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低価格家電メーカー、アイワの森本昌義社長が、全従業員の9割におよぶ人員削減策について声をつまらせたのは、6月の株主総会だった。
2年にわたる人員削減策は、3期連続で赤字を計上していたアイワを黒字回復させるために、森本氏自身がとった最後手段だった。「大変だった。しかし、ここ最近のアメリカの小売店動向を考えると、正しい決断だったと思う」。同氏は当時の株主総会を振り返り、こう述べた。
これで終わりではない。家電メーカー大手のソニーが、アイワを10月1日付で完全子会社化する決定を明らかにしたのは2月。アイワ吸収までの第一歩を踏み出したことになる。投資家たちは、ソニーが台湾製や韓国製の家電との競争に注力していることを考慮すると、アイワのブランドが消滅する可能性もあるとみている。
富士投信投資顧問の岩本誠一郎ファンドマネジャーは、「アイワを静かにフェードアウトさせるには有効なやり方だ。ソニーが進めているのは高付加価値商品の展開であり、アイワはこの路線にそぐわなかった」と指摘する。
アイワは愛興電気産業として1951年6月に創立され、1959年に社名変更。その10 年後の1969年にソニーと資本・技術提携した。アイワは「日本初のカセットテープレコーダーの開発者」を自称する。同社サイトによれば、ほかにも「初」がある。世界初のデジタルオーディオテープを1987年に開発。2000年6月にMP3対応ポータブルレコーダーを初めて発売――となっている。
ブームの時
バブル後の1990年代、アイワはほとんどが東南アジアで組み立てられた低価格ステレオを販売。これが利益を押し上げる。景気拡大の一方で、日本の消費者は低価格かつ高品質の家電を求め、同社の家電が人気を博した。
だが、他社がDVD(デジタル多用途ディスク)プレーヤーやポータブルミュージックプレーヤーなどへの移行を図るなか、アイワはそのスピードに追いつくことができない。韓国のサムスン電子やLG電子の値下げ攻勢に太刀打ちできないまま業績は赤字に転落した。
先週アイワの欧米事業の視察から帰国した森本氏は次のように語った。「アイワはすべてにおいて中途半端だった。ソニーほどのブランド力があるわけでもないし、価格競争力の面でもそうだった」
昨年度、アイワの売上高は33%減の1963億円に落ち込む。赤字は前年度の390億円から466億円に拡大した。
アイワが抱える問題はソニーの業績も蝕んだ。アイワのリストラの影響で、今年度ソニーは300億円のリストラ損失を計上する予定。そのうちの9割は上期に計上する公算が高い。
ソニー株は今年度上期で24%下落している。同じ時期の日経平均株価の下落率は 15%。松下電器産業の株価下落率は20%だった。
存続のために
ソニーは昨年4月と今年9月にアイワの第三者割当増資を引き受け、同社の存続のために700億円以上を費やしている。ソニーは1日、約250万株の新規株式を発行し、同社以外のアイワ株主が保有する約5100万株を対象に株式交換を行う。交換比率はアイワ株1株に対しソニー株0.049株。
ソニーはまずアイワを株式交換で安全子会社化してから、12月に吸収合併する計画。両社はこれにより、経営判断の迅速化が図れるとしている。市場は、両社とは別の見方をしている。アイワ株は1998年に付けた最高値5530円から、9月24日の取引最終日には258円に落ち込んだ。
朝日ライフアセットマネジメントで資産運用にかかわる佐久間真シニアファンドマネジャーは、「アイワのブランドをも吸収する第一歩だ。アイワはソニーと同じものを作っているわけではないが、同じ業界だ。であれば、ソニーのブランドの方がどこでも通用する」と指摘する。
ソニーとアイワの幹部は、両社はアイワの業績改善策は順調だったとし、この方針はソニーグループ全体でも導入できるだろうと述べている。アイワは今年2月以降、リストラ策を推し進め、現在経営コストは3分の1に圧縮されている。
森本社長は、アイワの国内工場の全部と、海外工場のほとんどを閉鎖するという、さらに思い切った策もとっている。同社に残る従業員は10月現在約500人強。そのほとんどはソニーとの協業で新製品の開発と製造に携わる。
森本社長は「(アイワは)デジタル化の波に乗り遅れたということだ。デジタル製品に明るい人材を育成するには、何年も時間がかかるものだが、アイワにはそういった人材がほとんどいなかった」と語った。