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○IMF(国際通貨基金)は、一九九七年、アジア経済危機を演出し金融危機ひとまず小康、米・IMF、綱渡りの火消し(激震アジア)   投稿者 hou 日時 2002 年 10 月 13 日 19:15:41:

(回答先: 小泉はアメリカによる日本略奪を粉砕できるか? 投稿者 抵抗権 日時 2002 年 10 月 12 日 16:46:29)

アジアを襲った通貨・金融危機は、その収拾に向けた米政府の本格関与で新局面に入った。同政府高官と国際通貨基金(IMF)首脳の関係国歴訪はインドネシアに経済改革の強化を約束させ、ひとまず国際金融市場は小康を取り戻し始めた。しかし、火種は随所にあり、危機が去ったとみるのは早計だ。むしろ米政府・IMFのあわただしい動きはアジア危機の深さと広がりを浮き彫りにしている。
 いつもなら人影もまばらな昨年のクリスマスイブのホワイトハウス――。クリントン大統領、ボウルズ大統領首席補佐官、オルブライト国務長官、コーエン国防長官、釣りの休暇を切り上げて駆けつけたルービン財務長官の姿があった。
 「韓国経済の破たんは朝鮮半島の安定化を困難にする」、「政府の関与なしには民間銀行は債務の返済猶予には応じない」――。席上、そんなやり取りが交わされたことは想像に難くない。ウォール街には「すぐ手を打たなければ韓国の債務不履行(デフォルト)は避けられない」といった警報が鳴り響いていた。大統領はこの時、十七億ドルの融資実行を決断した。
 緊急会議が再び開かれたのは約二週間後の一月八日。接客中だったスパーリング大統領補佐官(国家経済会議担当)は「ちょっと呼ばれたので」と席を外した。大統領こそ不在だったが、ほぼ同じメンバーが集まり、インドネシア情勢が話し合われた。同国はこの日だけで一五%もの通貨暴落に見舞われていた。
 アジア危機に対する日本の力の限界は訪米中の日本の閣僚らの発言で明らか。「米政府が前面に立つしかない」という方針が確認され、サマーズ財務副長官ら特使の派遣が決まった。
 米政府はアジアの地域安全保障が揺らぐ懸念も強めた。「インドネシア軍部にIMF合意に基づく軍人大量解雇への不満があり、国防総省はそれを警戒した」と政府周辺は指摘する。
 もう一つの懸念はアジアにおける「反米感情」の台頭だった。クリントン大統領は十一日付のチュアン・タイ首相への親書でキッシンジャー元国務長官が同国を訪れると伝えた。元長官は「金融危機そのものより、反米感情の高まりを警戒すべきだ」と訴え、その訪問は今回の危機による米国のアジアでのプレゼンス(存在感)の変化を瀬踏みするのが目的とみられる。
 サマーズ副長官ら使節団はインドネシアで「米・IMF進駐軍」とみなされ、反発を増幅するリスクを負っていた。これを補完したのがクリントン大統領の働きかけで、橋本竜太郎首相を含む多数のアジア各国首脳がスハルト大統領の「包囲網」を作ったことだ。
 シンガポールのゴー・チョクトン首相やマレーシアのマハティール首相らがこの包囲網に加わったのは、インドネシアの社会不安が華人排斥運動になれば「自国への波及が避けられない」とみたからだ。
 この「包囲網」は政治や地域安全保障の面からみれば「スハルト支援網」ともとれる。明確な後継者がいないだけに、体制が崩壊すれば内乱にまで発展しかねない。スハルト体制維持と引き換えに経済改革をのませる作戦だ。スハルト大統領と会ったコーエン米国防長官が「危機克服のために全面協力する」と異例の発言をしたのも安全保障の危機をにらんでいる。
 昨年七月のタイの通貨危機以来、支援の中心にあったIMFにとってインドネシアの改革路線の強化はメンツのかかった交渉となった。危機が収まらないどころか拡大したことに、アジアだけでなく米議会、国際金融の学者までがその経済改革プログラムを「事態の混乱に拍車をかけただけ」と酷評し始めたからだ。
 カムドシュ専務理事に先駆けインドネシア入りしたフィッシャー副専務理事はマリ蔵相と会い、三月に予定する追加融資の停止も辞さない意向を伝えた。
 同国政府は当初「米国もインドネシアを大事に考え、むちゃは言わない」と高をくくっていた節があったが、副専務理事の発言で空気は一変。十月のプログラムで「つぶしそこねた」(IMF当局者)スハルト大統領一族の事業の象徴である国民車計画にまでメスが入る結果となった。
 しかしカムドシュ専務理事自らが「二十一世紀型の危機」と呼ぶアジア金融危機に、IMFの処方せんが適切だったかという反省は内部にも出始めている。
 伝統的な通貨危機は経常収支の赤字を埋める外貨不足から発生、財政・金融政策で需要を抑え、収支を改善するのが最善の策とみられてきた。だがいまアジアで起きているのは巨額の短期資本の流出。市場の信認が回復しない限り、外貨不足はなくならない。
 IMF関係者は「銀行危機への読みが甘かった」と話す。IMFはインドネシア情勢に関し、「最初の十六の銀行閉鎖で、さほど経営が悪くない銀行にまで取り付けが拡大。中銀が通貨供給を増やさざるを得なくなり、市場に金融緩和という誤ったサインを送った」という反省を交えた内部リポートをまとめている。
 米・IMF関係者のアジア歴訪はとりあえず国際金融市場に安心感をもたらした。しかしルービン財務長官は十六日の米テレビで最悪期を脱したかと問われ、「(占いの)水晶玉は持っていない」と慎重だ。
 ウォール街の関係者が米・IMF使節団最大のイベントとみていたのが、サマーズ財務副長官と中国の朱鎔基副首相との会談だ。
 今回の金融危機は「九四年一月の人民元切り下げで東南アジアの輸出競争力が低下したことが遠因」(サンフランシスコ連銀)といわれる。その東南アジア通貨が暴落したいま、中国が競争力回復のために人民元の再切り下げ、あるいは香港ドルの切り下げに動くことは「当局者にとっては悪夢」(IMF関係者)といえる。それは市場による強制的な通貨切り下げの「第二ラウンド」の始まりを告げるからだ。
 朱鎔基副首相は人民元を切り下げない方針を改めて明確にしたが、「国有企業の改革などを円滑に進めるために政治的な要因で切り下げへの誘惑が強まるのは避けられない」という見方は市場になお根強い。
 中国がその「防波堤」を守ったにしても、三月に大統領選を控えたインドネシアの政治情勢、年内に約七百億ドルもの外貨を必要とする韓国の日米欧民間銀行との対外債務交渉の行方など、不透明な要因は山積している。タイ、マレーシアでも銀行の不良債権の拡大などバブル崩壊の傷跡はなお大きい。
 「再び市場がアジアを襲った時、米当局の残る手立てはアジア通貨買い・ドル売り介入しかない」――米市場にはこんな冷ややかな観測が流れている。

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