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(回答先: あえてあっしら氏の微温主義を撃つ 投稿者 匿名希望 日時 2002 年 8 月 30 日 17:51:53)
うまく投稿できなかった。下記が本文です。
あっしら氏は自らの立場を微温主義と称し、次のように説明しておられる。
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● 「微温主義」
避けがたい状況に陥れば別とすれば、共同体や国家は、価値観や制度を変更するにあたり、無用の分裂や戦いをする必要はないという考えです。
将来の壮大なイメージを持ちつつも、現実に対しては、継承的段階的に変更を行っていかなければならないというものです。
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氏の深い学識と真摯なる憂国の情と破綻を迎える心構えとには強い共感と敬意を覚えるのはこれまで所々で告白した通りである。しかし、その上でなお、氏の微温主義に疑義を呈し議論を交わす事は公共的に有意味と思われるので、敢えて問題提起するものである。氏のこれまでの数々の有益な教示を貶める意図によるものではないことは、元より明らかである。
氏の微温主義には次の3点で問題があると考える。
まず第一は、微温と称しながらも、その基本姿勢を指導者が共有するには思考の大転換を要するという点である。いわゆる改革推進路線と氏の唱えるデフレ脱却路線は少なくとも公式的には優劣の決着はついていない。それぞれの主張にはそれなりの理由があるし、相互の批判点もお互いが知悉している。精神状態が不自由な者でない限り、完全に破綻した論理を抱え続けることはできない。私のような確信犯的な改革論者ではなく、本当に改革が明日の日本を開くと信じて疑わない者は専門家にも多い。平たく言えば、「本当にデフレ・スパイラルなんて起こるのかね?」と思っているわけだ。
実際、改革の本格実施を好感し、日本経済の予想外のレジリエンスが発揮される将来像もあり得る(期待の自己実現)。96年頃、どう考えても説明のつかない高値と言われた米国の株高はその後も続き、ついにはかのグリーンスパンですらも99年頃自らの発したirrational exuberence(根拠なき熱狂)という言葉を撤回し、百年に一回のニューエコノミーが始まったかもしれないと誤断するに至った。米国人の心理を奈落に突き落とした昨年の911は確実に消費を冷やすと予想されたが、実際のその後の経緯はどうだったか。オイルショックの比較的軽微だった日本経済への影響も、逆に思ったよりも相当に深刻だったバブル崩壊の影響もあらかじめその程度を正確に予測することは至難の業だった。理論や思考に修正を迫ったのは常に「現実」である。リーゾニングだけで将来起こる「現実」に立ち向かう事には限界がある。あけすけに言えば、「将来は起こってみないと誰にも分からない」ということでもある(過去の蓄積を元に確率予想程度はできるが)。
こうした相互に対立する経済政策(思想)の拮抗状態にあって、政策転換を論理と説得の力によって進めて行こうとする考えには自ずと限界が生じる。あっしら氏は、ご自身にそれなりのステータスがないから自らの正しい論理が黙殺されるのだとの心情を吐露しておられるが、そうではない。東大教授が言おうと、財務官僚が言おうと、有力政治家が言おうと同じことである。この点をまずはっきりと認識する必要がある。
第二点目は、「微温的」なるがゆえに強制力に欠けたり、有効性に疑問符が付く政策群が列挙されている点である。一つ前の投稿で、氏の法人減税活用法はつづめて言えば所得減税とあまり変わらないこと、恒久的措置でない限り効果が限定的であることを説明した。また、もっと前の投稿ではこれらの政策群と小渕政権下で打たれた大型財政出動とを比較し、前者は後者ほどのインパクトをもたらさず、後者ですら有効でなかったのに前者が有効とは思われない事を示した。少々きつい言い方をすれば、微温的政策とは過去からのコンシステンシーを重視した弥縫策に過ぎず、抜本的な経済システムの見直しでも何でもないため、問題の根本解決からはほど遠いということである。
第三点目は最も重要な視点である。微温的政策が有効性に欠ける結果、その政策実施は、国民経済の土台の腐食を助長するもので、90年代の先延ばし政策と何ら選ぶところがないという点である。税制を例に取ろう。氏は可処分所得を増やすために減税が必要だとする。ここまで痛んだ財政事情だ。先の見通しが得られるなら少々の悪化は目をつぶっても良い。だが、将来のあるべき経済の姿へと繋がる筋道が明らかでない中、どうしてこの減税政策が経済の自律的成長軌道への復帰を確信させるものだと言えるだろう。減税効果がじきに消え、またぞろ追加減税や他の財政手当てが必要になるのは火を見るより明らかである。国家や地方財政の現状をほとんど全ての国民が認識し、将来に向けて抱えるさまざまな不安が存在する中、微温的政策は害あって益なしと言える。有効なのは抜本的なシステム改革のみである。
尚、氏の唱える中低所得者層への減税と高所得者層への増税は微温的政策の範疇にあるとは言えない。これは抜本的政策の一つに数えられるべきである。