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会計不信問題クリアー後の米株式は・・・世界経済は間違いなくリセッションへと突入世界金融市場は資金がジャブジャブになる
<東短リサーチ>橘田リポート NAA 7433 : 2002/09/02 月曜日 18:38
内外政治経済・短期金融市場の動向 橘田週間リポート 9月2日号
●会計不信問題クリアー後の米株式は、景気動向とハイテク企業の収益問題に的を移し
てきたので、再び下落の可能性が高まってきた。世界のマネーは米国のデフレ先取りを
始めている●
米国の株式市場は、決算の正確性を保証する宣誓書の提出期限が大きな問題もなく無
事過ぎたことから、会計不信問題は一応クリアーしたとして回復の気配がみられてきた
が、先週前半に発表された消費者信頼感指数が予想以上に悪化したことなどを受けて、
個人消費の先行きへの懸念が再び強まってきた。それに加えてハイテク企業収益への懸
念も再燃したことで、IT投資に本格的な回復の兆しが出てこないのではないかとの疑
念が意識され始め、NYダウ平均株価、ナスダック総合指数共に再び低下し始めた。先
週一週間でNYダウ平均株価は2.4 %、ナスダック総合指数は4.8 %、それぞれ下落し
た。今週の米株式市場は、先週に引き続いて景気や企業収益の動向をにらみながらの展
開が予想されるが、昨年9月11日に起きた米同時テロの一周年が近づいていることが心
理的重しとなって、手控えムードが高まっていくものと考えられる。8月半ばに会計不
信問題を一応クリアーした米株式市場の関心は、景気動向の行方とハイテク企業の収益
問題に的が移ってきたようである。米株式市場の動きを見ると、まさしくそうした流れ
を示し始めていると言えよう。
先週は、4~6月期の実質GDP改定値、6月の貿易収支、8月の消費者信頼感指数
などの指標が発表された。まず、4~6月期の実質GDP改定値であるが、1~3月期
に比べ年率換算で1.1 %増となり、先月発表された速報値と同じであった。個人消費の
伸び悩みと貿易赤字拡大の影響で、年率5.0%プラスであった1~3月期よりも成長が
大きく鈍化した。4~6月期のGDP改定値を需要項目別にみると,GDPの約7割を
占めると言われる個人消費は速報値と同じ前期比1.9 %増であった。しかし、個人の住
宅投資は同2.3 %増にとどまり,速報値の5.0%増よりさらに鈍化している。住宅投資
については,1~3月期の14.2%増と比べると伸びのスピードは大きく鈍化しているこ
とがはっきりしてきた。4~6月期の成長率鈍化のもう一つの大きな要因である貿易赤
字は、輸出が前期比12.3%増にとどまったのに対し、輸入が同22.8%と大幅増になった
影響を受けた動きとなっている。1~3月期GDPの大きな押し上げ要因となった在庫
の積み増し額は速報値より増えたものの、政府支出は同時テロ後の昨年10~12月、また
今年1~3月期に比べGDPへの寄与度は大きく低下してきている。この結果、4~6
月期GDP改定値は速報値とは変わらなかったものの、内容的には個人消費の伸び悩み
と貿易赤字拡大の影響を示すものとなり、先行きの景気回復に懸念を表すものとなった
。さらに、先週は米コンファレンスボードが8月の消費者信頼感指数を発表した。それ
によると、前月比3.9 ポイント低下し93.5と昨年11月以来の低水準となった。消費者の
購買意欲を示す同指数は3ヵ月連続で低下したことになる。株式市場では、一部に相場
は底入れしたとの期待感も膨らんだが、どうやら消費者心理の悪化には先行きも歯止め
がかからないのではないかとの悲観的な見方が広がって、再び低下し始めている。また
、同指数の今後6ヵ月の見通しでは、先行きの景況観は定まっていないと分析している
。消費者信頼感指数が9ヵ月ぶりの低水準になったことが示すように、このところ米小
売業の販売は急速に伸び悩んでいる。主要各社を対象にしたチェーンストア売上高指数
は、3週連続で前週実績を割り込んでいる。これは、残暑で秋物衣料が不振な上、株安
によって消費拡大を阻む逆風をもろに受けた格好である。9月の気温も平年を上回る見
通しのようなので、足元の消費は弱含んでいく可能性が高いとの見方が多い。さらに、
昨年の同時テロから1年を迎えるために、消費者が消費を手控えると売り上げが落ち込
む可能性は高くなるとの見方も強い。米GDP成長率鈍化の大きな要因となった今年1
