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クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場で、日本ソブリンのプレミアムがじわり拡大してきている。かつてAAA格を誇った日本国債の格下げ騒動が焦点となっていた頃と比較すれば、プレミアムの水準自体に驚きはない。ただ、政府が総合デフレ対策の具体化を急ぐなか、格付け機関フィッチが日本のソブリン格付けを11月に引き下げる可能性があると表明、市場関係者の間では“気持ちの悪い動きではある”と、今後のCDSの動向および格付け機関の動きに関心を寄せる向きもある。
大きく市場を揺るがした日本国債格下げ騒動のさなか、CDS関係者から、「オファーサイドで60bp(10年物・ドル建て)を超える場面もあるなど、異常値を通り越し、もはやソブリンとしては、ポーランド共和国クラスに相当する水準」との声があった日本ソブリンのプレミアムは、このところ低位安定が続いていた。
しかし、日銀の銀行保有株買取表明や、10年国債の札割れ、足元で進行する株安などが複合的な拡大要因となり、直近ではじわりとプレミアムが拡大してきているという。
具体的には、このところ41─46bp付近(10年物)で比較的落ち着いた推移となっていたものが、足元では47─53bp付近まで拡大、水準自体にさほど驚きはないとはいえ、「決して気持ちのいい動きではない」(ディーラー)という。
実際、前週の市場では、「政策対応の結果、さらなる国債増発が迫られるとの思惑などが働き、日本ソブリンのプレミアムが5年物で1─2bp拡大するような動きとなっていた。値幅自体は少ないが、これまで動きがなかっただけに、やや注目だと言える」(別のディーラー)とする指摘がなされていた。
また、日本ソブリンの売買を手がける中心的な参加者が海外勢となっていることから、足元での動きをTIUデリバティブズ・クレジットデリバティブズデスク・シニアデスクマネージャーの根谷昌宏氏は、「海外勢によるジャパン・パッシング」と表現したうえで、金融分野緊急対応戦略プロジェクトチームのメンバーに着目する。根谷氏は、「メンバーのなかでも、中原伸之・前日銀審議委員、吉田和男・京大大学院教授は、いずれも日銀に対して国債の買い切りを積極的に実施しろとの論調を持っている。さらに、中原氏は、外債購入やインフレターゲティングなどの提唱者でもあり、メンバーの顔ぶれを見て海外勢が敏感に反応した可能性もある」と指摘する。
おりしも、格付け機関フィッチが、日本政府がより厳格な財政政策を打ち出すとともに銀行問題と取り組むことができなければ、日本のソブリン格付けを早ければ11月にも格下げする可能性があることを明らかにしており、再び日本国債の格付けに注目する関係者もある。
三菱証券・金融市場戦略部シニアクレジットアナリストの三島拓哉氏は、「S&Pも、発表文で“10月にも発表されると思われる政府のデフレ対策を詳細に調査し、格付け変更の要否を検討する”と述べており、今年度中に日本のソブリン格付けを見直す可能性が高く、すでにシングルAレンジとしているムーディーズに平仄を合わせる方向に向うと思われる」と指摘する。
そのうえで、三島氏は、「欧米系の格付け機関の動きにサプライズはないが、欧米系の格付けがシングルAレンジに収れんすれば、さすがに依然としてAAAを維持している国内格付けにもプレッシャーがかかる可能性をみている。早晩、R&Iも、日本のソブリン格付けを1ノッチ引き下げざるを得なくなるのではないだろうか」との見方を示している。