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融資圧縮の加速必至
竹中平蔵経済財政・金融担当相が中間的に取りまとめた金融・産業の一体再生策が明らかになった。与党、金融界から猛反発が出たほど大胆な策だが、税効果会計の厳格化の時期など少なくとも三つの懸念される点が残っている。三十日に発表が見込まれる最終策に向けて、原点に立ち返り、より効果的で研ぎ澄まされた策に仕上げるべき時が来ている。(関連記事3面に)
竹中氏がA4判十枚に詳細に書き込んだ中間とりまとめ案。公表が予定されていた二十二日に急きょ手書きで修正された個所がある。「二〇〇三年三月期」と書かれた税効果会計の厳格化の時期が、「二〇〇四年三月期」に書き換えられ、一年先延ばしになった。
風圧に負ける
与党・金融界の「突然のルール変更はおかしい」との大合唱に竹中氏自身がたじろぎ、「一年猶予」に妥協した。
だが、銀行側の主張にはやや無理な面もある。株価の下落による含み損の計上を猶予する原価法への回帰など銀行は九〇年代にしばしば、会計ルールの変更という国策に救われてきた。竹中氏にすれば、いまは税効果会計を厳格に適用し、公的資金注入に道筋をつける方が、国益にかなった策との判断だろう。
問題は、風圧に負けて一年猶予することで生まれる強烈な副作用だ。公的資金注入を回避しようと「経営陣は猛烈な貸し出し圧縮に走る」(銀行関係者)のは間違いない。
外資系証券はすでにクレジットデリバティブを使って実際に貸し出しを回収しなくとも貸し出しの一部をオフバランス化できる案の売り込みに動いているが、デリバティブの手数料は巨額になり、銀行の収益力が落ち込むのは避けられない。厳格化の時期を来期からに一年先送りするくらいなら、今回盛り込まれた税効果会計の厳格化はやめた方がいい。
九九年三月期に導入された税効果会計は、もともとは不良債権処理加速のための措置。無税処理をできるだけ認めたくない大蔵省(現財務省)主税局と実質的に無税処理の範囲を広げたい銀行の妥協で成立した。
もし、単に税効果会計の厳格化だけを進めるなら、不良債権処理にブレーキをかけかねない。実際、無税処理ができないばかりに九〇年代前半は銀行が不良債権処理を先送りしてきた歴史がある。無税償却の範囲を全不良債権に広げるなどの見直し策は不可欠だ。
各省に覚悟なし
二番目の問題点は、「過剰債務企業の整理・再生への指針」作りだ。経済産業省、国土交通省はいまだに正面から向き合うだけの覚悟ができていない。金融再生は産業再生も一体でなければ無理だが、政府内の調整は進んでいない。
三番目の不安は、さりげなくプランに盛り込まれた「公的資金注入行の中小企業向け貸し出し増加を義務づける規制の継続」にある。これは、国民生活金融公庫など公的金融が手がけるべき問題だ。収益力向上へ創造的な経営革新が必要な時期に、経営の根幹である「貸出量」を規制するという悪弊が続くことにならないだろうか。
竹中氏は金融の外科手術に踏み込んだ。だが、成功を確実にするには、改善すべき点もまだ多い。
(O)
▼税効果会計の厳格化 銀行は有税で不良債権を処理してきているが、将来の税金還付を見込んで自己資本を積み増すことができるのが税効果会計。現行ルールでは向こう五年間の所得見込みに実効税率(約四割)をかけた金額までしか算入できない制限が設けられている。
ただ、現状では大手銀の自己資本の約半分が税効果会計による資本で、「かさ上げ」との指摘が多かった。竹中案では、「二〇〇四年三月期から銀行の中核的な自己資本の一割までしか算入できない」というより厳格な制限を導入する。実施されると大手行の自己資本比率も大半が規制で必要な最低水準を下回る見通し。