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4大銀行の一角が作成した説もある過剰債務の「51社リスト」が流れ、不良債権処理の加速策を検討する金融庁プロジェクトチームの動向に、金融・産業界は戦々恐々とする。なんと、完全非公開の会合では「具体的な銀行や企業名を出して議論している」(与党幹部)という。処理対象になりそうな企業を列挙した「30社リスト」も含め、「51社リスト」をもとに、俎上(そじょう)に載っていそうな企業を業種ごとに探ってみる。
「平蔵・木村の劇薬コンビが不良債権処理を本気で強行するなら、ターゲットになりそうな企業は30社リストに掲載された企業となるだろう」
与党の幹部はこう指摘する。なぜか。
金融庁プロジェクトチームの「目玉」は、何といっても竹中平蔵金融・経済財政担当相(51)の肝いりでメンバー入りした処理強硬派の日銀OB、木村剛氏(40)である。
「30社リスト」は木村氏自身が作ったもので、小泉純一郎首相にもドラスティックな不良債権処理によるハードランディングを進言している。
金融コンサルタント会社社長を務める木村氏は昨年、『緊急経済対策と不良債権問題』と題する資料を作成。その中にリストも盛り込まれているわけだが、興味深いのは不良債権問題に関する次のような指摘である。
「不良債権問題は大手30社問題である」
「大手30社問題は限られた産業と企業に集中した問題である」
つまり、ゼネコン、流通、不動産の不振3業種を中心とする問題の大手企業を処理しないと、不良債権問題の解決はないと主張しているのだ。
このうち、ゼネコンの青木建設、佐藤工業、日産建設、大手スーパーのマイカルはリスト作成後に破綻(はたん)。
残った企業が、金融庁プロジェクトチームの論議で名前が出ている可能性が極めて高い。
では、「51社リスト」も参考しながら、業種ごとに不良債権処理のターゲット企業を探る。
●ゼネコン・不動産
「30社リスト」でほぼ半分、「51社リスト」でも3分の1をそれぞれ占めるのがゼネコン・不動産業界。取り巻く環境は厳しさを増すばかり。
民間シンクタンクの試算だと、国と民間を合わせた建設投資は、平成13年度の60兆円強から今年度は約56兆円、来年度はさらに約54兆円と減少している。
「国の公共事業費は今年度予算で10%カットされ、来年度も3%カットはほぼ確実な情勢。来年は建設中の大型ビルが次々と完成し、供給過剰が懸念される『2003年問題』もある。建設市場のパイの縮小は予想以上のスピードで進んでおり、建設投資50兆円割れも時間の問題ではないか」(ゼネコン幹部)
もともと、ゼネコン業界は、「オーバーカンパニー」(会社が多すぎる)といわれている。
市場規模が縮小するなか、鹿島などスーパーゼネコンも参入し、巨大な民間ビルの坪当りの請け負い単価がマンション並みに下がり、ダンピング合戦がし烈である。
「仕事を請け負っても、利益が出ない状態。それでも仕事がなくて破綻(はたん)するよりまし。メーンバンクに借金を棒引きしてもらったが、必然的に有利子負債が増えていく」(準大手ゼネコン幹部)
そのためゼネコン業界は「整理・淘汰がより求められ、不良債権処理でも真っ先にターゲットになるはず」(民間信用調査機関幹部)。
30社リストにエントリーされているゼネコン・不動産会社のうちマーケットから不安視され、株価が額面割れとなっているのは、大京、藤和不動産、三井建設、ハザマ、熊谷組、フジタ、飛島建設、住友建設の8社。
このうちもっとも借金(有利子負債)を抱えているのは大京で、今年3月末時点でその額は1兆円強。「市場でも折に触れて経営不安説がささやかれる」(証券ディーラー)が、今年9月にUFJ銀行など主力4行が総額4700億円の金融支援を実施。さらに同月、所有するオフィスビルなどの不動産を森トラストなどに売却し、再建を急いでいる。
約5200億円の有利子負債を抱える藤和不動産は、平成11年に筆頭株主のフジタや旧東海銀行(現UFJ銀)から計約3000億円の金融支援を受けたが、早くも息切れ状態に。今年9月には、UFJ銀などの主力行が2度目となる総額2300億円の金融支援を検討し始めた。
三井建設は、住友建設と来年4月に合併することで基本合意した。これに三井住友銀行を主力行とするフジタが合流する予定。フジタは会社分割によって不動産部門を切り離し、本業の建設部門に絞り込んでいる。
課題は「3社が経営統合した場合、有利子負債も一体となって巨額になる。建設市場が縮小傾向にあるなか、いかに収益力をつけて、借金を返していくかがポイントになる。それができないようだと、単なる“負け組”の寄せ集めになってしまう」(民間信用調査機関幹部)
飛島建設とハザマはいずれも、みずほグループ系の準大手ゼネコン。飛島は、同じみずほグループ系のスーパーゼネコン大成建設と提携して生き残りの道を模索中。「両社が今後、みずほ主導でどのような動きをするのか注目される」(金融庁関係者)という。
最後に、5000億円超の有利子負債を抱える熊谷組。昨年、三井住友銀などから4500億円の金融支援を受けて再建を目指しているが、再建計画の期間が10年以上と超ロングラン。「2年以内での不良債権処理を掲げる小泉政権が、このような再建計画をそのままにしておくかは微妙」(証券アナリスト)
●流通
30社リスト、51社リストともに掲載されているのが、“不良債権処理の象徴”といわれているダイエー。カード事業を除く有利子負債は1兆6000億円と超ビック。
主力のUFJ銀、三井住友銀、旧富士銀(現みずほコーポレート銀行)から5200億円の金融支援を受けて再建を進めているが、9月の既存店売上高が前年同月比7%減となるなど相変わらず低迷。高木邦夫社長がみずから営業の指揮を執ることになった。
株価が暴落した10月7日には、「ダイエーが不良債権処理のターゲットになる」との観測が市場を駆け巡り、ダイエー株はついに100円割れ。以降、政府側の動きが活発になり、翌8日には平沼赳夫経済産業相が「ダイエーの再建は順調」と発言。10日にはダイエー再建のためのファンドに政府系金融機関の日本政策投資銀行が100億円ほど出資する方針が明らかになった。
「一連の流れをみる限り、処理の対象とはならないようだ」(流通担当アナリスト)との見方が強くなっている。
●ノンバンク
注目されているのは、2兆円超の借入金を抱えるオリエントコーポレーション。今年8月には、主力のみずほコーポレート銀に2000億円の優先株を引き受けてもらい、増資した。しかし、「その程度ではマーケットの不信感はまったくぬぐえない」(金融担当アナリスト)との声も。
●不透明
「重要なことを学者が密室で決めている」(自民党幹部)と批判が吹き荒れる金融庁プロジェクトチーム。おまけに元締めの竹中氏もやはり学者で、金融行政のトップとは思えないような言動が目立つ。
どのような形で不良債権処理の嵐が吹き荒れるのかまったく予想がつかないところに、本当の怖さがある。