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(回答先: ティグリッツ教授の提言「日本経済の処方箋」NHK−BS「米国型資本主義を越えて」 投稿者 スーパー銭湯 日時 2002 年 10 月 20 日 23:58:19)
スーパー銭湯さん、こんにちわ。
私も番組を見ていました。
その前の田中直毅氏も出ていた“アメリカ経済の見通し”番組のほうがより面白いものでしたが...
スティグリッツ教授の「国民生活を向上させることを第一義とした姿勢」を高く評価していますし、日本経済に対する提言も、国際金融資本の利益ではなく、日本経済をまっとうにしたいという思いから行われていることに好感を持っています。
そのような意味で、番組のなかで、「日本が長期的には構造改革しなければならないのは間違いないが、短期的にはデフレ不況を解消する方策を追求しなければならない」(趣旨)と発言したことのほうが重要だと思っています。
具体的な政策ではなく、「構造改革」なのか「デフレ不況脱却」なのかという目標の選択こそが明確にされなければならないと考えています。
日本は、課題は何かさえはっきりしないまま、「改革なくして成長なし」や「痛みなくして成長なし」というかけ声だけで動いていくという危うさのなかにあります。
「デフレ不況の解消なくして改革なし」や「デフレ不況を解消すれば痛みが少ない条件で改革が可能」という認識が多数派になっていないことが問題です。
そして、改革の具体的な内容は同時的に考えるとしても、デフレ不況を解消した後に実行するというのが、国策という極めて重い政策を議論する際に求められる身構えだと思っています。
「改革なくして成長なし」というスローガンを良しとするのでは、戦前の統治者のように、「対米戦なくして国家の存続なし」や「死中に活を求める」という倒錯的な判断で300万人を超える犠牲者を出したあげく敗北し、6年近く占領された歴史経験が全く活かされていないと言うことになります。
前置きが長くなりましたが、スティグリッツ教授が提示された政策では「デフレ不況」を解消することはできません。
(「不良債権処理の加速化」のような“破壊政策”ではないので、害はそれほどありませんが...)
■ 円安政策
貿易収支や経常収支が赤字であれば、有効な政策だと認めます。
しかし、日本は、貿易収支が黒字で経常収支ベースでは10兆円を超える黒字を計上している貿易優良国家であり対外純債権国家です。(これは、日本経済の通貨的“富”が年々10兆円以上増加していることを意味します)
対外資産価額が円ベースで高くなり財務状況が良くなることや輸出企業の利益が増加することは事実ですが、年間10兆円を超える黒字でありながらデフレに陥っているわけを説明しなければ、円安が「デフレ不況」を解消する有効な政策とは言えません。
円安で輸出優良企業のバランスシートが良くなり利益も膨らんだとしても、銀行に運用(貸し出し)されない通貨が積み上がるだけで、せいぜいが国債に化けるという現在の構図は維持されることになります。
そして、円安で利潤が膨らむとしても、輸出数量が増加するとは限りません。輸出数量が増加しなければ、雇用の拡大や産業連関的利益の拡大も実現されません。
また、アジア地域で日本企業が主体となった「水平分業」が進んでいるなかで、円安が長期的な国債競争力の維持に資するかどうかもはなはだ疑問です。
円安政策が「デフレ不況」の解消に効果があるのなら、経常収支で10兆円以上の黒字を続けていながら「デフレ不況」である現実を説明できなくなります。
■ 金融緩和政策によるインフレ誘導策
デフレの解消ですから、インフレ基調に転換させるということになりますが、金融政策でデフレが解消できないことはここ6年ほどの政策運営で実証済みだと言えます。
日銀が商業銀行に通貨を大量に供給するという金融緩和政策は実施できますが、商業銀行が一般経済主体に供給する(貸し出す)通貨量を拡大する金融緩和政策は、現行の経済論理(資本の論理)をベースにする限り、「デフレ不況」下で有効に働くことはありません。
通貨流通量の“過剰”が引き起こすインフレは金融政策で抑制することができても、財の価格が下落し債務負担が過大になっていくデフレで通貨流通量を増加させていくことはできないという認識を持つ必要があります。
日銀と商業銀行の間に巨大な通貨プールが出来上がり、商業銀行はそれを運用して少しでも利ざやを稼ごうと国債を買っている構図になっている論理(わけ)を明らかにする必要があります。
金融緩和政策は有効性を持つとしたら、基本的自由主義政策を放棄して、法的強制力で銀行に貸し出し量を増加させる政策を採ったときです。
スティグリッツ教授も番組中で語っていましたが、世界の経済学者が日本の「デフレ不況」に高い関心を示しているそうですから、知識と思考力を結集して有効な政策を見出して欲しいと思っています。