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<東短リサーチ>橘田リポート先週までの米国株式の上昇は本格的な…
NAA 4769 : 2002/10/21 月曜日 18:57
内外政治経済・短期金融市場の動向 橘田週間リポート 10月21日号
●先週までの米国株式の上昇は本格的な株価の回復を意味するものであろうか。株価上
昇過程の中で株式投資信託から資金の流出が着実に進んでいる。カラ売りの買い戻しが
上昇の主体となっている●
米国では先週来、企業の7〜9月期決算発表が相次いでいる。その内容をみると企業
収益回復の遅れが目立つ。主要企業の7〜9月期決算は、最終利益が前年比1ケタ台の
小幅な伸びにとどまりそうである。調査会社ファーストコールは、米主要500 社の7〜
9月期企業収益は前年同期比5.5 %増益にとどまるとの推計値をまとめた。これはアナ
リストの業績予測を集計したもので、7月時点では19%前後の増益見通しであったが、
この時点と比較すると大幅に減速したことになる。ただ、9月には多くの企業が業績を
大幅に下方修正し、ハイテクを中心に市場はいったん収益悪化を織り込んだ。7〜9月
期決算は、主要500 社のうち先週までに半分近くにあたる210 社の発表があり、そのう
ち約6割が9月時点での事前予想を上回った。特に、コンピューター大手のIBM、ソ
フト大手のマイクロソフト、自動車大手のGM、シティグループなどの超優良企業は予
想を上回る好決算を発表した。大型優良株への収益懸念が和らいだことで、ダウ平均株
価は10月9日の安値7,286 ドルから18日までに1,040 ドル程度上昇し8,322 ドル40セン
トで週末の取引を終えた。多くの企業が今年9月時点で業績を大幅に下方修正したこと
で、株式市場はいったん収益悪化をハイテク中心に織り込んだ。しかし、発表された決
算内容は9月時点よりよい内容のものが多くなり、こうした結果がきっかけとなって株
式市場に好決算に反応しやすい環境が生まれ、大幅な上昇へとつながったと言える。
主要500 社が当初4〜6月期に前期比1.4 %増と6・四半期ぶりの増益に転換したことで
、7〜9月期は昨年の同時テロの影響が消えることから業績の改善傾向が加速すると予
測して20%近い増益を見込み、さらに10〜12月期にも増益率は20%強に高まると予想し
ていた。しかし、本格的な回復に遅れが出てきたことで、6〜7月頃に予想されていた
2年ぶりの年間増益も危ないとの見方が強まってきた。マイクロソフト、IBMなどの
超一流ハイテク株の増益率は向上が見込まれるものの、大半のハイテク株は下降ぶりが
目立つ状態が続いている。今年4〜5月頃には、米企業はリストラを梃子に本格回復局
面に入るとの見方が多かったが、IT投資の低迷などが収益を圧迫し、ハイテク企業の
収益は回復の目処が立っていない。ハイテク企業が苦戦している背景は、消費者のパソ
コンなどへの購入意欲が低いうえに、企業のIT投資予算も緊縮傾向が強まっているこ
とがある。これから本格化するクリスマス商戦も、当レポートて指摘したように前年同
期比増収を確保できない状態となりそうだ。21日には半導体大手のテキサス・インスツ
ルメンツ、23日には通信機器大手ルーセント・テクノロジーズの決算が発表される。今
週はこの2銘柄の決算結果が相場を上下させることが予想される。先週までの好決算に
反応しやすい相場が続いていくのかどうか、今後の相場を占う意味からも注目されよう
。
先週はダウ平均株価は6.0%、ナスダック総合指数は6.4 %上昇した。2週連続で上昇
したことで、ほぼ1ヵ月前の水準に回復した。こうした上昇の姿をみると、米国株式は
順調に戻り売りをこなしてきた格好であるが、買い注文の多くは売り込まれた金融やハ
イテク株などに偏っている。このため市場には、一時的な買い戻しの域を出ないのでは
ないかとの見方が強い。市場関係者の関心は、9日につけた直近の安値であるダウ平均7
,288 ドルからの回復が中長期的なものなのか、あるいは売り方が買い戻しただけなのか
という点に集中している。しかし、上昇したデータで回復度が高い業種別指数をみると
、金融に続いてITと通信サービスとなっており、不良債権や不祥事疑惑で売られた金
融、ハイテク不況のITや通信など、それまでの下げを主導していた銘柄の上昇が目立
っている。この点を考えると、市場では今回の上昇は、空売りをしていたヘッジファン
