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来春のペイオフ全面解禁に対する金融庁の見直し策に、東京三菱銀行が反旗を翻した。金融庁が、決済保護目的の新型預金導入を義務化はしないものの金融機関に“強要”する考えを打ち出すなか、高木祥吉長官の面前で、東京三菱の岸暁相談役が3日、金融庁の姿勢を「かなり違和感がある」と痛烈に批判した。金融機関で最も健全な東京三菱の実力者で、金融界のご意見番の大胆発言だけに、迷走するペイオフを巡る議論に大きな影響を与えるのは必至だ。
岸氏が高木長官に厳しい刃を突きつけたのは、3日に都内で開かれた金融シンポジウム。高木長官がペイオフ解禁と決済機能保護に関して講演した後に行われた質疑応答でのことだった。
岸相談役はまず、新型預金導入を「強く希望する」と“強要”する方針を決めた金融審議会の作業部会について「学者ばかりで現場の分かる実務者がいない」と批判。
その上で、「(新型預金を)現場でお客様が納得するまで説明するのは銀行にとって天文学的な負担になる」と現実の苦悩をアピール。
来年4月までの短期間で、「十分安全に稼動するシステムが開発できるかどうか自信が持てない」とも付け加えた。
さらに返す刀で、金融庁が新型預金導入を強制するならば、「金融行政は護送船団方式に逆戻りすることになり、かなり違和感がある」とバッサリ切り捨てた。
経済オンチ小泉首相の“思い付き”から誕生した決済保護目的の新型預金に関し、金融庁は導入銀行と導入しない銀行に分かれた場合、導入組が「財務体質が弱い」とみられて資金が流出することを恐れている。
だが、実際の現場では、三井住友銀行がいち早く導入の方針を打ち出すなど、4大メガバンク間でも足並みが乱れそうで、システム導入を巡る負担も大きいため、地銀や信金、信組などでは、金融庁の“強要”に悲鳴を挙げるところもある。
岸相談役は、あくまで「個人的な意見」と前置きしながらも、そうした現状も踏まえて「資金シフトがもっと大きなマグニチュードで起きた場合には、(ペイオフ全面解禁を)全面的に延期するしかない」とも発言。
もし今後、「金融界のトップランナー」の東京三菱が金融庁に反旗を翻す行動を実践したとすれば、ペイオフの見直し策は事実上機能しなくなる可能性もあり、ペイオフ問題はより一段と混迷の度合いを深めそうだ。