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http://www.fitchratings.co.jp/contents/Press_Banks/34_150.shtml
邦銀:ついに破局に立ち向かうのか、再びもたつくのか?
2002年10月9日 23:36
フィッチ・レーティングス−東京/香港/ロンドン−2002年10月9日:
フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」)は、本日、信用ならびに市場リスクに対処するための現実的な方策により、すでに資本不足の状態にある一部の大手邦銀が、実質的に債務超過に陥る可能性もあることに言及した。
フィッチは、長い間にわたり、邦銀ならびに監督当局による資産査定の厳格化の必要性を提唱してきた。また銀行は十分かつ現状に見合った水準の引当金の積み立てを要する一方、たとえば整理回収機構(RCC)に問題債権を移管すること等によって、不良債権をバランスシートから切り離す必要もある。フィッチによる邦銀のサポート格付(その多くが「1」もしくは「2」)に示されるように、日本政府は、システム上重要であるとみなされる銀行に対し、時宜に則した適切な支援を提供するものと思われる。これらのサポート格付は、業績や財務力そのものは極めて乏しい多くの邦銀の債務格付を、投資適格水準に維持する主要な支持要因となっている。サポート格付「1」もしくは「2」は、当該銀行への政府支援の可能性は高いとするフィッチの考えを示すものであるが、こうした銀行のすべてが、あるいはいずれの銀行も、現状の体制のまま存続することを予見するものではない。フィッチの定義する「政府による支援」は、当該銀行の国有化や強制的なリストラ等の形式が採用された場合であっても、預金者および一般債権者の利益は保護されるといった要素を含有するものである。こうした見方は、「トゥー・ビッグ・トゥ・フェイル(大きすぎるために潰すことができない)」といった銀行はないと先日言及した竹中 財政政策・金融担当相の示唆するところではないかと考える。
格付の方向性
政府による銀行政策の見直しへの着手は歓迎すべく動向であり、最近の小泉内閣や日銀による一連の動きは、真の改革が目前に控えているといった楽観的な見方を幾分誘うものである。一方、改革の加速がデフレ環境に及ぼす短期的な影響を緩和するためのマクロ経済政策およびセーフティー・ネットの構築といった各政策と、金融セクター改革の調和も重要となる。
しかし「ハード・ランディング」をともなう改革の試みは、保守寄りの政治家、そして多くの官僚や金融機関等による反発を受けるであろうことを認識する必要がある。加えて、不振セクターの企業や被雇用者は、銀行および金融システムの改革に付随することが予想される実体経済の大幅な変化から受ける打撃に耐えなければならず、従来通りの痛みの軽い処置を引き続き求めるものとみられる。
フィッチが他のレポート中で指摘したように、真の改革に対する抵抗勢力によって、改革が小泉内閣の当初1年半にみられたような緩慢なペースにとどまるものとなれば、銀行や経済全体に及ぶ最終的なコストは、改革が断行された場合よりも一層高いものとなるだろう。銀行問題を解決するためのこうした追加的なコストは、多くの場合、公的支出によって穴埋めされ、財政赤字を悪化させることにつながる。かくして銀行に対する支援の最終的な提供者、すなわち日本政府自身に一層重い負担がのしかかることとなる。緊急的な政策が必要とされる状況下にあって、近年の場当たり的な「切り抜け」対策に終始することになれば、日本の銀行セクターに対する格付の引き下げといった結果がもたらされる可能性もある。
最近における政策の展開
9月18日:日銀は大手邦銀の保有株式を購入する方針を発表した。主要中央銀行としては異例な、日銀による銀行保有株式の購入の発表は、大手邦銀が直面する市場リスクの甚大さが明確に認識されたことを示唆するものである。また日銀は発表の中で、大手行の不良債権問題について見直しを図ることに言及し、銀行の貸倒引当金は依然不十分な水準にあるとした自らの考えを示した。さらに、こうした問題を背景に大手銀行の資本は不足した状況にあるとの見解を掲げた。
9月30日:小泉首相は内閣改造を実施し、銀行の引当金および資本は適切な水準にあるとの主張を繰り返してきた柳澤伯夫 前金融担当大臣を更迭した。一方、新たに金融担当大臣のポストを兼任することとなった竹中平蔵 経済財政・金融担当相は、金融システムは深刻な病を抱えており、公的部門による追加的な資本注入を要する可能性があるとの考えをこれまで述べてきた。金融庁のトップに着任した直後、竹中 経済財政・金融担当相は、金融システムの問題の解決に向けた3つの原則として、(1)厳格な資産査定に基づいた適切な貸倒引当金の水準の確保、(2)十分な自己資本水準の維持、(3)銀行経営の規律の強化等を挙げた。これらの原則が発表されてまもなく、金融システム問題への対応策の立案を担当するプロジェクトチームが結成された。同チームを構成するメンバーはそのほとんどが、過去1年半において実施された対策より一層積極的な対応を従来から提言してきた、周知の改革推進論者である。同チームは10月末までに政策提言を発表する予定である。
10月7日:経済財政諮問会議(議長・首相)は、ペイオフの解禁時期を2005年4月まで2年間延長する旨を決定した。ペイオフ解禁時期の2年間の延長は、とりわけ小規模な預金受入機関の不振経営を助長するといった側面から、モラルハザードに対する深刻な懸念をもたらすものである。しかしフィッチでは、金融セクターの脆弱性やコンフィデンスの喪失といった点を鑑み、一定の猶予期間の設定もやむを得ないとの認識を有している。もっとも、かかる期間内において、弱体化した企業の秩序立った淘汰が図られるべきである。一方、こうした猶予期間が、単に政治的観点から破綻させることの困難な金融機関の援護のために利用される懸念は依然残る。
すでに弱気なセンチメントに覆われた東京株式市場において、竹中氏の金融担当相への着任ならびにプロジェクトチーム結成のニュースは、今後の改革が企業倒産を増加させ、既存の銀行の株主利益が希薄化するとみた市場の懸念を背景に、株価をさらに押し下げることにつながった。TOPIXは9日、バブル後最安値を更新し、今年3月末時点の水準を約20%、同9月末時点の水準を約10%下回る、844.29ポイントで終了した。各行のティア1資本比率は法定の最低水準(国際基準4%、国内基準2%)を引き続き上回るものと思われるが、税効果や公的資金を控除した場合の「純粋な」ティア1資本比率は、すでにほとんどの大手邦銀でマイナスの水準にある点は特筆に値する。
補足)フィッチの銀行個別財務格付およびサポート格付について
フィッチの個別財務格付は、銀行が完全に独立しており、外部支援に一切依存できないと想定した場合の当該銀行に対する評価です。一方、フィッチのサポート格付は、銀行の経営が困難に陥った場合の、株主もしくは政府による支援の見込みについての評価です。これらの格付は債務の履行能力にかかる格付ではなく、前者は銀行の内在的な強さを、後者は銀行に対して提供され得る外部支援をそれぞれ評価するものです。