ドの買い戻しが相場上昇の主流であるとの見方が強い。こうした動きを証明できる動き
として、あげられるのが、米国株を対象とする投資信託からの資金流出が株価の上昇過
程で起こっているという点である。18日までの9日間でダウ平均株価は1,000 ドル強上
昇したにもかかわらず、株式投資信託からの純流出額は約100 億ドルにも達している。
株価の戻りとともに、米国株を対象とする投資信託は着実に解約が増えているといえる
。こうした株式の流れは、米国株式市場だけにみられる特殊な現象ではなく、日本も含
めて世界的な流れになっていくであろう。年後半に向けて、世界的に株式離れの時代が
到来しよう。世界的なデフレの到来は株式主体経済の終焉を告げていると言えよう。
●米国市場では株安・債券高の潮目に変化の流れも現れてきた。先週、債券相場は底を
打ったとの見方も。日本の債券バブルへの影響は●
日本では失われた10年間でデフレ経済が進展して金利低下が続き、短期金利を中心に
ゼロ%時代が長期化の気配を強めている。さらに、世界的なデフレ圧力の高まりを背景
に低下トレンドは続いていきそうである。先週号の当レポートで、10年物国債利回りは
資金の供給過多状態が続いているため年末までに1%割れもあり、来年前半には0.7 %
程度まで低下するとの見通しを示した。8月の米国貿易収支の赤字幅は港湾スト前の輸
入急増で拡大し、384 億ドルと単月としては過去最大を更新した。輸入の内訳を国別で
みると、対中国の貿易赤字だけが急速に拡大したのが目立つ。対中赤字は前月比16.2%
増の109 億ドルで過去最大を更新した。一方、対日赤字は前月比8%減の52億ドル程度
に低下した。4〜5年前に通商摩擦問題を起こした面影は微塵もない。一方、90年頃ま
で共産主義国であった中国が、東西冷戦終結後市場性経済を導入し、安い労働力を梃子
に世界の生産工場として日本に替わって製品を大量に輸出するようになったため、世界
経済は供給過多の状態が続いている。
米国における低価格の中国製品の輸入拡大は、中
国からデフレを輸入していることになる。現状、世界経済は物の需要が供給に追いつか
ない状況にある。こうした状況が続くと世界的なデフレは当分解決せず、経済のグロー
バル化が進んでいる中ではデフレは世界中に広がっていく。世界各国中央銀行は、デフ
レ対応策として市中に通貨供給量を拡大させる政策を進めている。物の需要が供給に追
いつかない状況下では資金需要は強まらない。余った金は各国とも国債投資に向かって
いる。
過去数カ月の株安時には、マネーが債券(国債)市場へ流れ込んで国債金利は急激に
低下した。10年物米国債の利回りは6月には5.0%台であったが、10月上旬には3.6 %
まで低下した。さらに、若干低下していきそうな気配である。夏頃から国債バブルが指
摘されるようになったが、いつ頃バブルが崩壊するのか市場では関心を強めている。し
かし、先頃とうとう米国有力ヘッジファンドが、このところの急速な金利低下の影響で
資産の50%強に当たる4億ドルの損失を出し、ファンドを閉じると宣言した。また、米
国債に連動した住宅ローン金利も歴史的な水準に低下したことを受けて、期限前償還が
広がって「住宅ローン担保証券」による損失を余儀なくされる事態が発生した。ここに
きて、いくつかの著名なヘッジファンドによる債券運用の失敗が市場の話題となってい
る。つい2〜3ヵ月前には想像もできない大きな変化である。
米国では、低金利を背景
に9月の住宅着工件数は前月比13.3%増加して年率換算で184 万戸強となり、86年6月
以来ほぼ16年ぶりの住宅着工ブームとなった。消費者の間にそろそろ金利低下は一服す
るであろうという読みが強まり、駆け込み需要が一気に強まってきたことによるものと
の見方が強くなっている。国債バブルとの指摘さえある急激な金利低下は、とうとう犠
牲者が出てくるような状況となってきた。米国の市場関係者の間では、株安・債券高の
潮目に変化が出てきたのではないかと心配する人達が多くなっている。米国のITブー
ムと株バブルの崩壊による景気失速は、米政府とFRBの急ピッチなデフレ対策発動で
日本より10倍も早く景気の先行きに明るさがみえそうな気配だ。
イラク開戦の有る無し
にもよるが、来年後半には景気に明るさが取り戻されそうである。株安・債券高の潮目
に変化が生じ、マネーが債券から株式に逆流するとの期待も高まってきた。米国では、
現状短期実質金利はゼロ%となっている。来年後半には利上げもあるとの見方もある。
