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(回答先: 構造改革、黒字企業への課税強化、労働分配率の向上など>あっしらさん 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 06 日 22:55:03)
たにんさん、こんにちわ。
先般も書きましたが、ある国が輸出を持続的に大きく増加させていけるという国際経済構造は73年を境に終わりました。
世界の総需要最大値は、「供給+政府“赤字”財政支出+家計借入支出+“余剰通貨”」で規定されるものです。
(「供給」は企業が支出するもので借り入れによる投資も含まれるとお考えください。政府の税収に基づく財政支出は「供給」の移転です。政府“赤字”財政支出は、“余剰通貨”の借り入れとお考えください)
政府“赤字”財政支出は、ご存じのように、日本に限らず、“余剰通貨”を借り入れで使ったために債務の履行が困難な状況まで追い詰められています。
家計借り入れ支出も、失業者の増加や資産価格の下落で、債務が履行できなかったり、売却しても不良債権になる要因となっています。
“余剰通貨”は、現実には需要にならない潜在的需要です。そして、「デフレ不況」と資産(株式・土地)価格下落はたまた国際金融の不安定状況というなかで、潜在化の方向に動いています。
供給のみが、総需要を拡大していく原動力と言える状態になっています。
そのような状態でありながら、「不況」のために、「個別資本の論理」としては“正しい”供給の減少が続いています。
輸出や輸入といっても、世界の総需要=総供給を国民経済で区分して捉えた需要と供給でしかありません。
日本以外の先進諸国が、貿易(経常)収支が赤字もしくは黒字すれすれという状況です。
そうであれば、経済成長を維持するために、上記需要構成要素を如何にして自国民経済のものにするかと考えるのは当然です。
日本がどれほど国際競争力を強化しようとも、それが新規製品でなければ輸出増加にそれほど結びつかないし(“余剰通貨”を取り崩す契機となる)、貿易(経常)収支が赤字もしくは黒字すれすれという国にそれらを輸出したいのなら、日本がファイナンスしなければなりません。(輸出で稼いだ通貨を貸し出して商品を買ってもらうという倒錯的な手法です。米国連邦政府に貸している通貨はいつ返ってこなくなっても不思議ではない状況になっています)
このような国際経済構造をベースに日本経済の将来像を描かなければならないと考えています。
以降、たにんさんの論考に即してレスします。
>黒字企業のみへの課税強化と、その労働分配率の上昇で、会社が弱って潰れなければ
>勿論、それが一番結構なことです。
黒字企業及び高所得者への課税強化“もしくは”黒字企業の労働分配率の上昇の選択で、その両方ではありません。
さらに言えば、黒字企業の労働分配率の上昇について、その費用増の20%ほどを政府が面倒見ようというものです。
>(海外の競争相手にとっても、日本の市場が拡大し日本国内の生産者が弱体化するの
>は願ったり叶ったりの状況。
>これまで米国庶民が借金により長期的な信用を犠牲にして消費したのと似て、
>日本では競争産業を犠牲にして需要を拡大しようと言う発想です)。
日本の市場が拡大しても、日本人多数派の需要構造から、外資が恩恵を受ける割合は少なく、多くは海外生産分を含めた日本企業が恩恵を受けることになります。
競争産業を犠牲にするという指摘については、輸出増加が可能だった高度成長期や80年代前半までであれば、そう言えたと思います。
輸出増加が期待できない国際条件においては、国内需要を拡大しなければ、国内市場を大きな拠り所としている企業は、「デフレ不況」のなかで衰退していくことになります。
>「一斉に同じ業界の全世界の会社が談合して(または強力な労働組合や国家の規制
>で)
>労働分配率を上昇させる場合は別として、労働生産性(つまり利益)の上昇が無いに
>も関わらず
>国内の一部の社だけが行えば、その会社の選択としては
>1、配当性向を落とす 2、将来に向けた投資を減らす などしかあり得ず、
>株主に見放されて株価が下落、銀行からの借り入れ金利が上昇し、長期的に見れば、
>それ以外の条件が同じ他社との間の競争に負けて淘汰されてしまうのではないか?
