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AAAやAAなどの記号で表される社債格付けについて知らない人は少ないと思いますが、格付けを投資する際の判断基準として有効に活用するための注意点はご存知ですか?
R&I(格付投資情報センター)によると、格付けとは「債券などの元本、利息が約定通りに支払われる確実性の程度を、一定の符号によって段階的に表示したもの」です。財務省から「指定格付機関」と認定されている格付会社の4社うち、日本国内の企業等が発行する債券のカバレッジが広いのはR&IとMoody’sの2社です。社債の償還確実性が最も高い社債にはAAAの格付けが付与され、続く、AA、A、BBB(Moody’sの場合、Aaa、Aa、A、Baaという表記)までが投資適格であることを表している、と言われています。それ以下の格付けが付与された社債は投機的と呼ばれることが多いようです。
格付けが表している「社債の償還確実性」は、逆に言えば「債券のデフォルト(債務不履行)確率」となります。つまり、格付けが低いほど社債のデフォルトが起きる確率が高い、という意味をもつわけです。事実、過去の統計では格付けが低いほどデフォルトが多い傾向があるようです。
投資家は、格付けをデフォルトのシグナルとみなして投資判断に役立てているわけですが、それらを活用する際には気をつけなければならないことがいくつかあります。
1つめは、投資期間を考慮する必要があることです。
今後1年間に社債がデフォルトを起こす確率より、今後2年間にデフォルトを起こす確率の方が高いことは当然予想されます。しかし、例えば、一つの企業が残存期間の異なる複数の社債を発行する場合、償還の優先順位等の条件が無差別である限り、それらはすべて同じ格付けを付与された社債になることが多いようです。従って、残存期間が異なるために真のデフォルト確率が異なるはずの複数の社債に対して同じ格付けが付与されていることになるわけです。
このような理由から、Aを付与された社債に2年間投資するときのデフォルト確率が、BBBを付与された社債に1年間投資するときのデフォルト確率より低い、とは一概には言いきれません。そのため、デフォルトリスクの判断には格付けと投資期間の両方を考慮する必要があるわけです。格付会社は1年後、2年後・・・にデフォルトを起こす確率を、「累積デフォルト確率」として公表していますので、こちらを利用すると良いのではないでしょうか。
2つめは格付会社による違いがあることです。
R&IとMoody’sの両方から格付けを得ている182社(2002年9月)を比較すると、同じ格付け(例えばR&IのBBBとMoody’sのBaaなど)が付与されていたケースは56社(全体の約30%)に過ぎず、残りは総じてMoody’sのほうが低い格付けを付与しているようです。
さらに、R&IがBBB、つまり投資適格の格付け付与していたものに、Moody’sが1ランク低いBa、つまり投機的の格付けを付与していたケースが25社(全体の14%)もありました。
また、同じ格付けが付与された社債のイールドカーブをR&IとMoody’sの場合とで比較すると、前者のほうが利回りが高い傾向にあるようです。
格付けを利用する際には、どの格付会社によって付与されたものであるのか、という点を考慮する必要があるといえるでしょう。
公社債投信の目論見書や、投資家向け企業情報(IR情報)など、いろいろな場面で長期債格付けを見かけます。しかし、それらを企業の健全性の尺度である、と勝手に解釈して、安易に株式投資などの判断基準に用いることは危険である、ということはいうまでもありません。社債格付けの持つ意味を理解し、これまでに挙げた2点に注意することで、これまでより有効に格付けを活用することができるのではないでしょうか。
UFJ総合研究所 研究員 植田昌宏
提供:株式会社FP総研