債券相場は、すでにそうした動きを先き取り始めたようである。米国の債券関係者の間
では、安全資産だったはずの債券に対して投資家がリスク感を強め、株式投資資金も一
段と細くなっていくという不安感と、債券に対する不安心理の高まりで、マネーが債券
から株式に逆流していくという期待感の二つの流れが絡み合う状況となってきた。この
二つの市場心理が方向を決める日も近いであろう。先週の債券市場では、相場は底を打
ったとの見方が高まってきている。米国の国債バブルが終焉を迎える日もそれほど遠く
ないであろう。
一方、日本の国債バブルは、デフレ対応策が進展をみないことからバブルが終焉を迎
えるのはまだ先になるであろう。日本の長期金利は一段と低下する可能性が強い。前回
、募集額に応募額が満たないという札割れ現象を起こした10年物国債の入札が22日にあ
るが、警戒感は強いものの、目先のデフレ対策で財政出動の可能性が後退しているため
入札は無難に終わろう。22日が過ぎれば1%程度まで低下し、その後不良債権処理に向
けて竹中不良債権処理構想が軟調な内容のものとなれば、金利低下はさらに進んでいこ
う。年末に向けて1%割れもあろう。ただ、米国債の金利低下が完全に一服したことが
確認されると、日本の債券金利にも微妙な影響を与えることになろう。
●25日に政府がまとめる総合デフレ対策で実効性のあるサプライズな政策が提示されれ
ば、日銀は30日の金融政策決定会合で金融の追加緩和策を打ち出す。その内容は●
米国株式市場の堅調な地合を受けて、日本の株式も一応下値不安は後退している。ま
た、円安・ドル高となっていることで日本の株価も押し上げられている。そうした中で
市場の焦点は、25日に発表が予定されている政府の総合デフレ対策に絞られつつある。
不良債権処理の過程で生じるデフレ圧力に対して、どのような対策を講じるのか注目が
集まる。懸念は政府の政策の行方である。竹中構造改革チームによる不良債権処理に対
する強硬論は影を潜め、不良債権処理に伴う痛みを緩和する政策がデフレ対策としてい
かに組み込まれるかに市場の目は集中し始めている。減税規模がいかに拡大されるか最
も注目される。具体策に欠けるようだと、株式と円は売りの洗礼を受けよう。もしも、2
5日に政府が不良債権処理や規制緩和、税制改革などについて実効性のあるデフレ対策を
打ち出せば、日銀も30日の金融政策決定会合で追加緩和策を検討する可能性が高まって
くる。日銀の速水総裁は16日の記者会見で、「政府を含めて、デフレ脱却に向けて全体
が動き出して必要性が出てくれば、日銀としても考える必要があるかもしれない」と追
加緩和の可能性を示唆した。日銀内部でも、政府のデフレ対策の中身を見極めた上で、
デフレ阻止に向けて協調姿勢をとることが必要かどうかを考えるとの意見が多いようだ
。
日銀は10月の金融経済月報を発表したが、その中で景気の現状について、「全体とし
て下げ止まってはいるが、世界経済を巡る不透明感の強さもあって回復へのはっきりし
た動きはみられない」と景気回復の弱さを指摘して総合判断を3ヵ月連続で据え置いた
。特に、最近の株価については「かなりの下落」と表現した上で、不良債権処理が株価
に与える影響を注意深く見ていく姿勢を強調した。この株価注視の表現を示したのは昨
年8月以来のことである。日銀総裁は、30日の金融政策決定会合で追加金融緩和の必要
性について検討すると発言し、NHKの番組でも追加緩和の手はあるとはっきりと発言
するなど、積極的な緩和論が強まりを増し始めている。
このところの日銀のデフレ対応策は、市場でサプライズと受け止められるものが多い
。中央銀行による民間銀行保有株の買い取り宣言に続いて、10月11日には不良債権処理
の基本的な考え方を提言して、政府に公的資金導入の必要性を提唱するなど、不良債権
処理の促進に前向きな姿勢を強めている。日銀総裁は追加緩和の手はあると発言してい
るが、その中味はそれほど多くはない。そこで、次の日銀の一手とはどんな政策がある
のか、10月16日付の日経新聞は、
@インフレ目標導入策
A当座預金残高目標引上げ策
B長期国債買入れ増額策
など三つの政策をあげている。私もまったく同感である。
この中で最も有効的な政策はどれかというと答えは難しいがBと@ではないかと思う。
Aはすでに10〜15兆円に目標を引き上げてきたが、現状のデフレ経済の中でいくら潤沢
な資金供給をしても実際の銀行貸出は増加せず、金融市場にお金がジャブジャブしてい
るだけで、消費者物価も上昇の兆しをみせない。という点からみると、デフレ対策とし
