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米国の長期国債利回りが4%を割り込み、1963年以来の低い水準になりました。しかし、今後米国がデフレスパイラルに陥るようなことになれば更に下がり日本のような1%金利もありえるかも?
■ 米国の長期金利がついに4%割れ
9月3日(火)米国の長期金利(10年国債利回)がついに4%を割りこみました。これは1963年以来という歴史的な水準です。実は8月14日にも一時3%台をつける場面がありましたが、この時は達成感からすぐに金利は上昇しその後4.3%まで上昇してしまいました。しかしながら、株式市場が8月22日にNYダウ平均で9,000ドルの大台を回復して以来再び9月3日に8,300ドルをつけるまで下げています。長期金利は株安とともに再び低下しています。
■ 金利=名目GDP伸び率
長期金利は毎日変動していますが、なかなか個人で長期債を買うという機会はありませんので、実感としてどのようにして金利が決まるのかはお分かりになり難い方が多いと思います。
株式のバリュエーションを見る際、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)といった指標を見て割安割高の判断をするというのは一般的だと思いますが、債券の場合にも当然「フェアバリュー」を計る指標があります。最も一般的なのは「名目GDPの伸率」です。
名目GDPというのは国全体の所得のことですから、「所得の伸び率」と「貯金した場合の利率」が大体同じくらいになるように金利は動いているということです。ここでいう「所得の伸び」とは「去年と全く同じだけ働いたとして得られる所得」の伸びのことで、まさしく「経済成長」を表しています。貯金は過去に働いて得た所得の一部ですから、その労働の価値が経済成長によって増えているのであれば、貯金として残っている過去の労働の価値も増えていきます。この貯金の価値が増えた部分が「金利」なのです。
■ 長期金利は今後10年間の予想GDP伸率の平均
したがって「名目GDP伸率」が上がれば金利は上がり、「名目GDP伸率」が下がれば金利は下がります。米国の金利が3%台まで下がったのは「名目GDP伸率」が3%台にまで下がったからに他ありません。日本の長期金利が1%程度なのは、日本のGDPがマイナス成長だからです。したがって、1%という長期金利は日本経済の実力からすれば高すぎるくらいなのかもしれません。
しかしながら、長期金利は10年国債の利回りですので、今後10年間毎年金利を受け取ることが前提となっています。毎年の金利がそれぞれの年の名目GDP伸率と同じであれば良いのですが、そもそも未来のことですから何%になるかは前もって分かりませんし、成長率も毎年異なるはずです。ですから、長期金利は「今後10年間のGDP成長率を予想した平均」なのです。米国の場合は今後10年間変動はあれど平均で概ね4%程度で推移することが見込まれているということです。それに対して、日本の方は、今はマイナス成長ですが、今後10年間平均すれば1%程度になると市場が予想しているということになります。
■ 今後10年間、米国の成長率はどの程度なのか?
長期金利がこれだけ低下してきたのは、今後10年の所得の伸びが以前のように6%も7%も伸びることはもう不可能で、せいぜい4%くらいに落ち着くだろうと市場参加者の大半が思い始めたということです。本当はどの程度になるのでしょうか?
90年代後半の「ニューエコノミー」論全盛の頃、米国の「潜在成長率」は4%程度だといわれていました。「潜在成長率」についての細かい説明は省きますが、概ね「人口成長率+生産性の伸び」だと思ってください。これに「インフレ率」を足すと名目成長率になります。つまり、
長期金利=名目成長率=人口成長率+生産性の伸び+インフレ率です。
米国の人口成長率は70年代からだいたい1%程度で安定しています。また、インフレ率はオイルショックの頃で8〜10%程度、80年代が3〜4%、90年代前半は2.5%、後半は1.5%という具合にどんどん下がっています。これには経済のグローバル化が影響していますので、流れが止まらない限りはまだ下がっていくでしょう。
今後10年のインフレ率を1.0%、人口成長率も1.0%とすると、残りの生産性の伸びの部分が問題になります。現在、長期金利が4%程度ですから、生産性伸率は2%程度と見込まれていることになります。インフレ率を0.5%とおけば、生産性伸率は2.5%です。
ニューエコノミー論全盛時代は、潜在成長率が4%程度と見ていましたので、生産性伸率は人口成長率の1%を引いた3.0%程度と考えていました。これが、ITバブルがはじけた現在では2〜2.5%程度というところまで下がってきたことがわかります。
しかし、本当のところはどの程度なのでしょう?生産性は順調にまだ伸びるのでしょうか?インフレ率にしても日本のようにデフレになれば、今後10年間0%ということもありえます。こう考えると現在の4%という長期金利は決して低くありません。生産性が伸びなくなり、景気が悪くなり、デフレが常態化する...いわゆるデフレスパイラルになれば、日本のような1%の金利も夢物語ではなくなるかもしれません。
提供:株式会社FP総研