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「金融庁は、新たな“銀行不倒神話”を復活させるつもりのようだ。金融庁が打ち出したこのプランが実現したならば、経営破たんに追い込まれる金融機関は実質的に皆無となるだろう。まさに、壮大なモラルハザードが金融業界を襲うことになるのは間違いない。さらには、金融庁の主導の下、不良債権処理問題など、すべての問題処理が先送りされる懸念が出てきた…」
大手都銀役員がこう言ってみせる。
昨日(8月29日)金融庁はオーバーバンキング状態にあるとされる地域金融機関(ここでは、地銀、第二地銀、信金、信組を指す)の合併・再編をスムーズに促進させていくことを目的とした諸施策を正式に発表した。
発表された施策はいくつかの項目にわたるが、注目すべきポイントは以下の2つだ。
(1)ペイオフの預金保護額を合併する金融機関の数にスライドする形で引き上げる(1金融機関につき1000万円引き上げ、合併後1−2年間の時限措置)。
(2)合併によって受け皿金融機関の自己資本比率が低下することを防ぐため公的資金を投入する(5年程度の時限措置)
そして金融庁サイドは、(2)の施策を実現するために新たに総額1兆円の公的資金枠を設けるとしている。
「この公的資金枠については、その予算措置が認められれば預金保険機構内に新たに設けられることになります。この“1兆円”については、政府保証によってワクが設定され、必要に応じて公金が投入されることになるのです」(金融庁幹部)
ところで問題なのは、この“新・1兆円ワク”の発動条件だ。
「金融庁としては、合併に際して当該金融機関の自己資本比率が低下した際に投入する公的資金については、その投入にあたっては、経営悪化を理由とした公的資金投入の場合と異なり、厳しい附帯条件を課すつもりはありません−−」(金融庁幹部)
ここで言う“厳しい附帯条件”とは、いったいどのようなものであろうか。
「たとえば、経営陣の経営責任を明確にする、あるいは、徹底的なリストラ策の策定とその厳格な履行を求める、といったことです」(金融庁幹部)
こうした説明を聞く限り、“新・1兆円ワク”の運用は、まさにユルユルの条件下で実行されることは明らかだろう。
「とはいっても、公的資金の投入にあたって厳しい条件を課してしまったならば、大部分の地域金融機関は合併に二の足を踏むことになるでしょう。そんな事態に陥ってしまったならば、何のために、税金を使ってまでワザワザ、こうした策を設けたのか、という批判すら出てきかねません」(金融庁幹部)
とはいえ、金融庁のもくろみ通りにコトが運んでしまったならば、よほどのことがない限り、問題金融機関のすべては経営破たんに追い込まれるよりも、“新・1兆円ワク”を使って合併を選択することになるのは明白だろう。
「そうなれば、ペイオフは事実上の凍結ということになってしまうのです。金融庁の狙いもその辺にあると考えていいのではないでしょうか…」(大手都銀役員)
来年4月に予定される“ペイオフ完全解禁”だが、この“新・1兆円ワク”の設定とともに、それは実質的に有名無実化してしまうことは間違いない。
まさに壮大なモラルハザードの出現と言うしかない。金融庁がひそかに推し進めようとしている「新・銀行不倒産神話」は、そうした危険性をはらんでいるということを忘れてはならないだろう。