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金融再生へ資本再投入
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株価下落の最大の原因は、市場が日本企業の収益回復に確信を持てないことにある。
その中でも、金融機関は不良債権の処理を大きく残している上、これから収益を上げていくビジネスモデルもきちんと提示できていない。金融機関は資本基盤が全体に弱いため、市場は「金融システム全体が脆弱ではないか」という漠然とした不安を抱えている。マーケットでは株価が下落すれば、金融不安の問題に直結して考えられてしまうのも、こうした不安が出発点にあると思う。
金融機関の多くは不良債権の償却で収益を全部使っても、なお足りない状況だ。しかも、一部金融機関は(積み立てが義務づけられている)法定準備金の取り崩しに追い込まれている。こうした金融機関の状況を全体としてみれば、明らかに資本不足だろう。だから、大半の金融機関はリスクをとって新規貸し出しに踏み込めない。
この状況を打破するため、政府の手で、資本をかなり厚めに供給せざるを得ないと考えている。私は金融機関の財務内容を精査出来る立場にないが、市場から見て「けちった」と思わせない程度には公的資金をしっかり入れなければいけない。公的資金を使えば、金融機関から企業へ資金がより円滑に流れるようになる。これが企業業績の回復を助け、借金も返しやすい環境になる。金融機関も不良債権を早く償却できるようになる。
ただ、金融機関の資本が厚くなっても金融機関が問題企業を抱え続けるのでは意味がない。企業の整理・再生を促進しなければいけない。具体的には、整理回収機構(RCC)に不良債権をどんどん移させ、RCC自身も企業再生を進める仕組みをもっと整えるべきだ。問題企業は解体し、もうけることができる事業を残す。もうからない事業は整理し、そこへの融資を償却するべきだ。
公的資金を投入する際に重要なことは、受け入れた金融機関に対する行政の介入が強すぎると、金融機関がリスクを新たに取りにいけなくなる点だ。金融機関の経営者には、公的資金を入れることへの抵抗感がかなり強い。経営責任を追及するのは当然だが、責任追及が行き過ぎたり、経営干渉が強すぎると、経営の自由度を奪うことになる。
「公的資金を損なわないよう厳しく経営を監視せよ」というのが従来の発想だ。政府はこの考えを改め、金融機関の経営を縛るよりも、突き放すべきだ。経営に失敗する金融機関が出ても割り切り、再建に成功した金融機関から国が公的資金を回収すればいいという発想に切り替えないと、問題企業の整理が進まない。
その上で、ケガが治る見込みの金融機関は、中央銀行が(資金繰りの)面倒を見る一方、致命的な傷を負った金融機関は整理される世界に早く戻すべきだ。
銀行も、サービス業であるという意識を持ち、顧客のニーズを探り当て、新しいサービスを設計し、提供していかなければならない。
(聞き手 是枝 智)
福井俊彦 (富士通総研理事長)
1958年日本銀行入行。営業局長、理事を経て94年副総裁。
98年からは富士通総研理事長。2001年かtら経済同友会副代表幹事。67歳。