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▼不況の真相/構造改革だけでは経済停滞からの脱出は不可能
BNPパリバ証券会社・経済調査部チ−フ・エコノミストの河野龍太郎さんは、「構造改革だけでは停滞からの脱出は不可能」と語る。従来から主張しているように、現在の日本経済の停滞は、デフレによる総需要低迷の問題によるところが大きいとして、こう続ける。「わずか1〜2%のデフレがもたらす実質債務の増大(実質金利の高止まり)が設備投資を抑制し、実質賃金の上昇が企業の採用を妨げる」。つまり、デフレが総需要を抑制するのであり、この結果、成長産業の出現が妨げられ、衰退産業から排出される雇用は失業となっる。「潜在成長率を下回る成長が続いていることが問題だ」と指摘する。
<衰退産業の存在そのものは、構造問題ではない> 河野さんも、構造改革の必要性に関しては異論はない。しかし、こうした問題は90年代に入って突然に出現した問題ではない。「経済構造は常に変化してきたのであり、どの時代にも低生産性部門の問題は存在する。経済構造の変化に伴って、新しい成長産業(比較優位産業)が生まれると同時に、衰退産業(比較劣位産業)も生まれる」。景気低迷期に、衰退産業の問題がクローズアップされ、それが不況の原因のように映るの は、不況期に成長産業の成長が抑制されるためである。好況期には、衰退産業から 排出される雇用は、成長産業によって吸収されるため、大きな問題にならない。「衰退産業の存在そのものは構造問題ではなく、好況期に解決される問題」と言う。
<低成長が継続することが最も深刻な問題だ> 最も深刻な問題は、「現在のように低成長が継続することである」。景気拡大局面に可能であった衰退産業から排出された雇用の吸収が困難になる。さらに、低成長の結果によって問題が深刻化するケースが増えている。たとえば、財政赤字問題、不良債権問題、年金問題など、「低成長継続によって多くの制度が行き詰まりを見せているのは、制度設計の問題以上に、低成長が継続していることが大きい」。しかし多くの人々には、制度の行き詰まりは構造的なものであり、それが低成長を引き起こしている、と映る。
▼4-6月GDP/デフレ下で、年率1%程度の緩慢な成長が持続
新たな推計方法による4-6月のGDP成長率は、前期比+0.5%(年率+1.9%)とプラス に転じた。1-3月は、従来の前期比+1.4%の極めて高い成長から大きく下 方修正され、前期比横這い(前期比マイナス0.0%)まで下方修正された。BNPパリバ証券会社・経済調査部チ−フ・エコノミストの河野龍太郎さんは、「 1-3月と 4-6月をならしてみれば、年率1%程度の緩慢な成長が続いており、ほぼ予測通りの 結果となった」と語る。同社は、1-3月が前期比+0.2%、4-6月も前期比+0.2%と極めて緩慢 な成長を予測していた。
<本来的な意味では到底景気回復と呼べない> 1-3月は内需の減少が続いたが、輸出回復が始まったことで相殺され、成長率はゼロ と01年4-6月以降のマイナス成長にようやく終止符をうった。4-6月も輸出の高い伸 びが続いたが、加えて設備投資の落込みが和らいだ(1−3月前期比マイナス2.0% →4-6月前期比マイナス0.5%)こともあり、内需もプラスに転じ、全体の成長率もプ ラスに転じた。マイナス成長が回避されたという意味では「景気回復」と呼ぶことができる。しか し、本来、景気回復とは潜在成長率を上回り需給ギャップが縮小する局面を示す。 日本の潜在成長率は1.5-2.5%と推定され、年前半の成長率はこれを下回った。したがって、「本来 的な意味では到底景気回復と呼べない」。同様に、年後半もわずかながらもプラス成長が続くとみられるが、「潜在成長率を上回る成長は期待できない」と見る。「デフレが続く限 りこうした状況から脱するのは難しい」として、こう続ける。「わずか1〜2%のデフレが内需の回復を大 きく阻害していることを政府は認識すべきである」
<デフレ下では、簡単なショックで不況に陥る> 今回のGDP統計を受け、来週中にも新しいGDP見通しを発表する予定だが、今のところ次のような展開を予想している。 今後、雇用者所得の低迷が続く中で、最終消費も横這いが続く一方で、輸出企業の 業績改善を背景に設備投資が持ち直すと予想される。この結果、「国内需要は極めて 緩慢ながらもプラス成長が続く見込み」である。一方、年前半の輸出の極めて高い伸 び(1−3月前期比+4.8%、4-6月前期比+5.8%)は持続不可能で、「今後輸出の伸び の鈍化は避けられない」と言う。この結果、「年前半に続き02年後半も極めて緩慢な成長が続 くと予想される」。 我々の予想の前提には、アメリカ経済が緩やかながらも改善が続くとの見通しがあ る(02年2.5%、03年2.8%)。仮にアメリカの成長率が2%を下回るようなことが あれば、日本のマイナス成長は避けられない。「デフレ下では簡単なショックで不況 に陥る」と警鐘を鳴らす。
<02年度は在庫積増しの影響で成長率押し上げの可能性> なお、01年度の成長率はマイナス1.9%と従来のマイナス1.3%から大きく下方修正 された。これは、在庫の推計方法の変更に伴い在庫変動の影響が速報ベースのGDPに 大きく反映されるようになったためだが、その数字はかなり大きい。単に推計方法 が変更されただけでなく、「01年度は通常以上の在庫の減少が生じたためである」。01年度の在庫の寄与度は従来のマイナス0.1%ポイントから新統計ではマイナス0.8% ポイントに拡大した。01年度の成長率の下方修正はほとんど在庫の下方修正で説明 できる。このため、「02年度は在庫積み増しの影響で成長率が押し上げられる可能性がある」と言う。