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内閣改造で最大の焦点だった金融担当相の柳沢伯夫氏を更迭し、竹中平蔵経済財政担当相が兼務する人事の波紋が広がる。「銀行業界の代弁者と化した柳沢氏がいなくなり、公的資金再注入や不良債権処理が加速する」と評価する一方、「金融のシロウトで政治力も皆無」と学者大臣の手腕に不安の声も。それどころか、竹中氏は「構造改革」の名の下に景気や雇用を悪化させた張本人。失政の責任を問われるべき人物が日本経済の命運を握り、景気悪化が一段と深刻化しかねない。
◆金融の素人
「竹中氏の専門はマクロ経済で、金融の個別案件に対する理解は深くないはず。学者による非現実的な政策が打ち出されることになるのではないか」。竹中金融相に外資系証券幹部からは、早くも不安の声が上がる。
「銀行は健全で、今は金融危機ではない」と言い続け、市場の不信を買ってきた柳沢氏と、「公的資金の注入や銀行の国有化も視野に入れるべき」と主張する竹中氏。
小泉純一郎首相は結局、留任説も浮上していた柳沢氏を切り捨てた。
独立総合研究所の青山繁晴氏は、内閣改造全体については評価を示したうえで、「竹中氏の金融相起用は明らかな金融政策の転換。公的資金の再注入を宣言したことと同じ。政権の命運を握るという意味で、ある意味“竹中内閣”になったともいえる」と指摘する。
事前に出演したテレビ番組で「竹中金融相」を予測した第一生命経済研究所主任研究員の熊野英生氏。「誰を起用すればマーケットが不安に思わないかを考え、言動の良く知られた人を配置したのでは」と分析する。
これまでは評論で済んだ金融問題。今度は当事者として金融システムを安定させる重責を背負う竹中氏だが、専門でない金融行政を経財相との兼務でどこまでできるのか。疑念はぬぐえない。
経済財政諮問会議などの場でも、竹中氏の学者大臣ゆえの政治力のなさは批判の的だったが、今度は、海千山千の財務省・金融庁の役人や銀行経営者が相手となる。
青山氏は「旧大蔵族である小泉首相にも頼れない。竹中氏は、塩川財務相に頭を下げて全面協力を求めるしかないのではないか」と提言する。
◆含み損3兆5000億円
株価が低迷した9月末の平均株価は9383円29銭と、3月末の1万1024円94銭から大幅下落。大和総研の推計では、30日終値時点での大手12行の含み損は合計で3兆5447億円と、3月末から2兆円以上拡大した。
各行が多額の株式評価損を計上するなど9月中間決算への影響をモロにかぶり、三菱東京フィナンシャル・グループは1000億円規模の最終赤字となる見通しで、他行も無配は避けられない。
さらに含み損の6割を自己資本から差し引く時価会計の導入で資本も目減りし、大手行の自己資本比率は経営健全性の目安である10%を下回ったとの指摘もある。
閉塞(へいそく)状況を打破しようと、日銀は銀行の保有株を購入する「奇策」を打ち出したのだが、規模が小さく、実効性も疑問視されており、打開策は見いだされていない。
◆株価クラッシュ
閣僚名簿発表直後の記者会見では「私なりに再検討し、なすべきことをなす」と述べるにとどまった竹中氏だが、いまや国際公約となった不良債権処理や金融システム安定のため、銀行に公的資金を再注入するのは確実となった。
問題なのはその手法だ。「実際には政策の選択余地は少ない」と指摘するのは、UBSウォーバーグ証券チーフエコノミストの白川浩道氏だ。
「政府自身が良い銀行と悪い銀行を選別し、過剰債務企業を淘汰(とうた)させるために資本注入するという手法を取ることはまずありえない。かといって、法改正して予防的に資本注入するのも時間がかかる」
「結局、株価下落などで銀行経営が火の車になり、現状が危機であると認定して資本注入するという現行のスキームと同じことになる」
だが、危機を認定した場合も、「市場ではどの銀行が潰(つぶ)れるのか、と疑心暗鬼になり、銀行株が売られる。次はどの大企業が潰れるのか、とパニック的な売りが出て、株式市場がクラッシュする恐れもある。政権の命取りにもなりかねない」と極めて副作用が大きいというのだ。
一方、前出の青山氏は「国有化を含め、悪い銀行は整理する必要がある。その際はトップの更迭や解任は当然で、逮捕者を出すぐらい厳しく責任を問うべき」とする。
だが、「公的資金の入れ方を間違えれば、構造改革自体が失敗に終わる」との懸念を示す。
株価下落や景気悪化で銀行経営は厳しい。「ペイオフ(預金カット)のトリガーを引くのが新しい大臣の仕事になるのは間違いない」という危機的状況で起用された竹中氏について、「失敗しても竹中氏のクビを切ればいいだけで、小泉首相も自民党も傷つかない」(エコノミスト)。
トカゲのしっぽ切りで利用されるのではと、同情の声も出るほどだ。
◆デフレ加速
竹中氏が金融相に就任しても、「今までと変わらないか、悪くなるかしかない」と白川氏は悲観的である。
たとえ不良債権処理が進んでも、景気がすぐに回復するわけではない。むしろ倒産や失業の増大など、決定的に有効な処方箋(せん)も示せないまま、デフレを促進する作用があるためだ。
不良債権処理を進める際には需要を創出したり、雇用の受け皿作りなど景気浮揚策が必要不可欠。
それらの対策は経済財政諮問会議で協議されるべき問題だが、政権発足から1年半たっても、「メニューが並ぶだけで料理が出てこない」と酷評される。責任者はいうまでもなく竹中氏だ。
「構造改革なくして景気回復なし」を訴える小泉内閣だが、その実態は「構造改革もなく景気回復もなし」だった。
東京株式市場の平均株価は、昨年4月の小泉内閣発足直後に1万4529円をつけたが、今年9月には一時、9000円を割れ。昨年4月末から時価総額にして約120兆円が失われた。
地価も下げ止まらない。13年4月に4.8%だった失業率は、直近の今年8月で5.4%。倒産も高止まりし、ボーナスは減額と、先行き不安は増すばかりだ。
ハーバード大准客員教授の経歴を持つ竹中氏が、米国流の弱肉強食型の社会を目指し、不良債権処理を進めて弱い企業を次々と倒産させても、景気が良くならない限り、得をするのは米国のハゲタカファンドだけ。
しわ寄せは、給与カットやリストラ、失業にあえぐサラリーマンや中小企業の経営者に集まることに他ならない。