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スト突入で球団破綻の最悪シナリオ
もし、8月30日にストライキが決行されてワールドシリーズが消滅したら、オーナー側が被る損害は5億ドル(600億円)。一方、選手の損害は1回分の給料だけ。こんな試算を米メディアが行った。ウォール街の専門家が総括したもので、選手会が8月30日にストを設定した裏には、この立場の差を最大限に生かそうという思惑がある。しかし、ストが長引けば数球団が破産に追い込まれる危機でもある。それは大リーガーたち自身の失職をも意味するもろ刃の剣だ。ファンも幻滅。誰もが地獄のストはそれでも決行されるのか。
選手会の宣告通り、8月30日でシーズンが終わり、そのままプレーオフもワールドシリーズもなかった場合、オーナー側に本来入ってくるはずのテレビ放映権料がそっくり消える。その額、3億ドル(360億円)という。
さらに入場料(1億5000万ドル)、売店の売り上げ、他の広告などを合わせると、ざっと5億ドル(600億円)がオーナー側の損害というのが、ウォール街の専門家の試算だ。
逆に選手の損害は小さい。シーズン中に支払われる給料のあと1回だけ。これが、選手会がストを8月30日に設定した背景であり、この条件なら最終的にオーナー側が折れざるをえないだろうと、読んだ上での脅しと見られる。
だが、それでもストが続いたらいったいどうなるのか?
数球団がチャピター11(C−11)、会社更生法の申請に走ることになる、というのが専門家の結論だ。
かつての球団オーナーは大変な資産家が多かったが、現在では“小物”も少なくない。
また最近の株価の下落で、大損したオーナーもいる。
各球団はここ数年のうちに、観客動員のアップをあて込んで、次々と新球場を建設。このとき、銀行から多額の借金をしている。
すでに分かっているだけで、バンク・オブ・アメリカなど数行が、20億ドル(2400億円)を貸し付け、タイガースが造ったコメリカパークには日本の銀行が1億4500万ドル(174億円)を融資している。
銀行もすぐには、借金を返せ、とはいわないだろうが、交渉がもつれにもつれ、ファン離れが進み、この球団は持たない、と判断したときは、支援停止もありうる。
だが、そうした事態は選手会が望んでいることではない。
むしろ、オーナー側が進める2球団の削減をストップさせ、多くのメジャーリーガーがさらに高い給料を得られるようにしようというのが本来の目的だった。
こうした背景を考慮すれば、仮に数日はストに入ったとしても最終的には、“金の卵”を産むガチョウの首を絞めることはしないだろうという楽観論もあるのだ。
ただ、交渉を難航させているもうひとつの要素がオーナー側の中に最低6人はいる、といわれるタカ派の存在だ。
少々、血を流してもいいから、この際、選手会(ユニオン)そのものをつぶす覚悟で、対決すべきだ、と主張するオーナーがいるのだ。
いったん敵対した場合は、決して相手に弱みを見せない。生半可な譲歩はしないという西欧流と、「オーナーは儲かっているのにそれを隠している。倒産などという事態はありえない」という組合側のオーナーに対する根強い不信感が解決を遅らせている。
いずれにせよ、1994年にストを打ったあと、観客動員はそれ以前の数字を超えていない。
もし、今回、ストになれば、億万長者のオーナーと100万ドルプレーヤーの強欲な争いに嫌気をさして、ファンがメジャーリーグそのものを“ボイコット”することになる。
◇ ◇ ◇
選手会が設定したストライキ開始日「30日」まであと2日に迫った28日、機構側のトップであるバド・セリグ・コミッショナーが労使交渉の席に臨むため、同日ニューヨーク入りした。
機構・オーナー側と選手会側が来季から薬物検査を実施する方向で合意したという情報があるものの、懸案事項である「課徴金制度」と「所得分配制度」では、双方の意見がかけ離れたままだ。
課徴金制度、所得分配制度は、球団格差の是正を目的に、財政の豊かな球団から徴集した金銭を厳しい球団に、それぞれを分配する制度。
当初、機構・オーナー側は独自収入の50%を提供するよう提案。これに対して、選手会側は「選手の年俸を抑制することになる」と反論。その後、機構・オーナー側が若干の譲歩案を示したが、合意に達するには、ほど遠い状況だ。
スト期日が目前に迫り、ついにコミッショナーが動いたが−。(夕刊フジ)