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避けられない大幅合理化
ドイツの大手金融機関が株安に揺れている。コメルツ銀行の株価が急落したのをはじめ、保険最大手のアリアンツも傘下銀行の不振で大きく売られた。倒産の増加に伴って貸倒引当金の積み増しを迫られているうえ、株安による保有株の評価損も発生しており、合理化による収益回復という再生シナリオは頓挫しつつある。
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「健全性に何ら問題はない。当社は悪意に満ちた中傷と投機の対象になっているだけだ」――。コメルツ銀行のクラウスペーター・ミュラー頭取は、自社株の急落による行内の動揺を鎮めるのに躍起だ。
今年前半は二十ユーロ前後で安定していた同社株。夏以降、株価はつるべ落としとなり、今月八日には五・〇二ユーロと安値を付けた。その後も株価は低迷している。
背景には根強い経営不安説がある。「資金繰りが危ないのではないか」「クレジットデリバティブ取引で巨額の損失発生の可能性がある」。そんなうわさが間断なく流れ、株価を押し下げてきた。八日に格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が同行の長期債格付けをシングルAからシングルAマイナスに格下げしたことも響いている。
二〇〇一年下半期は最終損益が二億ユーロの赤字となったものの、二〇〇二年上半期は七千万ユーロ余りの黒字。十年来、年間決算で赤字に陥ったことはない。二〇〇二年通期も黒字が確実視されている。表面的には業績は底堅い。
だが、下期にはモーゲージ金融部門の切り離しで七億ユーロの一時的な利益が含まれているうえ、保有株に発生しているとされる二十億ユーロ近い含み損の処理が残っている。同行の決算への不信感は根強い。
四―六月期に費用計上した不良債権の引当金の額も一例。銀行二位のヒポ・フェラインス銀行(HVB)が七億七千七百万ユーロ、四位でアリアンツ傘下のドレスナー銀行も七億二千九百万ユーロだった。一方コメルツは三億八百万ユーロ。「コメルツだけが少ないのは十分な損失処理を行っていないから」(米系証券アナリスト)という指摘もある。ミュラー頭取は「銀行にとって不良債権は問題ではない」と打ち消しに躍起だが、市場の評価は厳しい。
コメルツは人員の約一割にあたる三千四百人の削減など大幅なコスト削減を掲げている。その一方で、グローバル化路線を事実上断念、中核市場と位置づけた独、仏、スペインへの絞り込みを進めている。
中でもドイツ経済の底堅さの象徴ともいえる中小・中堅企業との取引を収益源にする戦略を進めてきた。ライバルのドイツ銀行が投資銀行業務や富裕層相手のプライベートバンキングに力を入れ、中小・中堅企業向け融資に熱心でないこともチャンスにみえた。
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ところがドイツ景気の後退で、頼みの中小・中堅企業の収益が悪化している。倒産も増えており、金利引き下げなどで支援すれば、収益を圧迫する。
先月二十六日、ドレスナー銀行は従業員約三千人の上乗せ削減を柱とする追加合理化策を発表した。これまでの合理化と合わせて、昨年からの削減数は八千人にのぼる。早期の営業黒字化に七億ユーロ(約八百四十億円)の経費削減が必要になったからだ。
二〇〇一年にアリアンツの傘下入りした後、ドレスナーは批判を浴びながらも大幅な人員削減を進めてきた。そのドレスナーが追加策を発表したことで、逆にコメルツの合理化が不十分なのではないか、との観測も出ている。
業務のドイツ国内回帰と、合理化による収支均衡――。縮小均衡路線はコメルツだけでなく、HVBやドレスナーにも共通する。大幅な株安によって「均衡点」の低下は避けられなくなっている。