~6月期の貿易収支が発表されたが、それによると前年同期比8.1 %増の2,060 億ドル
強の赤字となり、現行の調査方式となった92年以降上半期としては過去最大を更新した
。上半期の貿易赤字が膨らんだ原因は、輸出が前年同期比8.9 %減と不振だったのに対
し、輸入は内需回復を反映して4.3 %減にとどまったことである。また、6月単月の貿
易収支も発表されたが、赤字は前月比1.8 %減の371 億ドル強で3ヵ月ぶりに減少して
いる。6月の貿易赤字は3ヵ月ぶりに減少したが、単月では5月に次いで過去2番目の
高水準であるため、GDP成長率鈍化の大きな要因であることには間違いない。
また、米国株式の下落は株式投資からの資金流出が月を追うごとに拡大していること
も影響している。米調査会社リッパーの発表によれば、7月中株式投資信託から月間ベ
ースでは過去最大となる490 億ドル(円換算で5兆8,400 億円)の資金が純流出した模
様である。これまでの月間最大資金流出額は、米同時テロが発生した昨年9月に記録し
た300 億ドルであった。米国では、6月にも株式投信から180 億ドル(2兆1,600 億円
)の資金が純流出となっているので、6~7月の2ヵ月間で670 億ドル(円換算で8兆
円)の莫大な金額となっただけに、株式の下落幅が大きいのも仕方ないであろう。7月
の米株式市場が下げ足を速めたために、個人投資家による株式投信の解約が膨らんでい
る。個人投資家は、投信を解約した資金を何に投資したかというと、短期の公社債で運
用している。その結果、7月には相対的に投資リスクが低いとされるマネー・マーケッ
ト・ファンドに310 億ドルの資金が流入するなど、株式から債券への資金シフトが鮮明
になってきている。またこのところイラク攻撃の現実化が近いとの見方から、サウジな
どの石油資本の米国からの資金流出額が急拡大している。これが先行きの米株式下落の
大きな要因になるとの指摘もされている。特に、サウジ資金の流出が急ピッチとなって
いるだけに、今後の米株式の行方には強い関心が寄せられるところである。米金融市場
に占めるサウジの石油資本の割合が大きいだけに、もしイラク戦が実施されると市場資
金の縮小化は避けられず、米企業金融に大きなひずみを残すことになろう。
すでに、米国発のデフレを織り込む形で世界のマネーの流れは、米国の変調を先取り
するかのように国債に向かっている。この結果、日欧各国とも長期金利が歴史的な水準
に低下している。先週、米国の10年物国債金利は4.1%台、ドイツは4.5%台、日本は1.1
%台に低下した。米国では今後4%まで低下するとの見方がでてきている。世界のマネ
ーは、景気の先行きに不透明感が強まってきているのに加えて、物価が持続的に下落す
るデフレへの懸念を先取りする形で行動を起こしていると言える。投資家は株式とか、
社債への投資を敬遠して国債へのシフトを強めている。すでに各国とも銀行の貸し渋り
現象が発生するなど、企業金融へのひずみが懸念され始めてきている。デフレ経済の到
来が、世界マネーにも着々と浸透し始めていると言えよう。
●FRB議長は米国経済がデフレに陥る可能性を示唆し始めた。9月12日の下院での議
会証言が米金融政策の大きな転機になる可能性もでてきた●
FRB議長のグリーンスパン氏は、カンザスシティー連銀が主催した世界の中央銀行
幹部やエコノミストを集めたシンポジウムで講演し、そのほとんどの時間をバブル論に
費やした。過去、FRB議長は米国経済がバブル崩壊状態にあることは余り発言しなか
ったが、今回はすでに米国経済がバブル崩壊過程にあることを認めて、「バブルは崩壊
して初めて存在を確認するものである」と述べた上で、「バブルの発生に中央銀行は無
力である」との認識を示した。97年12月、米株式市場でダウ平均株価が6,000 ドル台に
のせた時点でFRB議長は株式の状況について「根拠なき熱狂である」と戒めたものの
、その後はニューエコノミー論を容認してしまった。今回の講演でFRB議長がそのほ
とんどの時間をバブル論に費やしたのは、議長自身が米国経済はすでにバブル崩壊過程
に入り、景気回復の足取りがおぼつかない中で、欧米の株価急落が景気の二番底を招く
のではないのかという不安を持ったことや、株高という心地よい要素が失われてしまっ
たことから消費者の信頼感が悪化し、ここ数カ月にわたってわずかな回復を示してきた
米経済が深刻な景気後退局面に陥ってしまうのではないかという懸念を持ち始めたから
にほかならない。
