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三十日にも行われる内閣改造を前に柳沢伯夫金融相の去就が注目されている。これまで、柳沢金融相の主張に沿い、公的資金再投入を拒絶してきた小泉政権だが、ここへきて公的資金投入に急速に舵(かじ)を切り始めた。柳沢大臣にも、政策転換するかどうかの「踏み絵」を迫っている。なぜ「柳沢切り」の声が高まってきたのか。金融相をめぐる人事の底流を探った。
(経済部・池尾伸一、上田融)
「あらゆることを視野に入れて検討している」−。二十六日、福田康夫官房長官が公的資金注入を視野に入れた発言をすると平均株価は上昇を開始。終値では前日より二百円近く高い九三〇〇円を回復した。
公的資金に慎重だった政権関係者たちがここへきて口裏をあわせたように、「投入」を示唆し始めている。塩川財務相は前日の会見で「企業整理の結果、必要なら公的資金を入れたら」と指摘、小泉首相も「いろんな方法を検討してほしいと、柳沢金融相に指示してある」と発言した。
市場では、外資系証券が金融相後任人事を予測するリポートまで発表するなど「金融相更迭、公的資金投入」を前提とした展開になっている。
■市場の圧力
小泉首相は三月危機時も、公的資金投入を主張する竹中平蔵経財相や速水優日銀総裁を退け、柳沢金融相の主張をいれてきた。ここにきての方針転換の裏には切迫する市場の動きがある。
日経平均が、一時的とはいえ九〇〇〇円を割り込む現状では、大手銀行の自己資本比率は9%前後とみられ、国際ルールの8%割れ寸前。このままなら自己資本を維持するため、貸し出しの圧縮に動き出すのは必至。
しかも今回は、米国市場が比較的堅調だった今春とは異なり、米国株価はイラク戦の懸念などで急落しているほか、ドイツなど欧州市場も下落。日本市場がさらに下落する恐れが強まっている。
今月中旬の日米首脳会談では、小泉首相は竹中経財相の“進講”通りに、「不良債権処理の加速」を表明。このころから、首相の「柳沢離れ」が言われ始めたが、決め手となったのが、日銀が十八日に発表した銀行保有株の購入策。
中央銀行が株を直接買うという前代未聞の決断で、金融システムへの「危機感」を身をもって示したことで、首相も揺れ動き始めた。
「もし、小泉さんが動かないなら、政府と中央銀行の政策の不一致で市場の急落は必至。市場を取るか柳沢大臣を取るか、首相に王手飛車を迫る戦略だ」。日銀幹部は“捨て身”の戦略の真の狙いをこう明かす。
■孤立無援
こうした中で柳沢大臣は孤立無援。一部の報道が、柳沢金融相の辞意を伝えた二十五日も「筋を通して、清々粛々と信じる道を行く」と、公的資金投入を否定した。自らの政策を変えないならば、交代は避けられそうにない。
だが、柳沢大臣の金融行政は小泉政権の経済政策そのものだっただけに、政権に大きな打撃となるのは間違いない。
小泉政権は、「大企業、大銀行救済」との批判にもかかわらず、ダイエーやゼネコンなどを債権放棄で救済するよう銀行に要請、「軟着陸(ソフトランディング)」を選んできた。が、「柳沢更迭」は、こうした政策は誤りだったことを自ら認めることにもなる。
さらに、公的資金を投入した後、大手銀行、大手企業をどう整理・淘汰(とうた)させるのか政権内部では全く議論されていない。
一方で、自民党では整理回収機構(RCC)に不良債権を銀行の言い値である実質簿価で買い取らせ、損失は公的資金で穴埋めするという事実上の「銀行救済策」を主張する意見も根強い。実質簿価買い取りに反対してきた柳沢大臣が交代、銀行界に近い「金融族」議員が大臣に就任すれば、一気にこうした構想が具体化する可能性もある。
首相が本当に「パンドラの箱を開ける決断」(市場関係者)に踏み切るのか、金融市場の関心は今、この一点に集まっている。