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UBSウォ−バ−グ証券会社・経済調査部チ−フエコノミストの白川浩道さんは、「日本経済は、昨年第2四半期に始まった厳しい 景気後退の後、02年上半期に、かろうじて下げ止まったに過ぎない」と語る。 同社の景気循環に対する見方は、引き続き、「来年4-6月期までは緩やかな回復局面にある」というもの。02年7−9月期から03年4−6月期にかけては、平均して年率1.5%程度の成長が可能、との比較的楽観的な見通しである。こう した見通しの前提として最も重要なのは、「米国経済に二番底はなく、当面は年 率2.5%〜3%の実質成長が可能」というものである。
<アジア以外で需要項目で目立った回復はみられない3つ背景>
来年の半ばにかけては、アジア向けの輸出拡大の波及効果が、製造業における投資拡大として顕現化するとみられる。ただ、「個人消費、住宅投資、非製造業の設備投資といった、その他の需要項目については、目立った回復はみられない」と予想している。その背景としては、次の3つを指摘する−−。すなわち、@名目所得の伸び悩みの下で、企業の雇用リストラが継続するため、 家計所得の改善が望めない、A資産デフレに出口が見えず、家計、企業ともに、ネット正味資産の減少トレンドから抜け出せないとみられる こと、B政府の危機意識の欠如によって、マクロ経済政策に需要刺激を求めることは当面不可能であるとみられること、である。
<ごく短期間のうちに腰折れるリスク>
このように、経済見通しは来年の半ば以降も含めて展望した場合、明るいもので はない。しかし、なお、リスクはダウンサイドであり、「それは、景気がごく短期間のうちに腰折れるリスクである」と言う。 最近における同社の最大の懸念は、企業による人件費削減ペースの加速であり、第2のリスクは、想定しているよりも早期に在庫調整圧力が生じてしまうリスクである。このうち、人件費削減では夏のボーナスの削減が6−7月の平均で9%弱(前年比)にも達しており、予想 はるかに上回る厳しい内容となった。パートタイマーへの趨勢的なシフト、基本給部分の前年比1%程度の削減とあわせれば、人件費は前年比でみて3%以上のペ ースで削減されている。これまで、日本の家計は、企業の緩やかな人件費削減の 下で、相対的に物価下落をエンジョイしてきたが、「そうした状況は変わりつつある」と見る。中長期的にみれば、人件費削減や労働分配率の正常化は好ましいことであるが、短期的には、個人消費を抑制することになろう。個人消費については、基本シナリオでもゼロ成長の継続を予想しているが、早期に、個人消費がマイナス成長化するリスクがあることは否定できない。消費者は、所得の減少に消費の抑制 を合わせるのに、若干時間を要するものとみられ、「消費が秋口以降、急激に失速 する可能性がある」。消費者コンフィデンスの改善が限定的な以上、消費性向の大幅な上昇は持続可能ではなかろう。8月の所得データが引き続き悪化すれば、個人消費の見通しを下方修正する見込みと言う。