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米史上に残る大惨事として世界中の人々に衝撃を与えたあの米同時多発テロから早くも1年。マーケットにとっても激動ともいえるこの1年間を振り返り、今後の世界経済の動きを探ります!
■ 9月10日現在、米株式市場はテロ後安値から6%安い水準
あの衝撃的な同時多発テロから1年が過ぎました。今回はこの1年間を振り返った上で、あらためて現在の経済状況と市場の水準に対してどう見たら良いのかを探っていきたいと思います。まず、米国株式市場ですが、現在の水準を昨年テロ直後の安値と比較すると、さらに6%安い水準(S&P500)となっています。
■ テロ直後の暴落〜3月「アメリカ人キリギリス論」による上昇、ドル高、金利上昇
昨年のテロの後、市場は悲観で一杯となりました。90年代の好況を支えてきた「冷戦終了による平和の配当」の効果が完全に無くなり、「テロ」という新しい敵との戦いに対するコストが、これから長い間経済を押し下げるという見方です。そこには、防衛費の増加、それにともなう民間部門の萎縮、物流リスクの増大、中東不安定化に伴うエネルギー価格高騰など、さまざまな要因が挙げられていました。
しかしながら、こうした不安は2001年のクリスマス商戦が自動車ゼロ金利ローン等の効果もあり好調に推移したことで一気に払拭されました。「米国民はキリギリス」のように消費をするということが裏付けられたのです。当時の世界最大の企業破綻となったエンロン事件等、バブルの後始末とも呼べる企業の不祥事の表面化も多く見られましたが、株式市場はテロ後の安値から年内に20%の上昇を見せました。
金利も乱高下しました。テロ当時4.7%程度であった米10年国債利回りは11月に4.1%台をつけましたが、その後景気回復期待を受け3月の5.4%まで急騰しました。
為替市場ではドルが上昇しました。テロの被害に対する保険金が主に欧州の保険会社から支払われた他、日本では株安から金融システム不安が発生し円が売られ、リスク許容度が大幅に低下した米国投資家の海外資産売却(リパトリエーション)が加速しました。ドル円相場は117円から135円まで上昇しました。
■ 3月〜7月 「企業会計不安」と「逆資産効果リスク」による暴落、ドル・金利下落
しかし、こうした景気に対する楽観は3月末から転換しました。粉飾決算はエンロン1社の問題ではないことが次々と発覚し、多くの有名企業に疑惑の目がむけられました。なかでも6月末に破綻したワールドコムはエンロンから7ヶ月目にして再び「世界最大の企業破綻」の記録を更新しました。株式市場の下落による「逆資産効果」から今まで世界経済を支えてきた米国民の個人消費にも不安が出てきました。このため株式市場は下げが下げを呼ぶ展開となり、7月23日までに年初の高値から32%の下落、テロ後の安値と比較しても17%も安い水準まで落ち込みました。
長期金利は3月の5.4%から4.4%まで下落しました。為替市場では米国の信頼失墜により大幅なドル安となり、ドル円相場は135円から115円まで15%も円高が進みました。米国の強みと考えられてきた会計の透明性に対する信頼と、世界経済を牽引してきた米国民の個人消費に陰りが見られるため、今までのように明らかに対米投資が世界でもっとも効率的であるという確証が得られなくなってきたためです。
■ 7月〜 長期金利低下が経済支える
7月以降株安は収まり、9月10日現在では7月の安値から14%高い水準まで戻っています。下支え要因となっているのは8月15日に全米の企業から提出された「企業会計の正確性に関する宣誓書」と長期金利の低下です。長期金利は株式市場が底を打った後でも低下を続け、現在は4.0%と株式が安値をつけてからさらに0.4%低下しています。住宅市場では金利低下により住宅ローン借換えが史上最高規模となっており、金利低下による返済額の減少が個人消費を支えています。
為替市場も落ち着きを見せています。7月以降、ドル円相場は115−120円の範囲に収まっており、次の動きを待っているところです。
■ 今後の見方「循環論と構造論」
それでは、今後はどうなるのでしょう?筆者は、世界経済が「景気循環的に上向きなのか下向きなのか」と「構造的にどの方向に向かっているのか」の双方に目を配る必要があると考えています。
構造的にはもうある程度見えてきたと思います。おそらく、今後長期間に渡って経済成長は抑えられるということです。2000年3月のITバブル崩壊はやはり歴史上にみられたバブルと同じく典型的なものであったことがだんだんと分かってきました。国際政治的にも「イスラム原理主義」による「テロ」という大事件を筆頭として「米国一極集中」が崩れる要因がだんだん明らかになっています。米国の長期金利は既に30年前の水準に達していますが、これはこうした動きを織り込んだ結果でしょう。
循環的にはどうでしょう?こちらはまだまだ分かりません。市場では2003年の方が今年よりも景気が良いというのがコンセンサスですが、消費マインドなどを見るとひょっとすると昨年10−12月期に始まった景気回復がすでに終わりに差し掛かっている可能性もあります。しかしながら、耐久材受注や失業保険申請などを見ると、現在は循環的な景気回復の踊り場で、来年にかけて再び成長が加速するという見方も可能です。
以上のように考えると、構造要因から「長期金利はまだまだ下落余地があるが、来年にかけて景気が再加速するのであれば一旦上昇するかもしれない」、「株式は循環的に上昇する局面はあるだろうが、ずっともっていてもあまり高リターンは期待できない」、「ドルには不安が付きまとう」という結論になります。長期運用するのであれば「ヘッジ付き外債」を中心に、株式を1〜2割、ドル以外の通貨建の資産を2〜3割もつというのがベストではないでしょうか?
提供:株式会社FP総研