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【ニューヨーク17日=坂本裕寿】米国で物価の下落基調が次第に強まり、実体経済への悪影響を懸念する声が出始めた。日本ほど深刻ではないが、物価下落が低迷する企業収益を一段と冷え込ませ、大規模なリストラを通じて雇用悪化につながるのではないかといったデフレ警戒感も強まりつつある。
ニューヨーク市内の家電量販店では大幅な値引き販売が常態化している。「サーキット・シティ」はDVDプレーヤーを59・99ドル(約7400円)で発売、「コンプUSA」は定価130ドルの情報端末を14・92ドル(約1850円)まで値引きするなど安売り合戦は白熱する一方だ。
耐久消費財に限らず、幅広い分野に価格下落の波が押し寄せている。8月の米消費者物価統計によると、パソコンが前年同月比21%、ビデオデッキが同11%と二けた以上の値下がりとなったほか、家具、衣料品、自動車なども軒並み下落した。
また、長距離電話通話料(下落率4・3%)、航空運賃(同3・8%)、ホテル宿泊料(同2・0%)など商品に比べて値下がりしにくいサービス分野での物価下落も始まっている。
価格下落の背景には、90年代のバブル期に生産設備を増強した米企業が、その後の景気後退による需要不振で供給過剰に陥っている事情がある。競争が激化する中で企業は顧客争奪のために安売りに走らざるを得ない状況だ。
米サウスウエスト航空のように徹底的なコスト削減によって格安航空券を実現して業績を上げている企業もあるが、ハイテク、通信業界などでは売上高が減少する中で利益を確保するために工場の閉鎖や大幅な人員カット、給与削減に追い込まれる企業が相次いでいる。
こうした物価下落の現状について、米政府は「日本のようなデフレに陥いる危険性はない」(米大統領経済諮問委員会のグレン・ハバード委員長)とデフレ懸念を一蹴している。
確かに8月の消費者物価指数も前年同月比では1・6%上昇し、物価が総崩れで下落しているわけではないが、消費者物価は2000年の3・4%から2001年の1・6%へと上昇率の縮小傾向は鮮明となっている。
全米エコノミスト協会のハーベイ・ローゼンブラム会長が「デフレに陥る可能性は否定し切れない」と指摘するなど民間からはデフレ懸念が強まっている。さらに「物価の番人」である米連邦準備制度理事会(FRB)の内部でも、「現在はデフレとは思わないが、デフレと戦う経済成長を実現しなければならない」(ダラス連銀のロバート・マクティ総裁)、「今後はデフレのリスクを注視する必要がある」(リッチモンド連銀のブローダス総裁)といった発言が相次ぐなど、デフレ警戒感が次第に強まっている。
(10月17日18:51)