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今年の夏、マスコミでも多く取り上げられ、話題を呼んだ住基ネット。実は銀行がこのシステムに注目しているのをご存知ですか?民間企業が期待する、住民票コードの活用方法とは?
今年の8月5日から、住民基本台帳ネットワークシステム、通称・住基ネットの運用がスタートしました。みなさんにも、お住まいの市町村から11桁の住民票コードが通知されたことと思います。一部自治体の脱退がマスコミを賑わせたのも記憶に新しいところです。
運用について賛否両論があるこの住基ネットですが、実は金融、特に銀行業界が注目しているシステムであるということをご存知でしょうか。それは、銀行の義務である「名寄せ」という仕組みによります。
みなさんは、銀行口座をいくつ持っていらっしゃいますか?社会人の方は、複数持っている方が多いのではないでしょうか。また、同じ銀行の違う支店の口座をいくつも持っている、という方もいらっしゃると思います。
通常、銀行では、顧客管理を口座番号ごとに行っています。そのため、AさんがB銀行の赤坂支店と渋谷支店に口座を持っている場合、銀行のシステム上では「赤坂支店のAさん」と「渋谷支店のAさん」の2人はまったく別の人間として存在しており、実は同一人物だ、というのは分かりませんでした。
しかし、2002年4月のペイオフ解禁により、銀行が破綻した場合、1顧客あたりの払い戻し金額は1,000万円まで(決済性預金を除く)になりました。ここで問題になるのが、1顧客あたりの預金額の把握です。先ほどの例でいくと、AさんがB銀行の赤坂支店に700万円、渋谷支店に800万円の定期預金を持っているとして、B銀行が破綻した場合、Aさんの保護額は1,000万円までとなり、残りの500万円は払い戻しがなされません。この払い戻しを正確に行うためには「赤坂支店に口座を持つAさんと渋谷支店に口座を持つAさんは同一人物である」ことを把握しなければなりません。これが「名寄せ」です。
しかし、同一人物である、というのを確認するのはなかなか難しい作業です。氏名だと同姓同名の人間が存在する可能性がありますし、氏名と生年月日で突き合わせても、同じ日に生まれた同姓同名の人間がいない、という保証はありません。氏名は結婚等で変わる場合が多々ありますし、電話番号も引越しで変わってしまいます。さらに、このような複数の様々なデータを突き合わせる作業は、膨大なシステム負荷がかかります。
このような場合、いちばん効果的なのは「1つしかない記号(番号、キーワード)」です。それさえあれば、容易に個人が特定でき、しかも住所や名前が変わっても追跡できます。
今まで、日本にはそういった汎用的に個人を特定できる記号というのはありませんでした。しかし、冒頭申し上げた住基ネットの稼動により、日本で初めて、国民1人1人にユニークな番号、住民票コードが付与されることになったのです。銀行がこのコードに注目する理由がお分かりいただけたでしょうか。
これは、名寄せをしなければいけない銀行だけの話ではありません。例えば消費者金融をはじめとする金融業界には、個人信用情報のデータベースが複数存在しており、顧客の借入過多による貸し倒れを防ぐため、顧客の借入や事故情報を蓄積しています。これについても、住民票コードによって個人が特定できれば、コストは大幅に削減されるでしょう。
反面、住民票コードの利用が拡散すると、個人に関するすべての情報が11桁の数字の元に集約されることになります。クレジットカードの利用状況、図書館の貸出履歴、通院記録、交通違反・・・。ひとつひとつは些細な情報でも、それらが蓄積されたとき、それはその人そのものを表す情報体になり得ます。欧米やアジアで類似の制度を取り入れている国の中には、番号の濫用のため、利用範囲を縮小している事例も見受けられます。
現在、住民票コードの民間利用は認められておらず、利用した場合の罰則規定も設けられています。その一方で、法改正による利用拡大の可能性も囁かれています。銀行でなくとも、住基ネットの今後には注目したいところです。
里見 唯
提供:株式会社FP総研