>(あと 3、納税額を減らすという手段もあるが、これは国家財政の更なる悪化を招く)
談合して一斉に行うのがベター(笑)なのですが、個々の企業が自主的に実施することを建前としています。
「1、配当性向を落とす」必要がない程度(内部留保の一部)の給与増額でいいのですが、多くの黒字企業が実施すれば、配当性向を少し落とすレベルの給与増額を行っても利益が増加するので、結果的には配当性向を落とす必要はなくなります。
「2、将来に向けた投資を減らす」ことになるのなら、思い切った投資減税を同時に行うべきです。
投資は需要であり供給ですから、給与増額に匹敵する経済効果があります。
「毛針法人税減税」は、投資もしないまま内部留保を抱えている企業向けのアイデアです。
「3、納税額を減らすという手段もあるが、これは国家財政の更なる悪化を招く」については、「毛針法人税減税」アイデアは費用(損金)の二重計上を認める歪な政策ですから、納税額を減らすものですが、損益ぎりぎりで赤字になっている企業のある割合が、その政策で黒字化しますから、減税でありながらも、税収増になる可能性もあります。
オイルショックや円高も生産性の上昇で打撃を乗り越えてきたように、日本の優良企業は、周辺企業との協働で給与増加を乗り越えることができます。
また、たとえ乗り越えられないとしても、相対的な高インフレは円安につながりますから、国際競争力は通貨的な条件で回復します。
>そしてグローバル資本主義と世界的共産主義の破綻で世界的な労働運動はほぼ死滅し、
>しかも国内規制では海外への影響が及ばない現在、社員に配分した給与は
>自社の製品購入に結びつく利益よりも、外部(主に海外)に吸収され還元されないの
>ではないか?」
どういう層の給与を引き上げるかによりますが、低中所得者を中心にした給与引き上げであれば、海外に吸収される割合は極端に低いと思います。
自社の製品購入は、産業連関的な波及効果で、社員が直接自社製品を購入することを想定しているわけではありません。
「デフレ不況」でも黒字を計上している企業は、国内での商品訴求力も強いのですから、産業連関的な波及効果をより多く享受できます。
>結局、労働生産性(つまり利益)の上昇が無い労働分配率のみの上昇は私企業として
>は非合理的な選択(囚人のジレンマゲームのようなもの)に思えます。やはり
>技術開発等への投資による生産性向上を計った上で行うことが肝要ではないでしょうか?
技術開発や設備への投資意欲も削いでしまうのが、「デフレ不況」です。
技術開発等への投資による生産性向上を計るためには、まず「デフレ不況」を解消しなければなりません。
需要が年々減少し、債務負担が年々高まっていくのに、生産性向上を図る意欲が高まるとはとうてい思えません。
財政が身動きできない状況では、通貨ベースでの供給増加なくして、需要の増加やデフレの解消はできません。
>欧州的なワークシェアリングも生産性を低下させ、産業を衰退させるだけであり、やはり
>膨大な失業者を発生させ、賃金低下によって新規産業創出を計るのが必要かと。
>失業給付もデフレによる価格低下が、これまで以上の生活水準を可能にします。
賃金低下によって得られる経済メリットと失業給付の増加で生じる経済デメリットを比べれば、イーブンになるかも知れませんが、以前に書いたように失業者増加がもたらす社会的デメリットは大きく、国際競争力も劣化させていくことになります。
新規産業創出ができれば、失業者は増加しませんが、携帯電話事業が頂点を超えた今、短期での新規産業の大きな芽は見あたりません。
>高所得者への課税強化と低所得者への課税軽減は同感です。それだけでなく、
>過去のバブルやこれまでの膨大な公共投資で潤い、現在も海外からの資本収入によって
>利益を得ている富裕層への資産課税も必要では無いかと思っています。
>仮に調整インフレを起こしても富裕層の国外への資産逃避が増加するだけであるので、
>一時的な累進課税を通して低所得者や増大した失業者へ、競争力の低下や空洞化の進
>展を伴わない形で富をきちんと再配分することでしょう。
資産課税は、一時的な税収増加策としては認めておりますが、持続的なものではないのであまり触れていません。
>黒字企業(競争産業)のみへの負担増は、上記の理由でお勧めできません。逆に
>外形標準課税等により不当に公共サービス(税)を貪っている非採算企業を淘汰(不
>良債券解消)し、資金と人的資源を有効配分するべきではないでしょうか?
