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年金〜投げ返されたリスクしわ寄せは国民?(MSNマネー) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 10 月 02 日 11:08:26:

年金制度は確実に転換期を迎え、企業はこれ以上の年金費用負担の増加リスクから逃れようとし、国も年金財政の悪化をなんとか食い止める措置を検討中。でもそのしわ寄せは結局国民に回ってくる?

平成13年に成立、公布され、今年4月より施行された確定給付企業年金法により、厚生年金基金の代行部分返上が認められるようになった。これを受けて、代行部分の返上を発表する厚生年金基金が後を絶たず、その基金数は増加の一途を辿っている。
ここでまず、読者の皆様の理解のために、厚生年金基金及び代行部分についての説明を簡単にさせていただくこととする。
厚生年金基金は、厚生労働大臣の認可が必要な特別法人であり、一定数以上の加入者で構成され、私的年金として、従業員の老後の生活保障のための年金給付及び年金資産運用委託を行っている。大規模な企業では独自で厚生年金基金を持つことが多く、中小規模であって人数面での制約から独自で厚生年金基金を設立できない企業などでは、例えば業種ごとに数社が集まって厚生年金基金を設立、運営している。
厚生年金基金の特徴の一つが「代行部分」と呼ばれるものであり、これは本来国に納付すべき厚生年金保険料の一部を免除してもらうかわりにそれを運用し、国が給付すべき厚生年金の一部を国に代わって給付するというものである。
厚生年金の運用予定利回りは平成11年までは年率5.5%であった(現在は4.0%)。よって、代行部分の運用予定利回りも同様に5.5%(現在は暫定措置により、厚生年金本体の実績利回り。例えば平成13年は3.62%。)となる。株式市場の長期低迷が始まる前は、この予定利回り以上の利回りをあげることができれば、その差の分だけ厚生年金基金の年金資産が増加し、年金財政の健全性が増すため、このメリットを享受しようと厚生年金基金の数は年々増加していた。
しかし、バブル崩壊により株式市場の長期低迷が続き、メリットはデメリットに変わっていった。つまり、株式市場低迷で、予定運用利回りが確保できなくなったため、厚生年金基金の実際の運用利回りとの差の分だけ、企業の負担により穴埋めをする必要が生じてしまう。この状況が近年続き、ただでさえ景気低迷で業績が芳しくないところへ、年金資産の目減りの穴埋めという、企業収益へのダブルパンチが起きているのである。
そのため、予定利率を下回る資産運用により企業がその穴埋めをしなければならないというリスクから解放され、さらには年金債務を減少させて企業のバランスシートを健全化するために、厚生年金基金のうち、代行部分を国へ返上しようとする企業が後を絶たないのである。
代行部分を返上すると、最低責任準備金と呼ばれる、代行部分の給付に必要な金額の現在価値だけの年金資産を国に返上する必要があるが、多くの企業は、それ以上の年金資産を積み立てており、多くの場合は代行部分を返上すると、巨額の利益が発生する。企業は近年の株式市場低迷により、年金費用の積立不足が増加している。代行部分を返上すると、それにより生じる利益と相殺することにより、年金費用の積立不足を償却することができる。
厚生年金基金が代行部分を国に返上するということは、これまで厚生年金基金が負っていた年金資産運用に伴う損失を穴埋めするリスクを、国に投げ返したことを意味する。自らが業績低迷で苦しんでいる中、年金債務についてのリスクをこれ以上負えなくなった企業は、代行部分返上によりそのリスクを国に渡した。しかし、国自身も財政難であり、年金運用に伴う損失穴埋めのリスクをいつまでも負うわけには行かない。そこで、将来は公的年金(国民年金、厚生年金)の保険料引き上げや年金支払額の引き下げ、という措置がとられるのは必至である。このことは、年金支払いに対するリスクが、企業から国へ、そして国から国民へ移転したということを意味する。つまり、毎月一定の保険料を払っていたのに、それに見合う年金がもらえないというリスクを国民は負ってしまっているのである。
年金制度は確実に転換点を迎えている。今までのように、会社のために真面目に働きさえすれば、定年後の生活は年金受給により安泰であった時代はもう終わった。厚生年金基金の代行部分返上、厚生年金基金の解散、確定拠出年金(日本版401k)への移行と、企業はこれ以上の年金費用負担の増加リスクから逃れようとしている。厚生年金を運用する国も、将来の年金支払額の引き下げや、保険料の引き上げなどを検討し続けている。国でさえ、これ以上年金財政を悪化させることはなんとしても食い止めようとしているのである。
このしわ寄せは間違いなく国民に回ってくる。企業も、国も、老後の生活を保障してくれなくなる時代はすでに始まっているのだ。もう、老後は企業にも国にも頼れない。若いうちから、老後資金を自らの手で準備することが必要となってしまった。しかも、貯金しているだけではインフレによる資産価値の目減りに耐えることは出来ない。株式投資などによる運用が必要になってくるかもしれない。あなたは、株式投資による運用のリスクと、老後に苦しい生活を強いられるリスク、どちらを選択するだろうか。 

加藤武夫
提供:株式会社FP総研

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