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平蔵・木村ショックは一巡したのか−。７日の株価大暴落から一夜明けた８日、平均株価は何とか踏みとどまる格好で、プラス圏で終えた。これを受け、市場の一部では早くも「ショック発言は一巡した」（準大手証券）との見方が出始める。だが、ちょっと待った。専門家の多くは「これで底を売ったと思ったら大間違い。これからが本番だ」と警告し、強引な不良債権処理の加速によるハードランディングで大企業の淘汰（とうた）・整理がいよいよ始まると指摘する。
●ショック一巡？
８日の平均株価は下げ警戒感や値ごろ感などが強まり、２０円９０銭高ながら８７０８円９０銭と小反発して引けた。
気がはやる市場の一部からは、竹中平蔵経済財政・金融相（５１）と、金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームの日銀ＯＢ、木村剛氏（４０）に端を発したショック発言余波について、こんな超強気の声さえ漏れ始める。
「ある程度落ちつき、底値も打ったのでは。年内に１万円の回復もありえる」（準大手証券のディーラー）
だが、日本証券経済研究所主任研究員の紺谷典子氏は「プラスで終わってもたった２０円（９０銭）程度。様子見ですよ。上がったといっても」と前置きして、バッサリ切り捨てる。
「その裏では企業の面々が顔を真っ青にしながら、何らかの政策が出てこないか、固唾（かたず）を飲んで見つめていたはず。口が裂けても竹中発言のショックが一巡したとは思わない」
株価１００円、５０円割れ企業の行方…
「売りが売りを呼んで手がつけられる状態じゃなかった」（大手証券の幹部）というように、７日の市場はまさにパニックに陥った。
東証一部上場企業１５０１社のうち、年初来安値が３９９、１００円割れが１６９、５０円を切ったのも５３銘柄に達した。
不良債権処理加速で注目される大手銀行も全面安に見舞われ、４大銀行グループ株は上場以来、最安値という悲惨なありさまだった。
もちろん、「急落後に反動は付き物」（紺谷氏）で、翌８日は値ごろ感から一部の銘柄が値を戻した。
前週末比３０．４％の３８円も下落した借金棒引き組のダイエーは３０円高のストップ高を記録し、１１７円台に復活。ゼネコンではやはり、借金棒引き組の飛島建設が４円安の１８円だったが戻して２２円に。熊谷組も２円高の１６円で終えた。
終値ベースで変動がなかった企業や、逆に悪化したところもある。
新生銀問題で揺れる藤和不動産は３０円のまま。１週間で２７．０％下落し、暴落とともに４６円をつけたいすゞ自動車も現状維持に。商社では５５円の日商岩井が１円下げた。
国際証券チーフ・アナリストの水野和夫氏は今後の株価動向について、「値を戻しても決して楽観できない。産業構造の転換期を迎え、不良債権の処理は避けて通れない。下落傾向は収まらないだろう」と予測する。
激震の発端
竹中平蔵経財相が金融相を兼務してから９日で１０日目を迎えた。
不良債権処理の加速への期待感から、当初こそ市場は好感をもって受け入れたが、就任３日目の記者会見で＜日本経済にとって不良債権問題を解決する大きなチャンスを迎えた＞とブチ上げたのが激震の始まり。
５日の民放番組では＜（企業規模が）大きいからといって放っておくと周りも悪くなる。悪いところは退出してもらうしかない＞と爆弾発言してみせた。
前日の４日には懐刀というか相棒の木村氏が、広島市での講演で＜マイカルや佐藤工業など、これまでに破綻（はたん）した企業は、以前から問題があったのに銀行が隠していただけ＞と銀行を酷評した。
返す刀で＜問題企業が退場せず、債権放棄を受けた企業が安売りするなど競争を激化させ、デフレになりやすい状態を作っている＞と、再建に苦悩するダイエーを半ば名指しして責めた。
過剰債務を抱える問題企業ばかりか、その企業の生殺与奪の権限を握る銀行にもプレシャーをかける。これでは市場が混乱しないわけがない。
紺谷氏は「竹中さんや小泉さんは潰（つぶ）した後にどうなるか考えていない。今までなぜ、さまざまな企業が延命されてきたかというと、破綻したら関連会社などを含め、数万人規模の社員が路頭に迷うから」。
さらに、「でも、いざ潰してみて大量の失業者が出たら、竹中さんや小泉さんは『自分たちがやったからこの程度のダメージで済んだ』と開き直るはず。『痛みなくして改革なし』とか言っているが、自分が痛まないから、実感がわかない」
一方、水野氏は「企業の破綻は避けて通れない」とハードランディング路線に一定の理解を示した上で、締めくくる。
「破綻後の社会と経済に与える影響をどう解決するかが問題。米国がかつて航空自由化に踏み切ったとき、多くの航空会社が潰れ、パイロットやスチュワーデスがマックで働く事態に陥った。受け皿を考えるのは政治家の役目。それができないなら、小泉内閣に退陣してもらうしかない」
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。