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「不良債権には十分な引き当てを行ってきたつもりだ。なぜ、いまさら公的資金を入れるのか」――。UFJ銀行の玉越良介副頭取はこのほどブルームバーグ・ニュースのインタビューで、こう強調した。
これは、竹中平蔵経済財政・金融担当相が、銀行の資産査定を厳格化したうえで、自己資本不足に陥った銀行には、公的資金の注入を検討する方針を打ち出したことを受けたもので、UFJは公的資金の注入は必要ない、との考えを重ねて示した。
竹中担当相の就任で、日本の金融機関の抱えている不良債権問題を抜本的に解決するため、強制的な公的資金の注入論も急速に浮上し出した。こうした中で、大手金融グループの首脳のひとりが「公的資金はいらない」と明確に否定したのは初めて。
竹中・木村ショック
だが、株式市場はすでに、不良債権処理の加速を織り込み始め、多額負債を抱える問題企業の株価下落が続いている。特に、いわゆる“30社リスト”の中に括られている企業の株価の下落・低迷が鮮明となってきた。
竹中担当相が不良債権処理の抜本策を検討するプロジェクトチームに、大口債務企業への引き当て強化を主張する木村剛・KFi代表を選任したことで、こうした動きに拍車が掛かっている。
3日の取引では、UFJがメーンバンクであるダイエー、大京、ミサワホーム、アプラスなどに売り注文が殺到した。これに伴い、UFJの株価もストップ安となった。4日も朝方、一時、大きく下落した。
「ドラスティックな引き当てをやった」
こうした市場の動きがあるものの、玉越副頭取は「大きな取引先を中心に見直して、それぞれ再生可能な企業やビジネスを見極め、相当、ドラスチックに引き当てをやった。当局の担当者も見ているし、それはそれでしかるべきことはやってある、との理解を得ている」。
金融庁の指導を受けながら、不良債権の引き当て処理を行ってきたとして、公的資金注入論議をけん制した。しかし、その金融行政も、柳沢伯夫・前金融相が、小泉純一郎首相や竹中担当相ら政権中枢部との路線の違いから事実上、更迭されたことで、急転換する可能性が高い。行政の姿勢が変われば、銀行の経営に与える影響も大きくなる。
しかし、玉越副頭取は現時点では、2002年9月中間決算について「修正を発表しなければならないことではない」と述べた。自己資本比率も9月末で、 10%超を確保したと説明した。不良債権処理は計画通りに進んでおり、期初に予定していた今期の不良債権処理額の4800億円を、現時点では積み増す計画はない、と語った。
「再建計画」を見直す時期ではない
UFJの取引先企業が「再建計画」の見直しを今後、迫られるとの見方は市場に強い。これに対して、玉越副頭取は「(再建計画の見直しは)現時点では要請していない」と否定した。
再建計画を策定した時よりも、企業を取り巻く環境が大きく変わり、経営状態が悪くなっていれば、計画を見直す必要も生じる可能性がある。平均株価が9000円割れをしている現状では、それはなおさらだ。
しかし、「今のところは大幅に見直す必要のある取引先はないのではないか」と語った。そのうえで、「ある月に計画を下回っても、それだけでは判断できない。再建計画は1年間は見守らないといけないのではないか」と併せて指摘した。
玉越副頭取は、整理回収機構(RCC)による不良債権の買い取りについて「債権を移すときに企業価値をどうみるか。価格の柔軟性の議論がまだ残っているような気がする」と述べ、再生可能性がある債権の買い取りについては存続を前提とした価格で柔軟に判断してほしい、との見方を示した。
また、RCCが買い入れた債権を、最終的に処分する場合に生じる損失である「2次損失」が出た場合、公的資金で穴埋めすべき、との意見があることに関しては「銀行への安易な補助金交付である。銀行の緊張感がなくなる、との議論もある」と指摘し、そうした世論に配慮したうえで、判断する必要があるとした。
「力を入れるのは中国」
このほか、玉越副頭取は「すべての銀行が海外業務をやる必要はない。1つや2つでは(企業が)困る」と述べ、引き続き海外業務を堅持する方針を示した。特に「これから力を入れるのは中国」と強調、日本企業の進出が相次ぐ中国での展開を強化する考えだ。
その一環として、10月1日付で国際業務推進部内に「中国進出支援室」を設立し、中国拠点の拡充や商品、サービス開発などを推進する体制を整えた。また、送金や決済業務の迅速化を図るため、他の都銀に先駆けて、中国の4大銀行とも提携した。
同行は現在、中国に6支店、1駐在事務所を展開中で、上海と天津と深せんは「人民元」での融資が可能。拠点は今後も増える見通しだ。