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内外の株価の下落が止まらない。
週明け7日のNY市場では、ついにS&P500種まで7月に記録した安値を下回ってきた。この日は、785.28ポイントと5年ぶりの安値圏に沈んでいる。S&P500種平均の動向は、じつは、チャート分析上からも注目されていた。チャートの形が「ヘッド・アンド・ショルダー」といって、まさに人間の体のラインに例えると、肩から頭の方へ上がってゆき、そこからまた反対側の肩まで下がってきている形となっていた。
現地7日の値動きは、その肩のラインを下に切ってきたことになる。セオリーからは、この先、腕を駆け下り、手首辺りまでくるとすると700ポイント接近が視野に入ることになる(あくまでテクニカル分析上の話ではあるが)。もちろん、その場合でも一本調子の下げというわけではなく、「自律反発」と表現されるが、上下動を繰り返しながらの「下げトレンド」ということになるのではないだろうか。
いずれにしても、わずか30銘柄のダウ平均にくらべ、こちらは500銘柄の指標なので、より株式市場の実態を示しているといえる。事実、この指標の値動きは、多くの投資信託や年金基金の運用成果算定の基準値、いわゆる「ベンチマーク」にも採用されており、象徴性は「ダウ30種」でも、代表性はこちらの方が高いということである。
前回10月3日配信号で欧州系保険会社の苦境について取り上げたが、その後、欧州に限らず米国系も含め金融機関の経営内容が予想以上に痛んでいることが明らかになってきている。ここにきて業績を下方修正したり、不良債権の増加に対し貸倒引当金を積み増したりという事例が増え、それにともない該当金融機関の株価の下げが目立ってきた。主なところを挙げてみると以下の様になる。
クレディ・スイス 45.10j(1/7 02年)→ 13.56j(10/7 02年)
JPモルガン 40.95j(12/6 01年)→ 16.15j(同)
バンク・オブ・ニューヨーク 46.50j(1/11 02年)→ 20.85j(同)
アリアンツ(独・保険大手) 25.62ユーロ(11/8 01年)→ 7.35ユーロ(同)
UBS(スイスユニオン銀行) 51.82j(12/17 01年) → 33.79j(10/9 02年)
(ドル表示は、NY市場の数値)
そうそうたる名前が並んでいるのだが、前回、「(海外市場は言うまでもなく)東京株式市場にもこうした欧米金融機関の換金売りが出ているものと思われる」、としたのだが、ここにきて市場関係者から欧州系の“投げ売り”が続いているとの報告が見られるようになってきた。やはり“なりふりかまわぬ”売却があり、その裏には、それぞれの“窮状”が垣間見えるのである。
したがって、このところの海外投資家の大量売り、日本株急落も、よく言われる「日本売り」というよりも、むしろ「先方のお家の事情」といった側面も強いと思われる。それが国内の悲観筋の売りと相まって、東京の派手な下落につながっていると思う。これもまた形を変えた米国バブル崩壊の余波である。
さて、ここまでは、米国バブル崩壊による損失発生とそれに対する対応という側面にスポットを当てたが、違った形での余波もある。
当欄では、以前から米国で過熱する住宅ブームについて取りあげ、今後の米国金融経済の波乱要因として注目してきた。実は、こうした現象は、米国に限ったことではない。例えば、英国でも現在、米国を上回る住宅ブームが起きている。そしてその背景には、米国へ向けられた投資資金の“本国帰り”現象がある。端的には、いわば行き場を失った“レパトリ・マネー(前回配信号参照)”が矛先を住宅投資に向けたことから起きているのである。
具体的な数字を挙げると英国では、この9月、平均的住宅価格の上昇率が月間で4.3%にもなっている。データを公表している「ハリファックス社(スコットランド銀行系列の大手住宅ローン会社)」によると、調査を開始した1983年以来、最大の上昇率としている。また、ここまでの年間上昇率は24.2%と、ブームに沸いた1989年以来のペースという。この24.2%という数値は、中間値なので、それを遥かに上回るものもあるわけで、相当な過熱状態といっていいだろう(ちなみに米国は7%)。
ブームの背景のひとつは、昨年来の世界的金融緩和の流れにある。英国でも、中央銀行にあたるイングランド銀行が7度にわたり利下げを行い、その結果、金利水準は約40年ぶりの低水準になっている。政策金利の低下が、住宅ローン金利の低下につながり、住宅需要を刺激するというのは、米国と同じ構図である。
そこに、これまで内外の株式に投じられていた富裕層を中心とする一般投資家や機関投資家の投資マネーが、さらに振り向けられたことから、住宅市場は一気に白熱化することになった。その様子は「ロンドン中心部の全新築住宅販売件数に占める賃貸目的購入(つまり投資用・・・筆者注)の比率は70%に達する」、「賃貸目的の住宅ローンの件数は4年で7倍に増えた」と報じられている程である。
これも米国バブル崩壊がもたらした現象のひとつであり、こうして新たに発生したバブルが、また弾け、さらに波紋を広げるという構図が続きそうだ。
金市場の方は、レンジ相場(一定の価格帯での取引)が続いている。320jを中心にしての取引である。こうした展開を市場内の用語では「保ち合い(もちあい)」と表現するが、往々にして、こうした値動きの小さな、いわば“煮詰まった”展開の後には、割と大きな値動きの来ることが経験則から導かれるが、果たしてどうか。(10月10日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