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衆参統一補選での与党圧勝で、経済政策が大混迷−。政府は30日にも、竹中平蔵金融・経済財政担当相が検討する不良債権処理加速策と総合デフレ対策を発表する。だが、補選圧勝で勢いづく与党3党は、超ハードランディングの竹中案の全面修正を求め、孤立無援の小泉純一郎首相も自信を深めて竹中案で突っ走る構えをみせ、双方の対立激化は必至。竹中氏は28日午前、大逆襲に転じる大手銀行首脳と3回目の会談を行ったが、物別れで決裂し、経済政策の公表が間に合わないとの見方も浮上。竹中案が空中分解する可能性が高まってきた。
「小泉・竹中コンビVS与党・大手銀行連合」の最大の対立点は、不良債権処理加速策に盛り込まれた銀行の「自己資本の見直し」である。
28日午前に行われた竹中氏と大手首脳との第3ラウンド。関係筋によると、「竹中氏から具体的な説明は何もなし。大手銀サイドも『見直しは認められない』との従来の主張を展開しただけで、平行線のまま物別れに終わった」という。
竹中氏は与党サイドとも最終調整に入ったが、依然、両者の隔たりは大きく残ったままで、落とし所はまったく見えてこないのが実情である。
むしろ、7補選での与党圧勝により、与党と首相サイドの対立は一段と激化している。両者が補選の『手柄争い』を繰り広げているためだ。
「そんなことを考えている人間は誰もいない」。圧勝確定の直後、自民党の麻生太郎政調会長は、首相の経済政策が信任されたのかとの問いに、こう吐き捨てた。
低い投票率の中での公明党の組織票が勝因となり、与党サイドは補選圧勝を選挙協力の成果と分析。「勝ったからといって(首相の)政策が正しいとは限らない。調子に乗らない方がいい」(二階俊博・保守党幹事長)と、首相サイドを激しくけん制する。
APEC(アジア太平洋経済協力会議)でメキシコ訪問中の小泉首相は28日午前の現地での会見で、「竹中金融相の基本方針に沿って与党と調整する。政府、与党が一体となって規定の改革路線を確固たるものにしたい」と、改めて竹中案を支持する姿勢を誇示してみせた。
首相サイドは、補選圧勝を「(有権者が)構造改革を中心とする小泉改革を承認し、賛意を示した」(福田康夫官房長官)と位置づけ、竹中案で正面突破する構えを崩していない。
最大争点の「自己資本の見直し」とは、将来戻ってくることが見込まれる税金(繰り延べ税金資産)の自己資本への繰り入れ率を、現在の「自己資本の実質40%」から「10%」に引き下げるというもの。
実施されると、自己資本が大きく目減りし、大手銀行でも軒並み、健全性の目安である自己資本比率8%を割り込むことになる。
竹中案は目減りした自己資本を半ば強制的な公的資金の再注入によって補い、銀行の経営陣を交代させ、大手銀を国有化する…。これで不良債権処理を一気に加速させようというシナリオだ。
これに対し、与党や大手銀行は「自己資本比率低下を防ぐには、貸出などの総資産を圧縮せざるを得ない。『貸し渋り』や『貸し剥(は)がし』が激化する」(大手都銀幹部)、「国有化による不良債権処理で、過剰債務を抱えた問題大企業の倒産が急増する」(与党幹部)と猛反発している。
このため、竹中氏は見直しの実施時期を、原案に明記した「平成16年3月期」から「17年3月期」に先送りする妥協・修正案で決着させたい意向だ。
しかし、28日の会談で大手銀サイドはあくまで全面撤回を要求。与党サイドも「延期すれば、かえって実施までの間の貸し渋り、貸し剥がしを助長する」(幹部)と強硬で、歩み寄りの余地は見えてこない。
与党と首相のもう一つの対立点が、デフレ対策。与党サイドは、不良債権の処理加速に伴うデフレ圧力を緩和するため、減税や公共事業の追加による需要喚起型の対策が必要と主張。大規模な補正予算編成を求める。
首相サイドは、財政構造改革路線に固守。雇用対策や中小企業対策などセーフティーネット(安全網)の整備に重点を起き、需要喚起型の対策は採らない方針だ。
しかも、現在の臨時国会での補正編成を拒否しており、「需要の喚起がないまま、不良債権の処理加速だけがドラスティックに先行することにより、景気の底割れリスクが高まっている」(民間エコノミスト)との指摘も出ている。
ただ、「今臨時国会での補正編成はもはや時間的に不可能」(財務省筋)。焦点は来年1月の通常国会の冒頭で提出予定の補正の規模となる。
一部には、「不良債権の処理加速策では、竹中案の一部修正で与党が妥協する。その一方で、首相が通常国会での大規模補正を約束することで両者が歩み寄る」(永田町筋)との見方もある。
ただ、首相がメキシコから帰国するのは経済政策発表直前の29日。調整の時間はほとんど残されていない。「とても間に合わない」(金融当局者)と、悲観的な見方が広がっている。
政府・与党が当事者能力を失い、経済政策が後手後手に回ることで、不況が一段と加速するのは必至。両者の対立で一番の犠牲になるのはいうまでもなく国民である。