、竹中チームの強硬路線を嫌気して平均株価が300円近く急落した前日に続き、大幅続落して取引が始まった。
市場は竹中路線に明確に拒否反応を示している。市場関係者の最大の関心は、処理加速策の最終的な行方だ。
中間報告の公表断念について、金融業界関係者は「金融庁の官僚サイドも竹中路線に反発して、ソフトな独自案を用意していた。金融庁案が採用されるとの観測もあっただけに大ショックだ。竹中氏は小泉首相に加え、米国政府の後ろ盾に意を強くし、自民党への根回しなしで正面突破を図ろうとした。ところが、竹中チームの密室主義への反発もあり、土壇場でずっこけた」と解説する。
竹中チームの処理策のポイントは、(1)自己資本の中身の厳格化(2)貸出資産の査定厳格化による引当金の積み増し(3)公的資金の再注入と銀行の国有化−の3点だ。中でも、最大の争点が自己資本の厳格化だ。
外資系証券の金融アナリストが解説する。
「銀行は、不良債権処理に伴い、将来戻ってくることが見込まれる『繰り延べ税金資産』の一定割合を自己資本に繰り入れている。大手銀の場合、中核自己資本の約半分も占めており、自己資本の水増しと批判されてきた。この繰り入れ割合を現在の実質40%から米国並みの10%に引き下げる。これにより、大手銀で2兆円分の自己資本が消滅、ほとんどの大手銀が健全性の目安である自己資本比率8%を割り込む」
さらに、引当金の積み増しも、自己資本比率の低下の要因となる。資本不足に陥った銀行に、公的資金の再注入を申請させる一方、すでに投入している公的資金についても、政府が保有する優先株を議決権のある普通株に転換し、国が大株主となり銀行を国有化する−というのが竹中チームのシナリオである。
これに対し、22日に説明を受けた自民党からは、「問題が多く、株価に影響する」(堀内光雄・総務会長)、「結局は外資が一番もうかることになる」(野中広務・元幹事長)と猛反発。
銀行業界も、「サッカーをやっていて、突然、『君がやるべきはアメリカンフットボールだ』と言われたようなもの」(寺西正司・全銀協会長)と、即座にルール変更に噛み付いた。
自民党の反発には「独断専行の小泉首相に対するいらだちが、標的を竹中氏に定めることで、大爆発した。自民党が求めているデフレ対策としての補正予算編成を小泉首相が無視し続けていることへの反発もある」(永田町筋)という政治的な思惑もあるようだ。
銀行業界の言い分はこうだ。
「竹中チームのメンバーの日銀OBの木村剛氏の主張通りの内容。一番の問題は繰り延べ税金資産のルール変更。米国は最初から不良債権を無税で処理することが認められており、もともと繰り延べ税金資産が少ない。これに対し、日本は財務省がほとんど無税の処理を認めてくれず、税金を払って処理してきた。こうした税制の違いを無視した変更は、あまりにも理不尽だ」(大手都銀幹部)
今後の焦点は、竹中チームの最終報告が大幅修正されるかどうか。竹中氏は「変更はない」とあくまで強行突破の構えを崩していない。銀行サイドも「自己資本の水増しや不良債権の引当不足が正論であることは否定できない。すでに小泉首相は了承しており、巻き返しは難しい」(大手銀幹部)とあきらめムードが漂っている。
しかし、最終報告まで株式市場や銀行業界の疑心暗鬼は続き、政策不信は高まるばかりだ。さらに、ハードランディングの強行で株価がさらに低迷し、デフレ不況が加速する恐れが一段と高まってきた。