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森内閣時代の00年12月から金融担当相(就任時は金融再生委員長)を務め、一時は海外からも「日本の金融の顔」として評価された柳沢伯夫氏が、30日の内閣改造で退任した。「不良債権処理はあくまで銀行が自助努力すべき問題」との持論を背景に銀行への公的資金再投入を拒み続け、小泉純一郎首相の方針との間で溝が深まった結果の交代劇。柳沢氏の信念とは裏腹に不良債権処理が進んだとは言えず、最近は、「柳沢金融行政」の限界も浮き彫りになってきていた。
柳沢氏は小渕内閣時代にも金融再生委員長を務めた。日本長期信用銀行などが破たんし、金融システム危機に揺れていた99年3月、大手行に7兆円超の公的資金を投入。問題地銀も相次いで破たん処理し、金融システムはいったん落ち着きを取り戻した。「護送船団行政」からの脱皮を強調した柳沢氏は、歯切れのいい弁舌もあって「改革派」と脚光を浴びた。
しかし、森内閣で閣僚に復帰、昨年4月に「構造改革」を掲げて成立した小泉内閣で留任したころから、柳沢氏を取り巻く環境は一変する。
柳沢氏は小泉改革路線に沿って、不良債権の最終処理促進と「06年度に不良債権問題の正常化」を打ち出したが、昨年9月には半年前まで不良債権に分類されていなかった大手スーパー、マイカルが破たん。市場には「不良債権の実態は予想以上に深刻」との疑念が渦巻き、金融行政は瀬戸際に立たされた。
金融庁は昨秋から、銀行に査定の厳格化を求める特別検査の実施。市場が「問題企業」と名指ししていた青木建設など準大手ゼネコン2社を破たんに追い込んだものの、焦点だったダイエーの再建計画は「問題処理の先送り」との批判を浴び、残ったのは消化不良感だけ。結局、大手行(3月末で13行)の02年3月期の不良債権残高は26兆7800億円と前年比で8兆7500億円も増加した。
「公的資金再投入は銀行のモラルハザードを招く」と、銀行にぎりぎりまで自助努力を求める柳沢流は一つの「筋論」だが、結果的に金融システムの安定化は果たせなかった。さらに、自ら「構造改革の柱」と位置付けた来年4月のペイオフ(預金の払戻保証額を元本1000万円とその利息とする措置)全面凍結解除も事実上の見直しを余儀なくされるなど、柳沢金融行政の末期は「改革」の旗印も色あせていたというのが実態だった。
【木村旬】