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来年四月のペイオフ(預金の払戻保証額を元本一千万円とその利息に制限する措置)全面解禁の見直しに伴い、決済性預金の全額保護策を検討してきた金融審議会のプロジェクトチームは来月二日、最終報告書をまとめる。金融庁は金融審の結論に従い、普通預金については希望する預金者の金利をゼロにし、全額を保護する考えだ。だが、金融機関や与党からは「システム整備が間に合わない」「制度が分かりにくい」などの批判が噴き出している。解禁の再延期論さえ浮上しており、決着は秋の臨時国会にもつれこみそうだ。(経済部・池井戸聡)
●ウルトラE
「(わざわざ新型預金をつくらなくても)臨時金利調整法を使えば、普通預金の金利を簡単にゼロにできる」
十九日の金融審プロジェクトチーム会合。新型預金の導入について意見を求められた銀行界代表は、耳慣れない法律を持ち出した。
小切手などが使えるために、金融機関のコスト(経費)負担が重くなる当座預金の金利をゼロにしようと一九四七年に制定された同法。これを五十五年ぶりに金利ゼロの預金を誕生させる目的で使おうというのだ。
だが、希望しない人の普通預金の金利もゼロになり、預金者には到底受け入れられない。銀行側は実現性の低い「ウルトラE」(日銀幹部)をあえて引っぱり出し、新型預金開設の難しさを捨て身で訴えたわけだ。
金融機関が、新型預金の導入を渋る大きな理由は、システム整備を迫られること。新商品発売の際、金融機関は一年以上前から準備し、システムが停止する正月とゴールデンウイークに大規模なテストを行うのが一般的だが、新型預金の導入を来年四月に間に合わせるなら、テストは正月の「一発勝負」になる。
みずほフィナンシャルグループが大規模なシステム障害を起こしただけに、金融機関側は不安いっぱいだ。大手銀行幹部の一人は「金融庁はみずほに業務改善命令を出したのを忘れたのか。またトラブルが起きれば、今度は金融庁が業務改善命令を受ける番だ」と言い放つ。
●パニック
金融庁は税負担の軽減など、金融機関の合併促進策を検討中。だが、合併に伴うシステム統合に加え、新型預金でもシステム整備が必要となると、合併機運に水を差しかねない。「金融庁は右足でアクセルを踏み、左足でブレーキをかけている」との皮肉も聞こえてくる。
新型預金を金融機関が一斉に導入するとなれば、短期間でのシステム整備が必要。しかし「そもそもシステムエンジニアの数が足りない」との見方もある。電機会社の「お得意さま」は大手銀行。中小金融機関の整備が後回しされかねない。
新型預金の存在をどう周知するかも課題だ。日銀によると、今年三月末現在、一千万円以上の残高がある普通預金の銀行口座には、個人が三十四兆円ものお金を預けている。第一生命経済研究所の試算では、口座数は約二百二十万だ。
こうした人に、周知徹底されないまま金融機関が破たん、ペイオフとなれば「そんなこと知らなかった、という人が大勢出てくる」(自民党幹部)。そうなればパニックになる。
●悲鳴
二十七日の自民党総務会では「ペイオフは明快、安心が重要」(野中広務元幹事長)など、金融庁の方針への不満が続出。二十九日の同党デフレ対策特命委員会でも「ペイオフ延期の再確認が必要だ」(相沢英之委員長)など、ペイオフ解禁の延期を求める意見が相次いだ。
だが、ペイオフ解禁を延期すれば「小泉改革」は後退、国際的信用は失墜し、景気低迷がさらに長期化する恐れもある。
今後、議論の舞台は金融審から国会へと移るが、金融界からは「全く先が見えない。早く結論を出してほしい」との悲鳴ばかりが聞こえてくる。