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日経金融新聞
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低迷している欧州株式市場で相対的に堅調だった銀行株の下げが目立っている。不良債権処理の増加で経営の健全性に対する懸念が高まり、資本不足に対応する増資観測が浮上。「巨額損失」を巡るうわさも絶えない。中でも状況が深刻な独銀については「まるで邦銀のようだ」と懸念する声も上がっている。
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七日、ロンドン市内のホテルで開いた投資家説明会。独コメルツ銀行の投資銀行部門を率いるM・ダルマン氏は「我々だってうわさに反論することはある」と声を荒らげた。
大型スクリーンに映したのは「クレジット・デリバティブによる巨額損失の可能性」を伝える英フィナンシャル・タイムズ紙の五日付一面記事。しかし質疑応答で「投資銀行業務からの撤退は」「増資の必要性は」と投資家はたたみかけた。同行株価は最近一カ月でほぼ半値になっている。
英銀六位のアビー・ナショナルは資本不足が取りざたされて株価が低迷、身売り話に発展している。クレディ・スイスは新規増資を再三否定しているにもかかわらず株価の下落に歯止めがかからずライバルのUBSまでつれ安になっている。
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今年の欧州株式相場の下げ局面を主導してきたのは、株安が保有資産を直撃する保険株。対照的に銀行株は一貫して市場平均を上回って推移してきた。「株式市場が軟調な場合、保険に比べて銀行部門の収益の底堅さが浮き彫りになる」(バンカシュランス大手フォルティスのファンロッサム最高経営責任者)と受け止められた。
ところが今月に入って銀行株は軒並み下げ足を速め、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)指数でみた下落率は三〇%と、市場平均と初めて並んだ。
株安の長期化が実体経済に波及し不良債権処理の拡大が銀行の収益を圧迫するとの懸念に加えて、市場関係者が神経をとがらせているのが、クレジットデリバティブのリスクを引き受けたことによる巨額損失の表面化だ。
米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長は先月末、ロンドンで講演し、エンロンやワールドコムなど一連の大型倒産にもかかわらず「米国の主要金融機関は破たんが一つもなく、十分な健全性が維持されている」と語った。
「米銀はデリバティブを駆使したリスク管理を徹底、外部にリスクを移転するのに成功した」(同議長)のがその理由。ではリスクはどこに移ったのか。メリルリンチの銀行アナリスト、J・ゴラール氏は「魅力的な手数料と引き換えに多くの欧州の金融機関が引き受けた」と指摘する。
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メリルリンチは九月下旬に「ドイツの銀行の邦銀化」と題するリポートをまとめた。不測の損失に備えた自己資本(Tier1)に厚みがない点や株式持ち合いなど、置かれた環境がそっくりだという。
欧州銀最大手、英HSBCのD・フリント最高財務責任者(CFO)は「(欧州金融界の)システミックリスクを心配せざるをえなくなってきた」と語る。ディフェンシブ銘柄と位置付けられてきた欧州銀行株の特性は急速に薄れている。
(ロンドン=佐藤大和)