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対イラク戦の可能性と市場への影響(MSNマネー) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 9 月 30 日 12:10:10:

米国の対イラク攻撃については各国から強い反対の声。米国内でも意見対立に発展している様子。もし戦争がおこれば世界経済の構造を根本的に変えるようなことになる可能性も?

■ 対イラク戦 − 何が重要なのか?

筆者は先週ロンドンを中心に欧州に行って参りました。このコラムで以前にも取り上げたことがありますが、欧州におけるニュースの中心はとにかく「中東、イスラエル」です。現在はそこに「イラク」が絡んでいます。日本では北朝鮮が拉致を認めるという大ニュースがあったため「イラク」の扱いが小さくなるのも仕方ないと思いますが、それにしても普段から扱いがあまりにも小さいような気がしてなりません。今回はそこで、対イラク戦が世界にとってどう重要なのかをご説明したいと思います。

■ 現在の状況 − 米国の孤立化が進んでいる?

現在の状況を見てみましょう。事は複雑です。まず、イラクを攻撃する大義名分ですが、「イラクが生物兵器や核兵器等の大量破壊兵器を隠している可能性が強く、それが対米テロに使用される可能性があるから」ということになっています。しかしながら、実は米英は湾岸戦争後イラクに対して「飛行禁止区域」を定め、また国連も核兵器の査察を行うなどイラクを監視し続けています。この「飛行禁止区域」を仮にイラクの飛行機が飛ぶと米英はイラクを攻撃することができ、実際にこの10年間何度も爆撃は行われているのです。
米国は建国史上初めて「本土への直接攻撃」を受け、大変なショックに陥っていますので「テロの元になるようなものはすべて攻撃し破壊する」という意見が強くあります。このため、今年1月にはイラン、イラク、北朝鮮の3ヶ国をテロを支持する「悪の枢軸」として大統領が議会で演説しその姿勢を強めました。この米国の突出に対しては世界の多くの国々が警戒を示し、とくに欧州は環境問題などで以前から米国とは対立がみられていただけに関係が悪化しました。これは、最近のドイツの閣僚がブッシュ大統領を表し「国内が悪化している時に、戦争で国民の目を交わすという戦略はヒトラーもよく用いた」と発言し、米国の怒りを買ったという事件にまで尾を引いています。
ブッシュ大統領は2月に日中等のアジアを歴訪、同じく5月にはロシア、欧州を歴訪していますが、これは対イラク戦争の根回しが目的であったということです。しかしながら、各国の国民世論はどちらかといえば米国のイラク攻撃には反対という声が強いのが現状です。米国は孤立に向かっているといえるでしょう。

■ 米国でも意見が割れ始めるが...− 米議会と大国の承認が出れば即開戦も

「米国の孤立化」は「米国内の意見対立」に発展しています。まずは、米国の一番の同盟国である英国世論が揺れています。英国政府は最近でも「イラクはあと1−2年で核兵器開発に成功し、生物兵器はいつでも使用可能である」という調査レポートを発表し、米国の応援を続けています。しかしながら、国民の半分以上が対イラク攻撃には批判的です。
米国国内でも、湾岸戦争の英雄といわれる退役軍人、とりわけその中心であったパウエル国務長官は早期開戦にはずっと批判的で、国際世論の支持が必要だといい続けてきました。ごく最近では24日にカリフォルニアの市議会(人口5万人)でイラク攻撃に反対する決議がなされるなど、国内世論も割れ始めました。「テロの被害」というショックから1年が経ち、米国民も冷静に状況を考えられるようになってきたのだと思います。
現時点のブッシュ政権のスタンスは、米議会の承認はもちろんのこと、「国連決議」がなければイラクへの攻撃は行わないというスタンスです。国連決議は基本的には米ロ英仏中の5ヶ国が全会一致しなければなされませんので、米以外の大国の動向が非常に重要になっています。基本的には、英国は米国と一体、中国は棄権、ロシアとフランスが外交戦術で米国から何らかの「プレゼント」がない限りは賛成しないという構図です。最近では、サウジやエジプトも対イラク戦をやる場合は基地を提供すると表明し、米国の根回しが着々と進んでいるような印象を受けます。おそらく、最終的に国連決議は問題ないでしょう。最後のハードルは米国民の世論=米議会の承認だけでしょう。

■ 経済、市場に与える影響は? − 結果が出るまでリスクは消えない 最悪ケースも

それでは、実際に戦争があると経済、市場はどのような影響を受けるのでしょうか?最も大きく左右されるのは原油価格です。原油は上昇を続けており、現在は1バレル31ドル、仮に戦争が起きれば100ドルまで上昇するという見方もあります。しかし、結果によっては原油価格が大幅に低下安定するという見方もあり、ジョージ・ソロス氏は「米国が国連決議に則って合法的にサダム・フセインを追放することができれば、原油価格は今の半分になる」と発言しています。
原油価格の変動は経済に実は大変大きな影響を与えます。現在のような景気があまり良くない状況で原油価格が上がれば、それは「税金」とおなじような効果となり、物価は上昇するのに景気は悪くなっていくという、いわゆる「スタグフレーション」を招く可能性もあります。これは、金融市場にとっては最悪のシナリオで、株も債券もすべての金融資産のパフォーマンスが悪化し、キャッシュや金等のリスク・フリーの資産しか持てないという状況になります。
筆者が最も恐れているのは、イラクを攻撃しても結局テロは収まらず、再び米国が攻撃を受けるようなケースです。こうした時、米国はもうどうすることもできなくなり、「イスラム原理主義」という見えない敵と戦い続けることになります。その時、「イスラエル」という国が存在し続けるためには、米国は常に攻撃を受けることをある程度覚悟しなければならなくなるでしょう。これは、世界経済の構造を根本的に変えます。今まで、世界を牽引し続けてきた米国への投資のリスクが格段に高まるということです。世界の資金は、「イスラエル」や「イスラム」と無関係の地域に向かうことになるでしょう。
以上のように、市場にとっては「イラク戦後」の世界が最も重要です。戦争があるのかないのか一喜一憂するよりも、結果が見えるまではとりあえずリスクが付きまとう、そして、結果次第ではさらにリスクが増大するケースもありうる...今の状況はリスクを相当気にしなければいけない局面だといえるでしょう。

提供:株式会社FP総研

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