現在の米国経済は、初めてバブル崩壊後の景気パターンを経験している。その結果わ
かってきたことが二つばかり考えられる。第一点は、米国のバブル後の景気は一般的に
考えられていたよりはるかに後退の傾向が強いという点である。米国では今回の景気後
退局面は2001年7~9月期だけと思われていたが、実は2001年1~3月期から7~9月
期までの3・四半期続いていたという点である。そして、第二点はバブル後の景気回復
は日本同様に腰折れリスクを抱えたものになりつつあるという点である。今年、4~6
月期のGDP成長率は1.1 %と停滞状態寸前まで失速し、米経済はリセッションに逆戻
りして二番底をつけていく瀬戸際に来ていると言える。米供給管理協会(ISM)の景
気指数や労働市場、サービス部門の最近の指標は、既に二番底が間近に迫っている可能
性を示唆している。これは、バブル後の景気にとって最も重大なリスクであるデフレ危
機の可能性が訪れているということである。デフレは既に米国経済のほとんどの部門で
頭を持ち上げている。過去にバブル後の景気が辿った典型的な過程とそっくりである。
資産バブルがはじけたことで、価格破壊はしばらく続きそうである。米国では、19世紀
に鉄道投資が過大となって金融バブルが発生した経緯があるが、このバブルを想起させ
るようなほとんど今までに例のないハイテクブームが経済を大きくゆがめてしまった。
何らかの時点でこれを是正する必要があった。これが現状のデフレ現象である。ITへ
の投資は、2000年にGDPの6.4 %でピークに達した。現在のIT部門の苦境がこれを
裏付けている。このところの消費者信頼感指数の3ヵ月連続の悪化は、厄介で避けられ
ない再調整過程を反映して株価が下落しているのだと消費者がようやく理解しつつある
ことを意味するものである。米国や日欧の経済は、投資ブームの過ちが明らかになれば
いわゆる19世紀型の景気後退に直面する可能性がある。現在の景気サイクルには近年の
それとの共通点はほとんどなく、あるとすれば金融市場の投機バブルが引き起こした戦
前の好不況の波に似ていると言える。この時点の景気サイクルでは、景気の後退局面は
平均21ヵ月と長期間となっている。もし、米国政府がデフレ対応策を誤るとバブル崩壊
の影響が長期化し、リセッションに陥る可能性が強い。
ここで重要なのは、FRBによる慎重な利下げによって二番底の深化を抑えることが
できるのかどうかという点である。FRBは政策金利をすでに1.75%まで引き下げてお
り、実質金利はすでにゼロ%となっていることから、さらなる利下げ余地は限られてい
るということである。金利という弾薬をほとんど使い尽くしてしまった状況である。F
RB議長は1930年代初めに恐慌を招いた過ちを記憶にとどめているので、必要な措置は
すべてとるであろう。最近、FRBは90年代の日本の経験から学ぼうとしている。FR
Bは、リセッションに陥らないために残されたあらゆる手段をとるものとみている。ま
だFRBが使用していない手段は、通貨量の大幅な拡大政策である。インフレは歴史的
な低水準にあることから、恐らく二番底が長期的な恐慌にならないことを確実にするた
め、FRBがマネーサプライを増やすことは十分考えられる。このところ財政悪化を背
景として、国債発行額はピークに達している。米政府は国債の消化を確実なものにし、
通貨の供給量を拡大していくためにも国債買切りオペを導入していくことになろう。第
二次世界大戦が、米国の30年代の大恐慌からの脱出を促進させたのと同様、対テロ戦争
は米経済が深刻な景気後退に陥らないことを確実にする可能性は高い。戦費の増大は財
政赤字を拡大させることにはなるが、FRBが国債増発分を買切りオペを実施すること
により、通貨供給量は間違いなく拡大していく。財政赤字と通貨量拡大の組み合わせは
、景気後退が深刻化したり長期化しないことを確実にしていくであろう。対テロ戦を意
識したイラク戦は、格好の景気回復手段といえよう。イラク戦は米国経済をみていく上
で避けて通れない過程となりそうである。9月12日のFRB議長の下院での議会証言が
、米金融政策の大転換を示すものになるかもしれない。
●このままの状態が続くと世界経済は間違いなくリセッションへと突入する。米国の通
貨拡大政策に合わせて日本、欧州でも同じ政策をとる。来年に向けて世界金融市場は資
金がジャブジャブになる●
米国で異色の景気予測をして有名なアナリストが、日米の株価動向の先行きについて