てのAによる追加緩和は過去の政策となってしまったようである。Bの長期国債買入れ
増額は、Aに対する具体的な資金供給手段としては長期国債の買い入れを増額する策が
一番手の検討対象になるであろう。長期国債の買い入れ増額は、資金供給手段としてだ
けではなく、市場に政府との協調姿勢を訴える効果も期待できる。また今後長期的には
国債の増発は避けられず、国債市場の需給悪化を抑える姿勢を示せることになる。現在
月1兆円ずつ実施している長期国債の買い入れ額を5,000 億円増やすというサプライズ
の政策が打ち出されれば、効果は大きいと言える。一部には、そんなに買い入れを増や
すと中央銀行としての信認低下につながるとの見方もあるが、不良債権処理を加速して
いくからにはそんなことには目を瞑る時が到来している。当レポートでは、次の日銀の
政策の一手は長期国債の買い入れ額を毎月5,000 億円増額して1兆5,000 億円にするこ
とではないかとみている。日銀の二番手のデフレ対応策として@のインフレ目標導入策
が考えられる。竹中財政・金融相を中心に政治家・学者などが提唱する政策である。英
国、ニュージーランドなど、インフレ下での導入例はあるがデフレ下での導入例はない
。しかし、この政策については日銀は導入に強く抵抗している。インフレ目標を導入す
れば、目標達成に向けて手段を選ばずに資金供給する必要に迫られる。その場合に日銀
は、日銀券発行残高を長期国債保有額の上限としている規制を撤廃して長期国債を無制
限に買い入れることを求められ、歯止めが効かなくなる恐れが出てくることを強く心配
して抵抗している。日銀の政策手段としては@の政策は二番手になるが、もし実施する
としても多くの制限をつけた限定的な政策となるであろう。以上の点から考えるとBの
政策が日銀の次の追加金融緩和策になるとみている。
●円相場は125 円から135 円の新たな円安局面入りになってきた。イラク開戦が絶好の
投資タイミング。来年は大幅な円安に●
9月後半の当レポートで、10月以降の円相場の見通しについて1ドル=120 円から125
円のレンジから大きく下放れて、125 円から130 円の新しいレンジに突入していくであ
ろうと申し上げたが、このところの流れはそうした方向になってきた。ここへきての円
安の理由は、世界的な株安がひとまず収まったことでドルが見直されることになるであ
ろうとの見方によるものである。米国では、住宅着工件数が年率換算で16年ぶりの高水
準となり、企業収益も大型優良株中心に前期比予想増益率が高まるなど、米国経済に対
する悲観論も後退しつつある一方、日本のデフレ観が強まっていることから、円売り・
ドル買いが進めやすい環境が整ってきた。焦点は日本政府が打ち出す総合デフレ対策に
絞られつつある。不良債権処理の過程で生じるデフレ圧力に対し、どのような対策を講
じるのか注目が集まる。ただ、減税策にしても財務官僚の影響が大きく、対策は小粒な
ものになるとの観測を市場は織り込み始めて円安基調を強めている。円買い材料にされ
るのは、余程サプライズの政策を打ち出した場合に限られるであろう。財務省の黒田財
務官は「この円安は始まりの段階で、円安はさらに進む」と言っているが、先週から始
まった125 円〜130 円のレンジの円安は、11月乃至は12月には130 円から135 円の新し
い局面に突入していくことになりそうだ。
米国は巨額の経常赤字をまかなうために常に
世界中から投資資金を呼び込まなければならないが、8月下旬以降の日米欧の株安はド
ル買いの手控え要因となった。そうしたドル買い手控え要因が、最近の急激な株価上昇
で、これまでの反動が出て米国に資金が向かうとの思惑が市場に強くなってきた。先週
号の当レポートで来年円相場は大幅な円安になるとの見方をするアナリストが増えたと
申し上げたが、200 円台に突入するとの見方をする人達もでてきた。イラク戦は避けて
通れないようで、来年1月が開戦の時期のようだ。この時にドルは一時的に大きく売ら
れる可能性は強い。この時には「全財産を叩いて」(というと大袈裟な言い方かもしれ
ないが)ドルを買い、200 円台をつけたらドル資産をすべて売却すれば久しぶりに勝利
の美酒を味わえる楽しみな年が訪れそうである。(終)
(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次 記 )
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