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果たせなければ…同族経営の危機も
・純負債額を半減
・負債総額も削減
・社債格付け維持
　【ミラノ＝小林明】伊大手銀行を中心にした銀行団が先月末、経営危機に陥っているイタリア最大の民間企業フィアット・グループに対する三十億ユーロ（約三千四百五十億円）の緊急融資を決めた。当座をしのぐ運転資金を得たことでフィアットは一息ついた格好だが、銀行団はその見返りとして「三つの宿題」を突き付けており、フィアット問題は引き続き伊経済界を揺るがすことになりそうだ。
　宿題とは（１）六十六億二百万ユーロ（三月末時点）の純負債額を来年三月末までに三十億ユーロに半減する（２）三百五十億ユーロにのぼるとみられる負債総額（販売金融事業などを含む）を来年三月末までに二百三十六億ユーロに削減する（３）社債格付けが「投資不適格」に下がらないよう維持する――の三つ。
　このうち一つでも守られなければ、銀行団はフィアットから時価で株式を取得する。三年後の返済や利子支払いができなくなった場合も同様。もしそうなれば、創業者の孫、ジョバンニ・アニェリ名誉会長が率いる同族企業フィアットに対する銀行団の影響力は一気に強まる。
　もっともフィアット経営陣は強気だ。パオロ・フレスコ会長は、赤字決算が続く主力の自動車部門について「二〇〇三年度に損益トントン、翌年度に黒字転換を目指す」と強調。緊急融資をテコに出遅れた新車開発や販売網の強化などに投資する方針だ。
　だが、世界的な自動車市場の低迷で価格競争は一段と激化しており、アナリストの間では「あまりに楽観的」と受け止める向きが多い。業績改善が困難なら、グループが抱える傘下企業を切り売りするしかない。
　今回、三十億ユーロを融資するのはインテーザＢＣＩ、カピタリア（旧ローマ銀行）、ウニクレディト・イタリアーノ、サンパオロＩＭＩ、ＢＮＬ、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの伊銀六行と、オランダ大手金融ＡＢＮアムロ、仏銀ＢＮＰパリバの合計八行。
　さらに伊金融界の総本山として君臨した投資銀行メディオバンカもフィアット傘下の高級スポーツ車メーカー、フェラーリの株式三四％を買収するなど、じわじわと影響力を強めている。
　政府が自動車買い替えの免税措置を決めるなど需要拡大に向けた追い風がないわけはない。だが今後、業績が思うように好転しなければ、売上高がイタリアの国内総生産（ＧＤＰ）の五％弱を占める巨大企業フィアットが、金融機関やライバル社などに浸食される可能性が強まっている。

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