、「10月末までにNYダウ平均株価は6,000 ドル台割れ、日経平均株価は先般の安値9,
383 円を下回って9,000 円そこそこまで下がる。この下落を誘導するのは米国株より日
本株であり、9月半ば頃までが要注意である」とのレポートを出して話題となっている
。日本経済の先行きに関しては、つい先頃まで過度の楽観論が支配的であったが、ここ
へきて風向きは変わり始めてきたようである。依然としてマスコミの一部には楽観的な
政府の観測が幅を利かせている。しかし、今回のGDPの推計方式変更により1~3月
期の数字が大きく低下したように、日本で期待された景気回復は幻想にすぎなかったこ
とが明確になりつつある。今年1~3月期のGDPは従来方式では前期比1.6 %増であ
ったが、新方式では0.5 %増に下方修正された。金融庁の発表によると、不良債権は再
び記録的な水準に上昇している。シナリオ通りの改善はおろか、2001年度の不良債権は
20%増えGDPの10%を超える52兆4,000 億円に達した。デフレは依然として続いてお
り、円の上昇と世界的なインフレ圧力の低下により景気は一段と悪化する公算が大きい
。日本の民間シンクタンクである第一生命経済研究所から「内閣府が発表する景気動向
指数は景気の現状を過大評価している」という指摘が出たが、全くその通りであると思
う。確かに予測は難しいものであり、なかなか当たるものではない。しかし、政府は予
測が誤る可能性を素直に認めるべきである。日本ではこれまで何度も見通しが外れたこ
とは経験済みである。
先般発表された4~6月期のGDPは5・四半期ぶりにプラス成長を示したが、景気
の足取りは重く、デフレと過剰債務が企業活動の足を引っ張り、米景気の先行き不透明
感から輸出頼みにも限界がある。不安定な株式相場は、9月末前後に金融システム不安
を演ずる可能性もある。4~6月期のGDPの内容を見ると、消費は横ばい圏内にある
が、先行きには下落の懸念がある。また、設備投資には火のつかない状況にあり、輸出
・生産にも陰りがててきている。特に、鉱工業生産は2ヵ月連続で減少しており、これ
が先行きの景気後退懸念を強く助長している。また輸出についても、中国への機械輸出
面でその数値が大きなGDP拡大の要因として報道されたが、その内容は輸出の相当部
分が中古機械であるといわれる。これは、昨年半ば以降中国の新工場に日本の工場設備
を移す企業が一気に増えたことにより、それが輸出として統計にカウントされているに
すぎないものである。日本の企業の空洞化によるもので、この機械輸出が増えれば増え
ただけ自分で自分の首を締める結果になるという輸出である。日本経済の楽観論には
、こうした虚実が数多く含まれている。消費者物価は8月も0.9 %下落して、下落は2
年11ヵ月連続となり、依然デフレ現象は解消しない状況である。
現状では経済成長を促す政策がとられたとしても、インフレを引き起こす可能性はな
い。政府・日銀は何らかの行動を起こす必要がでてきている。短期間にマネーサプライ
の大幅な増加を図って、景気を刺激することが必要になってきた。日銀は9月の政策委
員会・金融政策決定会合で具体的な何か行動を起こさなければならなくなるであろう。
世界経済のデフレ現象に歯止めをかけるためには、米FRBも通貨供給量の拡大しかな
いと考えており、9月以降行動を起こしそうだ。日欧金融当局もこれに追随することに
なろう。世界金融は、大量の通貨供給時代を経ないことにはデフレ経済に歯止めをかけ
られないであろう。今年後半から来年に向けて、世界の金融市場はカネ余り現象が強ま
り、資金がジャブジャブの時代が到来するのではなかろうか。これによって、米国では
自動車の需要がさらに拡大し、住宅の売れ行きは一段と拡大していこう。そして、世界
各国の国債は一段と買われて、超低金利時代は世界的な流れになろう。その結果、景気
後退は回避される。こうして、米国経済に回復の兆しがでてくれば、マネーは株へと再
び戻ってくることになろう。そして、景気の後退を支えてきた米国の住宅バブルと世界
的な国債バブルが2~3年後に弾けて、物価は上昇し、デフレ経済にようやく歯止めが
かかるというシナリオを考えているが、いかがであろうか。
(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次 記 )
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