黒字企業のみに負担を求めるわけではありませんが、「デフレ不況」と価格支配力で“不当な”取引を中小企業に押し付けているという産業二重構造のなかで、どこが非採算企業なのかを即断することはできないと考えています。
過剰な店舗展開をした流通や公共投資の減少が続く建設業の淘汰は必要だと思っていますが、その他の産業については、「デフレ不況」を脱却した後に判断しなければ、それこそ、日本経済の将来はなくなります。
優良企業は、商売が巧いことは認めますが、技術や生産に関しては周辺中小企業に支えられながらここまでやってきたのです。
高度成長期のように、拡大する産業や新規産業が期待できる状況であれば、資金と人的資源を有効配分することが可能ですが、現状では、資金の多くが使われないまま余剰通貨となり、人的資源は失業することになります。
>デフレ不況は国内産業の再構築を債権国に要求するものであり、累進課税や資産課税
>によって低所得者/失業者の生活(需要)を維持すれば無用な混乱も抑制できます。
>これはデフレだからこそ可能なことです。途上国では憧れ!であるマックのハンバー
>ガーを毎日食べ、ユニクロで洋服を買っても、今の生活保護手当てで十分です。そし
>て改革により安くて高品質な住宅供給を可能にすれば失業しても死ぬほど働く中国の
>中産階級以上の生活が保障されます(中国人が知れば怒るかもしれませんが、これは
>かっての好況期の日本の兎小屋生活と不況欧州の豊かな生活の違いのようなものでしょう)。
このような政策は、一時的には可能であっても、日本の経済活動力を削ぐものですから、まもなくそのような政策を維持できなくなります。
遅れて先進国に到達した日本は、根っこのある部分は欧州諸国よりも貧弱です。
>同時に抜本的な政府支出の減少(つまり無駄な公共投資削減による非効率な公的経済
>の縮小と、民間への明け渡し)による行財政改革の加速と、一方での科学技術投資や
>新規産業創造優遇策が必要不可決と見ます。
公共投資削減を行っても、上記社会政策による支出増で政府支出は減るとは思えません。
科学技術投資や新規産業創造優遇策は必要不可欠だと思いますが、それは、現状の産業の活動力を支えに行うべきものです。
現状の産業活動力をダメにするような政策を採れば、科学技術投資や新規産業創造優遇策を採っても、それが実を結ぶ前に沈没してしまいます。
>国内に改革者が現れなければ、競争力のある産業から、どんどん外資に買収されて行
>き、再植民地化によるGHQ的改革(冷酷なスクラップ&ビルド)を待たねばなりませ
>んが、それはIMFとアルゼンチンの関係を見れば明らかなように、食料自給もままな
>らないのに飽食を貪って来た国民にとっては過酷な道となりましょう。
>(それもまた長期的に見ればかっての敗戦と同様、日本の再生に必要な死なのかもし
>れませんが)。
戦後とは世界経済構造が異なりますから、再植民地化によるGHQ的改革は、利益が国外に流出し、さらなる「デフレ不況」を招くだけです。
>利益は従業員に払ってしまえば消えてしまいますが、海外への新規移転投資や、新規
>の研究開発投資、同業他社の買収などに使えますし、将来的な産業構造の変化に伴
>う、新規分野への投資や買収のための予備費としても分散投資しておくのが有利では
>ないでしょうか?またトヨタ銀行やホンダ銀行などを作って、信用力を利用して儲け
>るという手にも使えます(あまりお勧めできませんが)。
従業員の給与を増加しても消えてしまうものでないことは、高度成長期の賃上げと経済成長の相関性から自明のことです。
先ほどの書きましたが、投資先があるのなら、どんどん投資してもらえばいいと思っています。
>最近の株価の下落の要因も、今後の米国経済の失速を予感した世界(特に欧州)の金
>融資本が、リスク資産の見直しによって株から移動しているのが主因と見ています。
>そのときに最も影響を受けるのが、今後持ち合い解消圧力などを抱え、米国依存度の
>高い日本株であったのではないでしょうか?
