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増税の中身は?時期は? 政府・自民税調に迷い
不良債権処理の加速に伴うデフレ対策で焦点の先行減税論議が、規模をめぐって行き詰まっている。手法は政策減税を中心とする方向が固まったものの、原資となる将来の増税の中身や時期が定まらないからだ。影響力の大きい自民党税制調査会には、消費税の「益税」解消などに慎重論も強い。「多年度税収中立」を重視して減税規模を抑えるのか、景気に配慮して拡大するのか、年末の予算編成時まで綱引きが続きそうだ。
●「多年度中立」枠組みが「規模」を縛る
政府の経済財政諮問会議では今春から、先行減税をめぐって、法人税率の引き下げの是非や減税規模を中心とした議論が続いてきた。法人税率は先週、03年度の引き下げを見送ることで事実上決着したものの、減税の規模は諮問会議の民間議員が増減税差し引きで2.5兆円以上、塩川正十郎財務相が1.5兆円を主張し、平行線のままだ。
個人向けの減税策では、登録免許税や不動産取得税の減税など土地流通課税の軽減のほか、配当課税の軽減など証券税制の見直しも新たな検討課題となり、資産デフレ対策として期待が高まっている。親から子への資産移転を促す相続・贈与税の一体化では、現行贈与税の非課税枠の特例措置550万円を、「1千万円プラスアルファ」(石弘光・政府税調会長)まで拡大するかどうかが焦点だ。
減税の議論ばかりが先行したきらいがあり、「肝心の『苦い話』はこれから。ようやく、全体としての議論をする状態になった」(財務省)段階だ。悪化が続く財政負担を考慮し、減税分を後年度の増税で取り戻す「多年度税収中立」の枠組みを守る以上、増税のめどがたたないと、減税規模も決着しない。
●中小企業へのしわよせを懸念
03年度の税制改正は「あるべき税制」のための初年度、と財務省は位置づけている。塩川財務相は、これまで政治的配慮などで生まれた特別措置など「税の空洞化」を埋めれば、7千億〜8千億円程度の増収になると想定する。
具体的には、女性の社会進出を妨げているとの批判がある配偶者特別控除や、高校・大学の世代の子どもだけが対象となる特定扶養控除の廃止・縮小だ。消費税の益税問題は、納税が免除される中小・零細企業の売上高を3千万円から大きく引き下げる案が有力だ。
だが、「どれぐらいの規模で、いつから実施するのか」は白紙だ。個人や中小企業の負担増は、消費を冷やす可能性もある。自民党税調幹部も「国民全般や中小企業を相手にした増税は、きわめて難問だ」とみる。
このため、02年度の増税が見送られた、たばこや発泡酒の増税も浮上してきた。だが、発泡酒増税は「ビールの税率引き下げとセットにする必要がある」(政府税調筋)という問題もあり、大きな税収効果は期待できない。
法人向けは、研究開発や設備投資などの政策減税の拡充に向け制度づくりが始まっている。
一方、一般的な法人課税の軽減では、法人税率の引き下げが見送られただけでなく、首相が指示した「外形標準課税導入による実効税率引き下げ」も心もとない。黒字企業には負担減でも、赤字企業にしわ寄せがいくことに、中小企業を中心に反対が強いからで、平沼赳夫経済産業相が難色を示す。昨年末に03年度の税制改正をメドに導入すると決めた自民党税調も「導入は難しい」(幹部)との立場。山崎拓自民党幹事長も「当面は見送るべきだ」と語る。
企業グループ内の損益を通算する連結納税制度は今年度始まったばかりだが、減収対策として2年間導入される2%の付加税の撤廃を求める声が経済界に強い。国税庁の15日の発表では、3月期決算企業で連結納税適用を申請したのは約160の企業グループ。東証1部上場の3月決算企業でみると、約13%だった。
付加税を1年限りで廃止すれば、大企業には減税となるが、中小企業にはほとんど関係がない。昨年秋に紛糾した議論をまとめた自民党税調は「インフラである制度を、毎年変えるのは好ましくない」(幹部)とメンツにもかかわるため、否定的だ。
◇ ◇
◆税制改正の主な焦点
・先行減税の規模
・多年度税収中立の仕組み(増減税の組み合わせと、それぞれの実施の時期)
・所得税の控除の廃止・縮小による課税最低限引き下げ。導入時期と増税幅
・消費税の「益税」解消に向けた免税点制度と簡易課税制度の見直し
・外形標準課税の導入
・たばこ、発泡酒の増税
・相続・贈与税の一体化と非課税枠など
・土地流通課税の軽減
・配当課税の軽減など証券税制の見直し
・連結付加税の早期撤廃の是非
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