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◇韓国再生、荒療治の誤解――スクランブル
21日の日経平均株価は6営業日ぶりに反落し、終値で再び9000円を割
り込んだ。週内にも発表される不良債権処理の追加策や総合デフレ対策
にらみで買いが手控えられた。株価の底値がどこなのかなお手探り状態
のまま、市場は重苦しいムードに包まれている。
「公的資金はどういう基準で投入したのか」――。韓国金融監督院の
東京事務所には最近、政府関係者や日銀、金融機関などから問い合わせ
が相次いでいる。韓国が経済危機に際して実施した構造改革の手法を尋
ねるもので、「できるだけ丁寧に応えるようにはしていますが…」とい
う同事務所の李基淵課長もにわかに脚光を浴びたことに当惑気味だ。
(1)GDP(国民総生産)の3割に及ぶ公的資金の投入(2)財閥企業や
金融機関の整理(3)経営者の責任追及――など政府主導の対応が韓国経
済を危機から救った。こうした方策を日本にも応用しようという論者が
知恵を授かろうと質問に押し掛けているのだ。
だが「構造改革は金融部門に限らず、企業部門など幅広かった」と前
述の李課長が語るように、韓国政府がとった対応は実は荒療治ばかりで
はなかった。企業と銀行の一体処理、失業対策、そのうえでの景気浮揚
策など経済状況全体を見据えた国家戦略と呼ぶべき内容だった。
国際通貨基金(IMF)の支援を受けて、外貨の資金繰りにメドをつ
けた韓国は1998年春、景気の冷え込みで深刻な危機に直面する。韓国総
合株価指数は300を割り込み、銀行や財閥企業の株価が軒並み額面を割
り込んだ。
これを受けて98年6月ごろから韓国政府は本格的な対応に動き出した
。まず生き残り困難と判断した55社を強制的に破たんさせ、銀行5行も
整理した。合わせて資本がき損した銀行に公的資金を資本注入。「日本
との最も大きな違いが金融と産業の両方に平行してアプローチする点だ
」とメリルリンチ日本証券の山田能伸アナリストは指摘する。
見逃せないのは、韓国政府はこの時期に国際通貨基金(IMF)の指
導で進めてきた緊縮財政的なマクロ政策を大きく転換したことだ。年30
%まで急上昇したコール・レートは韓国政府の判断で随時引き下げ可能
に改められた。財政面の制約も緩くして、98年7月には補正予算を編成
して公共投資の積み増しに動いた。
「緊縮政策を維持して企業に自主的な構造改革を促す」(当時の大統
領経済顧問・柳鍾根氏)とした当初の方針は修正され、政府主導で景気
刺激策と構造改革の両方を求めて突き進んだ。
株価はこうした対策を好感して急反発し、総合株価指数は99年末には
1000を上回る水準まで回復した。米国の情報技術(IT)ブームの効果
も大きかったが、財閥企業が活発な増資で急速に財務内容を改善させ、
その後も大宇グループの破たんで起きた社債の大量償還問題を政府系銀
行の支援で乗り切るなど、改革の痛みを和らげる諸策が実行された。
98年前半の危機を乗り切った韓国が示すのは「マクロ政策と構造改革
の両方を考える柔軟性こそ経済再生につながる」という教訓。「国債発
行枠30兆円」などに固執していては、すべてを失いかねない。危機を見
据えた上での現実的な政策を打ち出すこと。政策への失望が株価下落の
一端である日本に、韓国から学ぶべき点は多いはずだ。(橋本隆祐)