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小泉クラッシュの足音がヒタヒタと迫る−。竹中平蔵経済財政・金融担当相のもと、強引な不良債権処理で大企業にも容赦なく整理・淘汰（とうた）の嵐が吹き荒れるのは必至だ。本来はハードランディングによるショック緩和のデフレ対策などが必要なのだが、小泉純一郎首相は相変わらずノー天気で、危機感は全く希薄。このままでは「年末から来年３月にかけ、小泉恐慌が起き、日本は未曽有（みぞう）の暗黒時代を迎える」（外資系の年金運用担当者）との観測が現実味を帯びてくる。
●株価暴落
経済界を取り巻く雰囲気は先週末、一変した。金融担当相の兼務で財政と金融に巨大な権限を持つことになった学者大臣の竹中氏が不良債権処理の加速をブチ上げるなか、４日、処理加速に伴い、経営が不安視される企業群をリストアップした「５１社リスト」の存在が明らかになった。
翌５日には、竹中氏が民放番組の収録のなかで「ダメな企業が退場するのは資本主義の普通のルール。大きいからといって、つぶさないことはない」と発言し、大倒産ラッシュの到来が一気に現実味を帯びてきた。
週明け７日の東京株式市場は、前週末の米国株安も加わり大暴落。東証一部の株式の時価総額も２５０兆円まで目減りし、内閣改造からわずか１週間で約１０兆円も吹き飛んでしまった。
「東証を襲った株安の背景には、小泉改造内閣の政策のアンバランスがある。政府は不良債権処理の加速に伴う企業の整理・淘汰を迫るだけで、その結果起こる失業問題やデフレ加速に対する対策がまったく出てこない。不良債権処理の加速とショックを和らげる経済対策は、車の両輪。ただ単に処理を加速させるだけでは、日本経済はクラッシュしてしまう」（外資系エコノミスト）
●小泉無策
国会内の良識派からは、企業の整理・淘汰によるデフレ圧力に、「１０兆円規模の補正予算が必要」（与党政策担当者）との声も出ている。
さすがの福田康夫官房長官も７日、平成１４年度補正予算編成の可能性を示唆、ほかの閣僚からも補正コールが巻き起こったが、当の小泉首相は「今の時点で（補正は）考えていない」と相変わらずのノー天気と経済オンチぶりを露呈した。
国の財布を握る塩川正十郎財務相は６日、取り繕うように、２兆５０００億円の減税、１兆円の増税で差し引き実質１兆５０００億円の先行減税のうち、４割にあたる１兆円を個人向けにしたい−との考えを表明している。
具体的には、証券税制の見直しや土地の課税軽減など、資産デフレの改善を意識したものにする見込みだが、これも「取ってつけたようなもの」（外資系エコノミスト）と散々の評価である。
「塩川さんが減税策で何を発言しようと、多年度での税収中立が大前提となっている限り、プラス評価は受けない。先行減税分はいずれ増税で相殺される。不良債権処理の加速で、企業倒産と失業者の急増で日本経済が底割れしてしまう危険性をはらんでいるのに、国の“財布”のヒモを緩めようとしない小泉首相や塩ジイの姿勢は、まさに自殺行為」（野党政策担当者）というわけだ。
●金融大丈夫？
竹中氏と金融庁不良債権処理プロジェクトチームの日銀ＯＢ、木村剛氏のコンビに対し、早くも不安視する声が多い。日銀関係者が解説する。
「不良債権処理急進派で知られる木村氏は実は、竹中氏を心底信頼しているわけではなさそうなんだ。木村氏は一貫して処理の本格加速を主張し続け、考え方にブレがない。竹中氏のほうは、そのときの情勢でスタンスが微妙にブレる。木村氏にすれば、途中でハシゴを外されるのではないか−との不安が拭（ぬぐ）い切れないようだ」
竹中氏と金融庁の関係も微妙な感じで、「不良債権処理の加速に伴い、銀行の貸出債権の査定を厳格化する場合、本来なら金融庁の検査部門がメーンになるのに、竹中氏は日銀考査局の活用を考えているフシがある」（日銀関係者）という。
●とるべき道
日銀ＯＢの大塚耕平参院議員（民主）は、不良債権処理加速に伴う公的資金注入について、「単に不良債権処理を進めた結果、銀行が資本不足に陥ったから公的資金を注入するというのではダメだ」と指摘する。
「銀行から企業へと、注入された公的資金が流れていくようになって初めて、注入の意味が出てくる。単に不良債権処理を加速させて公的資金を注入するだけでは、金融機関の救済にすぎず、金融システム不安は根本的に解消されない」
第一生命経済研究所の川崎真一郎主任研究員は「日本経済は地価や株価下落で資産デフレに陥った結果、２０兆円ほどの需要不足を抱えてしまった。企業や家計が縮み志向にあるなか、小泉政権は需要喚起のため金融、財政、税制を総動員すべきだ」と訴える。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。