>そうした大きな潮流自体は政策当局の努力によって左右できるものではないでしょう。
>そうした状況で、将来的な増税を前提とする既存産業への景気対策など、ほとんど無
>意味であり、非採算企業の温存を意味すると見なされて、将来的な売り圧力になるだ
>けでしょう。
>(勿論、個人的には徹底的な規制緩和と税制簡素化等も活性化にとって不可決だとは
>思います。)
米国経済も、発展途上国のように、ゴム風船のごとく破裂することはありません。
ですから、米国経済の縮小をきちんと予測しながら、供給拡大による内需拡大の政策を実施しなければならないし、できます。
家電製品を中心に日本製品なしでは先進諸国の現代的生活ができない状況になっていますから、愚かな製造拠点の海外移転を行わなければ、貿易収支黒字も維持できます。
言っても詮無いことですが、「株式バブル」を起こせる国は日本しかないのです。
政府及び大企業が合理的な政策を採れば、何とかして通貨的“富”を増やしたいと思っている外国投資家の資金を日本に集めることもできます。
「将来的な増税を前提とする既存産業への景気対策」は無意味です。
減税しても税の増収がはかれる、とりわけ、名目での税の増収は実現しやすいことを財務省はきちんと考えるべきです。
「デフレ不況」が続く限り、増税しても税は減収になります。
>日本経済の失速は構造的なものなので、プライマリーバランスの改善無しで日銀引き
>受け等インフレ策を行っても、国債残高の発散と円資産の海外への逃避を招いて国内
>金融資産の劣化(膨大な国富の喪失)を招き、多少の需要の創造効果も、巨大な資産
>格差の発生(年金生活者や低所得者層の実質購買力の激減)と、低生産性企業の温存
>で長期的にはマイナスでしょう。
日本経済の失速は構造的なものではなく、政策の誤りにあります。
経常収支黒字が10兆円ほどある国民経済が、失速するはずもありません。“純粋な利潤”である10兆円を資本活動に活かしていないから、「デフレ不況」になっています。
「デフレ不況」のままプライマリーバランスの改善をめざしても、歳入が減少していくので、歳出減少とのイタチゴッコになるだけです。
国民経済の力は、金融資産にあるわけではなく、資本活動力にあります。
極端に言えば、金融資産が全部外国に流出しても、資本活動力さえあれば、政策によって豊かな生活は実現できます。
日銀引き受けによる赤字財政支出の拡大には反対です。
それも、結局は、税収の増加によって返済されなければならないものであり、制御を失ってハイパーインフレを招くことになりかねないからです。
>また仮に100%構造改革が成功したとしても、今後暫くのさらなる日本経済の失
>速、失業や倒産の増加は、国内政策のみでは避けられないものでしょうし、最終的に
>は構造改革によって、まだ暫くは続きそうな世界的な生産過剰状況(デフレ不況)を
>乗り切り、日本経済が再生していくことは可能だとは思いますが、そのための苦痛に
>国民が耐えられずに、政治的弱者である競争産業への負担強化と非採算産業の温存に
>よって、最終的にアルゼンチン化する確率は高いと現状では見ています(残念なが
>ら。。)。
日本のアルゼンチン化はありません。
「まだ暫くは続きそうな世界的な生産過剰状況(デフレ不況)を乗り切り、日本経済が再生していくことは可能」ではありません。
1929年から始まった「大恐慌」は、第二世界大戦を通じて世界経済構造を大きく変えることで解消されましたが、今時の「世界デフレ不況」にはそのような改編余地がありません。
現在の経済価値観が続く限り、「世界的な生産過剰状況(デフレ不況)」は、規模を縮小しながら“永遠に”続くことになります。
そして、耐えられない国民の苦痛がハイパーインフレを招く政策変更をもたらすことで一時的に解消されますが、やがて再び「世界的な生産過剰状況(デフレ不況)」に陥ります。
「構造改革」は、「デフレ不況」を悪化させるだけで、低位均衡さえも実現できません。
ただ、さらなる縮小を促進するだけの政策です。