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多重債権 破局へのわな 京都で相次ぐヤミ金融被害
法外な高金利で融資する「ヤミ金融」の被害者が、京都でも増加している。甘い融資話を持ち込んで多重債務に陥れるケースが目立つという。警察が出資法違反などで摘発に乗り出す一方で、被害経験者による自助グループが、安易にヤミ金融に手を出す被害者側の心の弱さを克服する活動を繰り広げ、人生の再スタートを支援している。
「いかがです。口座を教えていただければ、すぐご融資できますよ」。京都市内の主婦(47)に、電話の主がささやいた。住宅ローンなどで生活費がひっ迫し、一週間ほど前にヤミ金融業者から三万円を借りていた。翌日に迫った利息返済日を見透かしたような甘い融資話に飛び付いた。
利息を別の業者から借り、借入先は五十社近くに膨れ上がった。金利は一週間で五−六割。夫に内緒の借金。追い詰められ、自殺場所を探しに家を飛び出した。事情を知った夫は、無言電話の相手に「帰っておいで」と声を掛け続けた。主婦は三日目に戻り、家族が支え、自己破産した。
市内の男性(44)はこの春、自分の興した会社が不況で行き詰まった。過去に自己破産していたが、「仕事先が見つかれば返せる」とヤミ金融に手を出した。
結局、八十三社から計百二十万円を借りた。八十万円以上は利息返済のための借金だった。突然、新規融資が止まり、催促の電話が昼夜を問わず妻の実家までかかった。「スタンガンで体をむちゃくちゃにするぞ」。恐ろしさに体が震えた。
主婦や会社員は、ヤミ金融にもがくなかで「平安の会」(事務局・京都市中京区)を知った。多重債務者の救済を目的に五年前に発足した。被害経験者を中心に約二百二十人の会員がおり、専門家を交えた相談会で自己破産など問題の解決策を話し合っている。
会長(65)も自己破産した一人だ。「自己破産者は公共料金の支払いや友人への借金返済などで生活が苦しい。そんな時に甘い融資話が持ち掛けられる」と話す。
会によると、ヤミ金融業者は、自己破産者の名前が載る官報などで「狙い」を付けてダイレクトメールで勧誘し、業者間で債務者情報を共有して多重債務に陥れる。
会長は「被害に遭うたび、二度三度と相談に来る人もいる。人の弱みにつけ込む業者は悪質だが、被害者も自分の意思の弱さを知らなければならない」と強調する。
会への相談は、今年に入ってヤミ金融関係が消費者金融に代わりトップなったという。会員の門田直幸司法書士は「最近は暴力団ではない素人の業者が増えて小銭を稼いでる」と指摘する。ヤミ金融は法的に返済義務はないが、業者も違法を承知で貸し付けており、き然とした態度で臨む必要があるという。
「あの人、明るくなったでしょ。初めて相談に来た時、目はうつろで絶望的な表情だった」。家出した主婦の相談に乗った門田さんは振り返る。
ヤミ金融は被害者やその家族を崩壊させる。主婦は「家族が何より大事です。ようやく、これから先の人生に光が見えてきました」と話した。辛酸をなめた被害経験者の「二度と借りてはダメ」の声は何にもまして説得力があり、力強い。
(京都新聞)
[9月1日9時51分更新]