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エコノミスト11月5号 いよいよ始まる銀行「大手術」
「竹中ショック」に過剰債務を抱えた「問題企業」が揺れている。金融支援を受ける代わりに決めた再建計画の見直しも迫られている。UFJ銀行メーン3社を追った。
本誌金融取材班
「ダイエーは再建できると確信している」
10月17日夕、日本政策投資銀行の小村武総裁(旧大蔵省元事務次官)はこう語り、経営再建中の大手スーパー、ダイエーを支援する再建ファンド(総額600億円、詳細は別稿)への出資を正式に発表した。政府系金融機関である日本政策投資銀行が、一私企業の再建を後押しする異例の事態となった。
主力3行(UFJ銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行)の要請を受け3カ月間の調査の結果、「戦略的投資のためのニューマネー」(小村総裁)として100億円を日本政策投資銀行が同ファンドに出資する。
「なぜ、ダイエーだけに国を挙げて支援するのか」――この素朴な疑問に対してダイエーの幹部は苦笑するだけで、明確な回答はない。
今年2月に主力行から総額5200億円の金融支援を取りつけ、新たな3カ年計画に入ったばかりのダイエーがわずか8カ月余りで急激な信用不安に追い込まれ、国家による前代未聞の「信用補完」が行われた背景には、竹中平蔵経済財政・金融相が加速させようとしている不良債権処理問題があることは改めて述べるまでもない。
「大きすぎて潰せないということはない」
竹中氏のこの発言に過剰債務を抱え経営再建中の企業は翻弄されている。
ダイエー 国から”援護射撃”を受け
「完全に昨年の10月ごろの段階に戻ってしまった」
竹中金融相誕生から1週間後の10月7日、ダイエーの取引業者からはため息混じりにこんな言葉が漏れた。昨年10月とは、その前月のマイカル破綻後に起きたようなダイエーに対する急激な信用収縮を意味する。「ハードランディングへ突入」と受け止めた株式市場が、ダイエーに襲いかかった。その7日、ダイエー株は100円を割り込み、87円まで売られた。
まず、それに経済産業省が”援護射撃”する。10月8日、平沼赳夫経済産業相が「ダイエーの再建は順調」と異例のコメント。それに続く、ダイエー企業再建ファンドの設立である。これまでの金融支援と合わせ、「官民挙げての支援」と誰の目にも映る。株価は一転、急騰する。ファンド設立発表の翌10月18日、ダイエーの8月中間期決算が連結、単体ともに経常増益となったことが報じられると、165円まで上昇した。
これで安泰なのか。本業は確かに増益を確保したものの、目標としていた単体経常利益110億円にはとどかず、91億円にとどまった。売り上げが前年比74・3%に低迷した家電部門が足を引っ張ったと高木邦夫社長は強調するが、それだけではない。高木社長が本業回復に向けて投入したカテゴリーバリューセンター(CVC)が思うように効果を上げていないのだ。「通年、3年で評価してほしい」と高木社長は繰り返す。しかし、前年もダイエーは業績の下方修正を行い、本業の目標を達成していない。「やりますと口だけではないか」――取引業者の不信は募る。
「意味のある出方をしたかった」(小村総裁)という日本政策投資銀行の再建ファンド出資にも、「信用補完以外の何の意味があるのか」(アナリスト)と、疑問の声が上がっている。日本政策投資銀行が新たに出資する100億円は、「顧客の支持が得られるよう、店舗改造や商品開発に充てる」(高木社長)というだけで、具体的な投資プランがあっての出資ではない。「これでは国が提供する”見せ金”」(市場関係者)との声も聞かれる。
ミサワホーム 減損処理を前倒し
「2006年3月期までの4カ年での処理を考えていたが、1年前倒しして実施したい」
三澤千代治・ミサワホーム社長は、懸案のゴルフ場の減損処理についてこう明言する。当初計画では、減損処理ルール確定を見守りながら、05年度中の処理を想定していたが、04年度までに不良債権処理を終了させるという政府方針、その実行政策策定部隊の竹中チームに背中を押され、ミサワホームでも現在の再建計画を事実上見直すことになった。
ミサワホームは02年3月期に、保有不動産や株式の評価減など1220億円の不良債権処理を実施、上場以来初めて連結最終損益が186億円の赤字となった。そのため、メーンバンクのUFJ銀行からは700億円の金融支援を受け、「不良債権処理は前期(01年度)で済んでいる」(三澤社長)という認識だった。ところが、「竹中ショック」で、ダイエーと同じように株式市場がミサワホーム株を売り浴びせた。一時は100円を割り込む場面もあった。
ミサワホームの再建計画は、最終年度が06年3月期で、それまでに有利子負債を01年度末の5582億円から2700億円に削減するもの。しかし、これでは、政府方針よりも1年先の話で、市場関係者らは「損失処理の前倒しは必至でそれに伴う損失が発生する」とみたのだ。
株価急落について三澤社長は「(前期)赤字決算だったから仕方がない」としながらも、前倒し処理に関しては「(再建計画の)見直しではない。メーンバンクとも話し合っているが、新たな金融支援が必要になることはない」と説明するのだが……。
藤和不動産 発表できない新再建計画
03年4月から新たに取り組む再建計画を目下策定中の藤和不動産も「竹中ショック」に大きく振りまわされている。
藤和不動産は、1999年3月期にメーンバンクの東海銀行(現UFJ銀行)や大株主のフジタなどから総額3000億円の金融支援を受けている。その際に作成した再建計画では、03年3月期までに有利子負債を3200億円にまで圧縮することになっていたが、前期末の有利子負債はまだ5212億円ある。03年3月期の目標達成には、藤和不動産自体が白旗を揚げている。計画未達に加えて、「2度目の金融支援はあるのか」――UFJ銀行の対応に関係者の注目度はもともと高かった。
9月中旬には「UFJ銀行などが金融支援を実施する方向で最終調整に入った」といった報道が一部でなされたが、1カ月以上たった今なお、「発表する段階ではない」(藤和不動産広報)という。同じくUFJ銀行をメーンバンクとし、金融支援を受けながら再建に取り組んでいる大京が藤和不動産と「大掛かりな提携を模索している」(業界関係者)という噂も流れ始めるほどだ(大京側は否定している)。
ダイエー企業再建ファンドとは
主力3行と日本政策投資銀行の4行によるダイエー再建ファンド(基金)は、ダイエーの3カ年計画に沿って8月に主力3行が実施したデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化、ダイエー向けの融資債権をダイエー株式と交換)によって得た普通株(100億円)と優先株(400億円)の合計500億円を再建ファンドに出資したうえ、日本政策投資銀行が100億円をニューマネーとして出資するという内容。
再建ファンドのダイエーに対する出資比率は約30%になる模様だ。日本政策投資銀行が行う100億円の出資は、ダイエーの戦略投資の財源とし、ダイエーが具体的なプランを出してそのつど、日本政策投資銀行が審査し、それに必要な金額分の増資を引き受ける。
また、再建ファンドは再建計画の進捗状況をチェック、確認する役割を担う。第三者としての独立した視点を確保するために、私的整理ガイドラインをとりまとめた高木新二郎・獨協大学教授がアドバイザーに就く。
主力3行から要請を受けた日本政策投資銀行は、会計監査以外に約3カ月間かけて、ダイエー店舗を実際にまわり、調査。「ダイエーには十分再建の可能性がある」と判断し、ファンド設立に同意したという。
http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/economist/0211/05-1.html